【ムーミン】あの子やあの子のパパはどんな人?今明かされるムーミンパパの若き日々。【小学校中学年以上】

2020年7月11日

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ムーミンパパの思い出 トーベ・ヤンソン/作 小野寺百合子/訳 講談社

ひどい風邪をひいてしまい、ちょっと弱気になってしまったムーミンパパに、ムーミンママは「『思い出の記』を書いてみてはいかが?」と勧めます。そんなわけで、ムーミンパパは自分の生い立ちを書き記すことになるのです……。

この本のイメージ 大冒険☆☆☆☆☆ 人に歴史あり☆☆☆☆ 仲間っていいね!☆☆☆☆

ムーミンパパの思い出 トーベ・ヤンソン/作 小野寺百合子/訳 講談社

 新版ムーミン全集の三冊目になっている、「ムーミンパパの思い出」です。
ムーミンパパの青春時代の話を、パパが回想記を書き、それを子どもたちに読んで上げるスタイルで書かれています。

ムーミンパパの思い出 トーベ・ヤンソン/作 小野寺百合子/訳 講談社

 ムーミンのシリーズって、かわいい妖精みたいなキャラクターが出てくるファンタジーなので、子ども向けのように思われがちですが、実際は大人向けなんじゃないかと思う時があります。

 書かれている内容がとても深いので、もしかしたら現代っ子にはあまり面白くないかもしれません。今風の、善と悪がバッキリ分かれていて、さいごは善人が勝って悪人がひどい目に遭う、と言うようなシンプルな話ではないからです。

 ただ、感受性が鋭く、ふだんから深く考え込むような内向的なお子様には向いていると思います。
そして、日常にちょっと疲れて、子供心に戻りたい大人にはおすすめです。

 「ムーミンパパの思い出」は、とくにそんな大人向けの作品です。大人になったムーミンパパが、ムーミンやスニフ、スナフキンたちに、自分の青春時代の思い出を書き記した「思い出の記」を読んであげるつくりになっています。

 ムーミンパパはムーミンみなし子ホームの前に新聞紙にくるまれて捨てられた捨て子のムーミンでした。
孤児院長のヘムレンさんは、規則に厳しい人で、おじぎをするときのしっぽの角度まで決まっていました。そんな窮屈な孤児院から、あるときムーミンパパは1人で飛び出して冒険の旅に出ます。

 旅の途中で発明家フレドリクソンと出会い、親友になります。スナフキンの父ヨクサルや、スニフの父ロッドユールとも仲良くなり、フレドリクソンが建造した「海のオーケストラ号」で冒険の航海に漕ぎ出すのです。

 その後、丸い丘の国にたどり着き、ちびのミイのお母さんにも出会います。そこで新しい空とぶ船を創り、また旅に出て、ついに嵐の海でムーミンママに出会うのです。

 この本は、若きムーミンパパの青春物語であると同時に、ムーミンパパとムーミンママの物語でもあります。(そもそも、パパに「思い出の記」を書いてみたら、とすすめたのはムーミンママですしね)

 ムーミンパパは、この長い長い思い出話を子どもたちに聞かせます。最初はわくわくして聞いていたムーミンたち。が、子どもたちはわかりやすい冒険活劇シーンでは目を輝かせて聞くものの、情緒的なシーンでは退屈して眠ってしまうのでした。

 ショックをうけたパパは、「こんな感情的なことを書いた部分は、すこし短くしたほうがいいかもしれんぞ」と悩み始めます。
そこへ、夜食のサンドイッチを持ってきたムーミンママが現れます。パパはママに
「わたしはどうも、若いときの精神的危機を書いた部分が、ばかげているような気がしてきたよ」と打ち明けます。
ところがママは、
「6章のはじめのほうのことですか」と、即座に返し
「あそこは本の中でも、いちばんいいところの一つだと思いますよ。あなたがあまりいばっていないところが出ていて、かえってあなたが生き生きとしていますわ。子どもたちには、まだむずかしくってわからないのよ。さ、夜食のサンドイッチをどうぞ」
と、一瞬でムーミンパパの悩みを解決してしまうのです。

すごい、ムーミンママ!敏腕編集さんみたい。

この短いシーンにはムーミンママの深い愛情と、パパとママの信頼関係が現れていて、大好きです。

ムーミンママは、ムーミンパパがすこし見栄っ張りだったり、(今で言う)中二病ぽいヒロイズムがあることをよくわかってるんですよね。そして、ちょっぴりいばりんぼうなところも。でも、それを受け入れていて、そして、心の底には内省的で謙虚なところがあるとちゃんとわかっていて「生き生きとしている」と言うのです。

 そして、絶妙のタイミングでのサンドイッチ。

 いいなあ、ムーミンママ。わたしも、こんな人になりたい。

 ムーミンパパにもいいところがたくさんあって、海で溺れている人がいたら、誰であろうと助けに行くところや、友達を大切にするところなどが描かれています。そして、そんな美徳はムーミンにしっかりと受け継がれているのですね。

 巻末に、フィンランド文学研究家の高橋静男先生の解説が掲載されています。そこには、「徹底して自由に生きようとする自由人ほど、他人に対してやさしくなれる人物として描かれています」とあり、わたしもムーミンシリーズの真髄はここにあると思います。

 誰かが危機にあるとき、ムーミンの家族や仲間たちは、躊躇なく助けに行くのです。それが嫌いな人物だったとき、ほんのちょっぴり「助けなきゃ良かったかな」と思うこともあるけれど、やっぱり助けるのです。ふわふわとした、とらえどころのないファンタジー童話なのですが、ゆるぎない背骨のある物語です。

文庫セットもあります

 こんな不安定なご時勢だからこそ、大人に読んでいただきたい小説です。お子様にも、読み聞かせしてあげてください。
もしかしたら、今のお子様にはちょっぴり難しいのかなあと、寂しい気持ちにはなりますが、でもやっぱりおすすめしてしまいます。

 お風呂上りに、のんびり足を伸ばして読んでみてください。慰められたり、癒されたり、励まされたり、いろんな気持ちをもらえる本です。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。安心してお読みいただけます。内省的な方にはとくにおすすめです。木苺のジャムと温かいパンケーキ、あつあつの紅茶をお供にぜひどうぞ。

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