【オリンポスの神々と7人の英雄】奪われたアテナ像をさがすアナベスの冒険。シリーズ第3巻【アテナの印】【パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々シーズン2】【小学校高学年以上】

2024年3月20日

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オリンポスの神々と7人の英雄 3  アテナの印  【パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々シーズン2】 リック・リオーダン/作 金原瑞人・小林みき/訳 ほるぷ出版 静山社ペガサス文庫

ユピテル訓練所とハーフ訓練所が手を組もうとした矢先、ガイアの陰謀で互いが戦いあうことになってしまう。そんなとき、アナベスは、正気を失った母親アテナから、失われたアテナ像を取り戻すよう命じられるが……「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々シーズン2」第3巻。

この本のイメージ 主役はアナベス☆☆☆☆☆ ファンタジー☆☆☆☆☆ ギリシャとローマ☆☆☆☆☆

オリンポスの神々と7人の英雄 3  アテナの印  【パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々シーズン2】 リック・リオーダン/作 金原瑞人・小林みき/訳 ほるぷ出版 静山社ペガサス文庫

<リック・リオーダン>
リチャード・ラッセル・ライアダン・ジュニア(Richard Russell Riordan, Jr.、1964年6月5日 ~ )はアメリカ合衆国の推理作家、児童文学作家、ファンタジー作家。通称リック・ライアダン(Rick Riordan)。日本ではリック・リオーダンあるいはリック・ライオダンとも呼ばれている。代表作は「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」。

 ギリシャ神話の神々が現代によみがえる、リック・リオーダンのファンタジー「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」(Percy Jackson & the Olympians) のシーズン2「オリンポスの神々と7人の英雄」(The Heroes of Olympus)の第三巻です。
 原題はThe Heroes of Olympus;The Mark of Athena 原書初版は2012年。日本語版初版は2013年です。
 この頃って、日本はすごく大変だった頃なので、こんなにハイペースで子どもたちのためにこんな分厚い本を翻訳してくださっていたんだな、と思うと、なんだかじーんとしてしまいます。

 「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」シリーズは、つい最近、シーズン3が完結したばかりのようです。急がなくては……。読みたい本がたくさんあるんですよ(シーズン3はパーシーの話ではなさそう)

 このシリーズは、各巻、人も殺せる、鈍器になるような分厚さで読み応えがあります。
 また、キャラクターが多いのと、ギリシャ風、ローマ風のカタカナの名前が交錯するので、楽に読むために付箋やメモなど、工夫が必要かもしれません。でも、面白いんです。

 翻訳もののファンタジー小説があまり好きじゃない人って、よく聞いてみると、「カタカナの名前が大量に出てきて魔法などの特殊用語が多く、読むと混乱する」と言う方がほとんどなので、そういうときは、伏線ぽいところや調べなきゃいけなそうなところに付箋をしたり、自分だけにわかるようなちょこっとメモをするのがおすすめです。

 わたしだってもう歳なので、全部を頭に入れて一気読みなんてできません。忙しい方が隙間時間に長編小説を読もうとすれば、栞だけでなく、付箋やメモを駆使しないとちょっと難しいと思います。でも、それだけで、読書がぐんと楽しくなりますよ!

 最近は、ドラマや漫画のファンの中にも「考察系」と言って、設定や伏線からあれこれと今後の展開を想像するのを楽しむ人たちも増えてきました。

 長期シリーズものは、何巻も前からの遠投伏線も多くて、あれこれと想像したり、ネットでの感想を追いかけたりするのも楽しい。

 最近は、いろんなSNSもあるので、新しい本の楽しみ方も増えました。
 おうち時間が増えたこの時代、様々なカタチで読書の世界が広がってゆくとすばらしいと思います。インドア万歳。

 てなわけで、今回の本紹介に戻りますが、
 このシリーズは、シーズン1から完全にお話が続いていますので、まずは「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」第1巻「盗まれた雷撃」からお読みください。

 シーズン1第1巻のレビューはこちら

 今回のお話は……

 旧い大地母神ガイアに立ち向かうため、女神ヘラ(ユノー)のはからいで、引き合わされたハーフ訓練所とユピテル訓練所の英雄(神と人間のあいだに生まれた子)たち。

 ところが、ようやく手を取り合えると思った矢先、ガイアの陰謀により、悪霊アイドロンに取り付かれたリオがアルゴⅡ号でユピテル訓練所を攻撃してしまい、双方のあいだに戦火が開かれてしまいます。

 アルゴⅡ号に乗り込んだ7人の英雄たち━パーシー、アナベス、ジェイソン、パイパー、ヘイゼル、フランク、リオは、ハルピュイアのエラの予言に導かれて、敵に捕らわれたニコを救出に向かいます。

 しかし、その一方で、アナベスは、母アテナからローマに奪われたアテナ像奪還の密命を受けていたのでした。

 ハデスの息子ニコは無事救出できるのか? そして、行方不明のアテナ像のゆくえは?ギリシャとローマの関係はどうなってしまうのか?

