【パセリ伝説】記憶を取り戻す秘密の大冒険。乙女チック貴種流離譚第2巻。【水の国の少女】【小学校中学年以上】

2024年2月12日

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パセリ伝説 ~水の国の少女~ memory2  倉橋燿子/作 久織ちまき/絵  講談社青い鳥文庫

母のペンダントを失くしてしまったパセリは、隼人、レンゲ、秀人とともに探しに行こうとする。ところが、それをマリモに気づかれてしまい、思わぬ騒動に……ミステリアスファンタジー第2巻。(パセリ伝説 ~水の国の少女~ memory2  倉橋燿子/作 久織ちまき/絵  講談社青い鳥文庫)

この本のイメージ ファンタジー☆☆☆☆☆ 貴種流離譚☆☆☆☆☆ 記憶喪失☆☆☆☆☆

パセリ伝説 ~水の国の少女~ memory2  倉橋燿子/作 久織ちまき/絵  講談社青い鳥文庫

<倉橋燿子>
広島県に生まれる。上智大学文学部卒業後、出版社に勤める。その後、フリーの編集者、コピーライターを経て、執筆活動をはじめる

<久織ちまき>
新潟県生まれ。横浜国立大学工学部で建築学を学ぶが、進路再考のため休学。その間に執筆活動やカットイラストの仕事をはじめ、2000年に『野望円舞曲』(徳間書店デュアル文庫)の挿絵でメジャーデビュー。以後、ライトノベルの挿絵などを中心に活躍。

 初版は2007年。
 お話が1巻から完全に続いているので、まずは「パセリ伝説 ~水の国の少女~ memory1」をお読みください。

「パセリ伝説 ~水の国の少女~ memory1」のレビューはこちら

 大昔の、SFファンタジー少女漫画の雰囲気がある物語です。記憶喪失の主人公パセリが自分の記憶を探しつつ冒険する、貴種流離譚(きしゅりゅうりたん)。

 貴種流離譚とは尊い血筋の存在が、なんらかの事情で辺境に流され、苦難の旅の末に王座に返り咲くというようなファンタジーです。 日本武尊 (やまとたけるのみこと )や、アーサー王伝説などがこれにあたります。

 今回のお話は……

 水沢巴世里(みずさわぱせり)は11歳。ある日、目覚めたら北海道の牧場にいました。
 やさしいおじいちゃん、おばあちゃん、そしてお兄ちゃんと4人暮らし。両親は交通事故で死んだらしいのです。

 パセリはときどき母さまの夢を見ます。美しい声で不思議な子守唄を歌う母さま。パセリにお守りのペンダントをくれた母さま。

 けれど、その大切なペンダントは、溺れたレンゲを助けるために青龍湖でなくしてしまいました。どうしても取り戻したいパセリは、隼人、レンゲ、秀人と一緒に青龍湖にゆこうとしますが、タイミング悪く、同じクラスの清太郎とマリモにみつかってしまいます。

 結局、みんなでゆくことになったのですが、その先で思わぬ事態に……

 ……と、いうのがあらすじ。

 パセリには不思議な能力があって、それが一つずつ開花してゆくというお話。1巻で開花した第一の能力は、光のエネルギーを発して相手の心の声を聞くこと。第2の能力はほんとうに見たいものの今のすがたや様子を知ること。

 常人離れした身体能力と、不思議な力をもった少女パセリ。彼女は何者なのでしょうか。

 第2巻では、パセリの記憶が少しずつ戻ってきて、母が歌っていた子守唄が彼女を導きます。
 しかし、パセリ自身、自分が何者なのかはまだわかっていません。

 そして、同居しているおじいちゃんやおばあちゃん、お兄ちゃんの正体も……。

 11歳の少女にとって、優しくしてくれる家族が本当の家族ではないかもしれないと言う疑惑は、どんなに恐ろしいものでしょうか。心休まる暇もないと思います。

 そんな辛いパセリの心の支えが隼人くんであり、親友のレンゲちゃんでした。

 主人公が自分自身が何者かを知らないタイプのお話の場合、たいていの場合は最初に登場する家族は本当の家族ではありません。パセリの家族もどうやら秘密がありそうです。

 そして、兄の光矢は、なぜだか隼人を嫌い、パセリが仲良くするのを止めようとします。

 古典的なファンタジーストーリーであり、主人公のパセリちゃんの周囲には兄の光矢、クラスメイトの秀人、清太郎、ミステリアスな隼人君など、かっこいい男の子たちがたくさん登場します。

 けれど、パセリちゃんはただ守られる女の子ではありません。裸馬を乗りこなし、荒れ狂う波を泳ぎ、空手では驚くべき強さを見せるのです。

 ごくふつうの女の子レンゲちゃんとの固い友情も見逃せません。
 どんなに不思議な体験が自分に襲ってきても、しっかりと地に足をつけ、「日常」につなぎとめてくれる親友の存在は心強いもの。「赤毛のアン」のダイアナ、「キャンディ・キャンディ」のアニー、「エースをねらえ!」のマキなど(どれも古いよ)、激動の人生を生きるヒロインには「ふつうの親友」が欠かせないのです。

 文章は親しみやすく読みやすく、すべての漢字に振り仮名が振ってありますから、小学校低学年であっても、根気があればコツコツ読めます。女の子が主人公の冒険ファンタジーがお好きな方にはおすすめ。
「記憶喪失の自分は、遠い国のお姫様?」なお話は、オーソドックスだけど子ども心を惹き付ける魅力があります。

 まだまだ謎だらけのファンタジー、続きを読むのが楽しみです。

 ※この本には電子書籍もあります。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。

 冒険物語ではありますが流血シーンなどはなく、気をつけて書かれています。

 謎また謎の展開に、ページをめくる手が止まりません。

 女の子が主人公の、冒険ファンタジーが読みたいなら、おすすめです。

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