【グリーン・ノウ物語】グリーン・ノウシリーズ2巻。グリーン・ノウの煙突に秘められた謎【グリーン・ノウの煙突】【小学校中学年以上】
トーリーことトードラントは、両親が遠いビルマ(ミャンマー)で暮らしており、ちょっとさみしい寄宿舎生活でした。ところが、ひいおばあさんの古いお屋敷、グリーン・ノウでお休みを過ごすうち、このお屋敷の秘密に触れることに。今回は、待ちに待った春休み。新しい冒険が始まるかもしれません……
この本のイメージ タイムファンタジー☆☆☆☆☆ オカルトファンタジー☆☆☆ 宝探し☆☆☆☆
グリーン・ノウの煙突 グリーン・ノウ物語2 ルーシー・M・ボストン/作 亀井俊介/訳 評論社
<ルーシー・M・ボストン>
英国の女性児童文学作家。ランカシャー州(現マージーサイド州)サウスポートにルーシー・ウッドとして生まれ、サセックス海岸の女子寄宿学校に学ぶ。1917年ハロルド・ボストンと結婚、夫と別れた後、1939年にケンブリッジシャー州ヘミングフォード・グレイのマナーハウスに転居。60歳を過ぎてから「グリーン・ノウ」シリーズを書き始める。『グリーン・ノウのお客さま』でカーネギー賞を受賞。林望が英国に留学した際、ボストンの家に下宿していたことでも知られる。(Wikipediaより)
グリーン・ノウシリーズ第2巻です。
復活祭のお休みが始まり、トーリーは、わくわくで胸いっぱいにしてグリーン・ノウのお屋敷にやってきます。ところが、トービーやアレクサンダーたちが描かれている、あの絵が、見当たりません。
ひいおばあさまが展覧会に貸し出したのです。がっかりする、トーリー。ところがショックなのはそれだけではありませんでした。お屋敷の老朽化がひどいので、あの絵を売らなければならないかもしれないのです。
そんなのいやだ!
なんとかできないのだろうか、と悔しがるトーリーは、ひいおばあさまからグリーン・ノウに伝わる「消えた宝石」の伝説を教えられます。
……というのが今回のあらすじ。
今回は、トービーやアレクサンダー、リネットたちより150年くらい後の時代、1798年のグリーン・ノウの住人たちの物語です。
この時代のグリーン・ノウのあるじは、帆船ウッド・ペッカー号を指揮するオールドノウ船長。他の住人たちは、妻マリア、息子セフトン、そして今回のヒロイン、盲目のスーザンです。
ひいおばあさまのオールドノウ夫人は、当時の色とりどりの布地を使ったパッチワークをトーリーに見せながら、この時代の物語を聞かせます。
そのうち、スーザンとトーリーは、時を越えて交流するようになるのです。
生まれつき目が見えず、屋敷の外に出ることもできなかったスーザン。大好きなお父さまは、いつも海の上で、彼女を心配する乳母やはスーザンが動き回って怪我をしないように椅子に縛り付けます。お母さまは、スーザンを着せ替え人形にしてかわいがるだけ。兄のセフトンは、心からスーザンをばかにしていました。
そんなスーザンのもとに、オールドノウ船長が1人の黒人の少年を連れてきます。名前はジェイコブ。奴隷商人に売られそうなところを、不憫に思った船長が助けたのでした。
ジェイコブとスーザンは友達となり、互いの知識を交換することで、互いに成長していけるようになります。そして、その結果、スーザンは字を書けるようになるのです。
スーザンとジェイコブが互いに知識を吸収してどんどん賢くなって行く過程が、生き生きと描かれています。スーザンの家庭教師、ジョナサンがよき協力者となって、いままで牢獄のようだったグリーン・ノウのお屋敷が、スーザンにとって楽しい探検の場に変わっていきます。
やがて過去の物語と、トーリーの物語は交じり合い、結末と流れ込みます。
わたしが好きなのは、「目の見えないスーザンには、目が見えないからこその強みがある」とジェイコブが気づいて彼女にそれを教えるところ。目が見えないことはたいへんな困難ですが、それでも、それを武器に替えられると考えるジェイコブのたくましさ。欠点を克服するのではなく、短所を長所に転換するという考えは、わたしも大賛成です。
字はほどよい大きさで、難しい漢字にはふりがながふってありますので、小学校中学年から。この時代の世界史を調べると、より深く楽しめます。
とても、静かでやさしい、大人も子どもも楽しめるファンタジーです。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素がほとんどありません。スーザンの生い立ちが最初のほう不憫ですが、ちゃんと救われていきます。大丈夫です。むしろ、HSPやHSCにおすすめのファンタジーシリーズです。週末の夜や、お風呂上りなど、落ち着いた気持ちになる時間に静かに読むのにおすすめ。
濃い目の英国紅茶やハーブティをお供にぜひどうぞ。
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