 ……と、いうのがあらすじ。

 

 オリンポスの神々には、ギリシャとローマ、ふたつの側面、ふたつの人格があります。
 それらが融合して神々は存在しているのですが、ギリシャ側のハーフ訓練所とローマ側のユピテル訓練所が対立し、ぶつかり合ったことで、神々の人格が不安定になってしまいます。

 そのため、以前なら子どもたちのピンチには駆けつけてくれた神々も、今回は助けてくれません。

 このような不安定な状態でも、支障なく動けるのは、復讐の神ネメシスと酒の神デュオニソスと、愛の女神アフロディーテ。

 復讐と酒と愛は、どんな状況でも不動と言うことでしょうか。
 だったら太陽と月はどうなんだろ、と思っていたら、どうやら当時太陽神アポロンはとんでもない目に遭っていたようです。これはこれで読むのが楽しみ。

 とくに、知恵と戦いの女神アテナは、ギリシャ時代はアテナイのシンボルと言う重要な女神だったのに、ローマに吸収されてからはミネルヴァという平凡な女神にされてしまい、ローマとの関係で最も傷つけられた女神でした。

 そのため、ギリシャとローマの英雄たちが対立したとき、アテナは混乱して力を失ってしまいます。発狂した母アテナに「ローマに奪われたアテナ像の奪還」を命じられるアナベス。

 ニコの奪還、ギリシャとローマの和解など、問題山積みの状態で、さらに重責を担わされたアナベスですが、彼女はたったひとりで、この過酷な運命に立ち向かいます。

 前半は、パーシーとアナベス、ジェイソンとパイパー、フランク、ヘイゼル、リオの人間模様、後半は、自分の試練に立ち向かい、乗り越えてゆくアナベスが描かれます。

 今回の主役は、アテナの娘アナベスです。
 アテナ譲りの優秀な頭脳を持った、ブロンドのかわいい女の子。アメリカでは「ブロンドの女の子は頭が悪い」と言う先入観があるようで、外見で舐めて近づいてきた男を賢さでぶっとばす、と言う痛快なキャラクター。

 離れ離れになっていたアナベスとパーシーの再会シーンがすごくいいんです。日本の漫画やアニメでも、行方不明の恋人を待ち続けていたヒロインが、再会のさいに「心配かけるんじゃないわよ!」とひっぱたくという演出がよくありますね。あれのパワーアップ版と言う感じ。アナベス、かわいい。

 例によって、ラストは引きがついていて、「次巻へ続く!」みたいな感じで終わっているのですが、終始、ハラハラドキドキの連続で、盛り上がり続けます。

 小さなエピソードもそれぞれが魅力的で、個人的には、リオとヘイゼルのエピソードが大好き。あと、好戦的なサテュロス、熱血教師のヘッジ先生もいい味出しています。

 このシリーズおなじみの、チャールストンやサムター要塞など実在の場所が登場し、地図を見ながらパーシーたちの旅ルートを追える展開も健在。ローマでは、オードリー・ヘプバーンが特別出演します。

 また、「奪われたアテナ像」は、実際におきた歴史ミステリー。
 史実では、465年にギリシャから東ローマ帝国コンスタンティノープルに移設され、その後1205年に破壊されたと伝えられていて、そのレプリカがメトロポリタン美術館などに残されてます。

 しかし、この物語では、本物のアテナ像は破壊されずにどこかに隠されているとし、それを母アテナの命令でアナベスが奪還にゆくと言う展開になりました。

 こういう、現実世界とのリンクが毎回、ディープな仕掛けになっていて、読み手の心をつかみます。

 一冊一冊がずっしりと重い、読み応えのあるファタジー。静山社ペガサス文庫からは、文庫版も出版されているので、お好きなほうを。

 キャラが多いのと、怪物や悪役の名前が複雑でちょっと大変なのですが、それを乗り越えれば、ハマること間違いなしのワクワクドキドキの冒険小説です。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 戦闘シーンはありますが、気をつけて書かれているので残酷シーンや流血シーンはありません。「そういう話なのだな」と身構えていれば大丈夫なら、おすすめです。良質の冒険小説です。
 登場人物たちが思春期に入ったので、今回は、ちょっぴりラブ要素アリ。でも、恋愛がメインのお話ではないので、スパイス程度にラブ要素があるといい、って人にはちょうどいい塩梅です。

 敵キャラの名前がちょっとややこしいので、付箋を使ったりメモをとったりしたほうがいいかもしれません。

 読後は、アメリカンなものが食べたくなる小説です。ドーナツとコーヒーで、ひとやすみ。

 

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