【オリンポスの神々と7人の英雄】ついに最終決戦。パーシーたちはガイアを倒せるのか?シリーズ第5巻【最後の航海】【パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々シーズン2】【小学校高学年以上】
失われたアテナ像をギリシャへ返還し、ローマとギリシャの和解と平和を。奔走するハーフたち、それを阻む太古の女神ガイア。はたして、ガイアは復活してしまうのか?パーシーたちはガイアを倒せるのか?ついに最終決戦!
この本のイメージ ローマとギリシャの和解☆☆☆☆☆ 最終決戦☆☆☆☆☆ ハッピーエンド☆☆☆☆☆
オリンポスの神々と7人の英雄 5 最後の航海 【パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々シーズン2】 リック・リオーダン/作 金原瑞人・小林みき/訳 ほるぷ出版 静山社ペガサス文庫
<リック・リオーダン>
リチャード・ラッセル・ライアダン・ジュニア(Richard Russell Riordan, Jr.、1964年6月5日 ~ )はアメリカ合衆国の推理作家、児童文学作家、ファンタジー作家。通称リック・ライアダン(Rick Riordan)。日本ではリック・リオーダンあるいはリック・ライオダンとも呼ばれている。代表作は「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」。
ギリシャ神話の神々が現代によみがえる、リック・リオーダンのファンタジー「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」(Percy Jackson & the Olympians) のシーズン2「オリンポスの神々と7人の英雄」(The Heroes of Olympus)の第5巻です。
原題はThe Heroes of Olympus;The Blood of Olympus 原書初版は2014年。日本語版初版は2015年です。
このシリーズは、シーズン1から完全にお話が続いていますので、まずは「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」第1巻「盗まれた雷撃」からお読みください。
シーズン1第1巻のレビューはこちら↓
さあ、ついに太古の女神ガイアとの最終決戦。
憎みあってきたギリシャとローマのハーフ(原作ではデミゴッド)たちが和解し、ガイアに立ち向かうことができるかの正念場です。
レイナ、ニコのチームはアテナ像を運び、パーシー、ジェイソンのチームは予言された英雄の死を回避すべく奇跡の薬を探します。
それぞれが全力を尽くして戦いながら、ローマとギリシャは少しずつ歩み寄ります。はたして、ガイアは本当に復活してしまうのか。そして、パーシーたちに勝機はあるのか?
……というのが今回のあらすじ。
わたしは男女混合のチームが力を合わせて何かを成し遂げる話が好き。特撮の戦隊ものとか、少年漫画では人気のコンセプトです。
少女漫画はどうしても編集方針などでそこにラブ要素が入ってしまうので、純粋な男女混合のチームものの雰囲気が楽しめなくて、わたしは少年向けを読んだり見たりしてしまうのです。
少女漫画は、昔のほうがSFだったりファンタジーだったり、突拍子もないものが多かったのです。一時期から学園ものが主流になって、今に至ります。
日本の少年向けコンテンツは、男女混合のチームでも恋愛要素は極力排除して書かれていて、恋愛要素があるお話はまれです。でも、そういうのが読みたい人はそこがいいんです。
もちろん、チーム内恋愛ものが得意な作家さんもいないわけではないし、その方向のものが好きな人もいるので人それぞれなのですが、わたしはチームの女性メンバーが「可愛さ」とか「サポート力」「恋愛相手」とかの「花を添える」的な要素ではなく、ガッツリ実力で参加している話のほうが好きなので、どうしてもラブ要素少なめか無しの方向で探してしまいます。
でも、アメリカのテレビドラマやヤングアダルト小説などでは、チーム内の恋愛やカップル化はむしろ当然と言うのが一般的。ヒーローたるもの彼女くらいエスコートできなきゃ、ってところでしょうか。
そんなアメリカのヤングアダルト小説として読むと、「パーシー・ジャクソンシリーズ」の恋愛要素のさじ加減は絶妙。「ラブ要素は無いほうがいい」タイプのわたしでも、抵抗なく楽しめるように書かれているのがすばらしい。
パーシーやジェイソンにはそれぞれステディな彼女はいるものの、その恋愛がチームの冒険を邪魔するような要素にはなっていないし、ヒロインのアナベスやパイパー、ヘイゼルなどが、ただのかわいい女の子でないところも好き。
とくに素晴らしいのは、美の女神アフロディーテの娘であるパイパーのキャラ造形です。彼女が格別に美しくおしゃれというわけではない、「地味だけど不思議な魅力がある女の子」として描かれているのにはうならされます。
これ、ありがちな設定ならブロンドの超絶美少女、大人気の少女モデルでチアリーダーとかにしちゃうと思うんですよ。
ところが、芸能界で華やかに活躍するのはパイパーのお父さんのほう。パイパーは、超有名俳優の娘として苦労しながら地味に暮らす女の子です。
でも、よく見るとかわいいし、彼女の言葉には不思議な魅力があって、人はつい耳を傾けてしまう。「美貌」などのわかりやすい「美」ではないけれど、母親はパイパーに「美」を授けていたのです。
逆に、ゼウスの息子として生まれ、アメリカの理想的なリーダー的若者としての資質をすべて持っているジェイソンは、どこへ行ってもリーダー、どこへ行っても中心人物になってしまうことに疲れはてていました。
そんなふうに、この作品では伝統的なアメリカのヒーローストーリーのセオリーをひっくり返す要素がいくつも入っています。
もちろん、昔ながらのオーソドックスな悪役のようなキャラクター、オクタビアヌスもいるので、何もかもが意表をついているわけでもない。このあたりの力加減、さじ加減が上手いのです。
ラストは、今回こそ、全員が力を合わせての勝利。そして、期待通りのハッピーエンド。この「期待通り」のところ、薄々の予感を裏切らないでいてくれるのも、いい。意表はついてくれるとうれしいときと、つかないで定石どおりの時がうれしいときがあります。いい意味で、期待を裏切らないでくれて、ほんとうにありがとう。
お話は、かなりボリュームがあり、1冊1冊が鈍器にもなりえる分厚さですが、面白くて読み応えがあります。
しかし、固有名詞がアメリカ名、ローマ名、ギリシャ名と難しいカタカナの名前が入り乱れるので、読むと混乱してしまう方もいるかもしれません。キャラクターの数も多めです。
そんなときは、メモをとったりふせんを使ったりして読むことをおすすめします。
人物関係図を自分で作ってみるのも楽しいですよ。
「シーズン1」は完全に「次」に続く状態で終わっていましたが、「シーズン2」はちゃんと完結しています。けれど、大きなお話は「シーズン3」に続くようです。今度はアポロンのお話になるようで、こちらも、楽しみです。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
戦闘シーンも流血シーンもあります。気をつけて書かれているのであまり気になりません。「そういうシーンがあるのだな」とあらかじめ知っていれば大丈夫という方にはおすすめ。群像ものが好きな方に。
ただし、キャラクターや怪物の名前がややこしいので、メモをとりながら読むとわかりやすいと思います。
作中においしそうなドーナツが登場します。読後はドーナツとコーヒーでひと休み。
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