【かさじぞう】静かな大晦日の優しい奇跡。心あたたまる日本の昔話を絵本で。【3歳 4歳 5歳】
むかしむかし、貧しいけれどとても仲のよいじいさまとばあさまがいました。明日はお正月だというのに、おもちどころかお米ひとつぶもありません。じいさまが傘を作って街へ売りに行きましたが……(かさじぞう いもとようこ/文・絵 金の星社)
この本のイメージ 日本の昔話☆☆☆☆☆ 大晦日☆☆☆☆☆ やさしい奇跡☆☆☆☆☆
かさじぞう いもとようこ/文・絵 金の星社
<いもとようこ>
兵庫県生まれ。金沢美術工芸大学油画科卒業。「ねこのえほん」「そばのはなさいたひ」でボローニャ国際児童図書展エルバ賞を2年連続受賞。「いもとようこうたの絵本1」で同グラフィック賞受賞
大晦日といえば、「かさじぞう」。初版は2021年です。
たいへん有名なお話ですが……
むかしむかし、あるところに、とても仲のよいおじいさんとおばあさんがふたりで暮らしていました。
明日はお正月だというのに家にはお餅どころか米ひとつぶもありません。
ふたりはかさをつくり、おじいさんがそれを街に売りにゆきました。
しかし、かさはひとつも売れず、おじいさんは食べ物を買うことも出来ず、とぼとぼと家に帰ることになります。
その途中、六体のお地蔵様が雪をかぶって立っているのを見つけました。
これは寒そうだと思ったおじいさんは、お地蔵様の雪をはらい、売れなかったかさをかぶせてあげました。ひとつ足りない分は自分のかさをかぶせました。
雪まみれで帰ったおじいさんに、おばあさんは「それはよいことをしましたね」と笑顔でいい、温かい白湯を飲ませます。
何も食べるものがないふたりは、お湯を飲んで眠ることにしますが、その夜……
……と、いうのがあらすじ。
日本の昔話は恩返しものが多いようです。動物や、幽霊、通りすがりの人、お地蔵様、出会った誰かがなんであろうとも情をかけてせいいっぱいのことをしてあげた人のところへ、恩返しにやってくる。
六体のお地蔵様たちは、お正月のごちそうだけでなく、大判小判も置いていってくれたため、その後はふたりは豊かに幸せに暮らすことになりました。
このおじいさんの善意も素晴らしいですが、おじいさんがお地蔵様に自分のかさまであげて帰ってきたときに「それはよいことをしましたね」と笑顔でお湯を差し出したおばあさんが素敵です。
現実社会ではついつい家族のすることに「もっとこうしておけばよかったのに」と言いがちですが、相手のしたことを笑顔で肯定できる人が寄り添ってくれていたら、なにはなくとも心は温かいにちがいありません。
「かさじぞう」は静かな大晦日の夜の、優しい奇跡を描いた日本の昔話です。
素朴ななかに純粋な愛情があり、じんわりと心が温かくなります。
字はすべてひらがなとカタカナ。文章は見開きに最大で十行前後で五十音が読めればひとりで読みきることができます。しかし、最初はぜひ読み聞かせで。
いもと先生の描かれるおじいさんとおばあさん、お地蔵様たちが可愛らしく、ほのぼのとした気持ちに包まれる絵本です。男の子にも女の子にも。
この冬の読み聞かせにぜひどうぞ。
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ネガティブな要素はいっさいありません。心あたたまる日本の昔話です。
大晦日からお正月に読むのにおすすめです。
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