【ムーミン】ムーミン谷を離れ、灯台で暮らし始めたムーミン一家。はたして?【ムーミンパパ海へいく】【小学校中学年以上】

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ムーミンパパ海へいく トーベ・ヤンソン/作 小野寺百合子/訳 講談社

夏の終わり、自分が家長として頼られなくなった気がしはじめたムーミンパパは、灯台守になろうと、住み慣れたムーミン谷を離れ、離れ小島に一家全員で引越しをします。しかし、移住生活はなかなか過酷で…… 

この本のイメージ パパ中年の危機☆☆☆☆☆ 自分探し☆☆☆☆☆ 家族の再生☆☆☆☆☆

ムーミンパパ海へいく トーベ・ヤンソン/作 小野寺百合子/訳 講談社

<トーベ・ヤンソン>
(Tove Marika Jansson 女性、1914年8月9日 ~2001年6月27日)は、フィンランドのヘルシンキに生まれたスウェーデン語系フィンランド人の画家、小説家、ファンタジー作家、児童文学作家。代表作は「ムーミンシリーズ」

ムーミンパパ海へいく トーベ・ヤンソン/作 小野寺百合子/訳 講談社

 講談社のムーミン全集7冊目「ムーミンパパ海へいく」です。
 原題は Pappan och havet. 原書初版は1965年。日本語版初版は、1968年です。

 シリーズの中で、もともとあまり評判のよくなかった「ムーミンパパ海へいく」ですが、あらためて読んでみると、子どもの頃から抱いていたイメージよりはずっとよく、ちゃんとハッピーエンドでした。

 お話は……

 自分の確かさを確認したくなったムーミンパパは、住み慣れたムーミン谷を離れ、離れ小島の灯台に移住することを決意、一家でお引越しをします。

 荒れ狂う海に浮かぶ、小さな島とがらんとした無人の灯台に移り住んだムーミン一家には、困難がいっぱい。
不便な灯台暮らしのなか、さすがのムーミンママも少し、うつ状態になってしまいます。

 そんなころ、ムーミンは思春期の悩みを抱えるようになり、それぞれが、それぞれの内面の問題に向き合おうとしますが……

 というのがあらすじ。

 バブル期によくあった、「パパが家族に何も相談せず、いきなり脱サラして田舎でペンション経営はじめました」、みたいなお話。

 子どもの頃、「パパはなんて勝手なんだ! ムーミンママがかわいそう」と大不評だったのを思い出します。
 でも、今読み返すと、たしかにパパは勝手でムーミンママはすごく気の毒なんですが、これは、一般的な父親と家族が抱える普遍の問題なのかもしれないと思うようになりました。その「あるある」感を強調するために、ミィが養女として同居しているのかもしれません。

 「ムーミンパパ海へいく」では、子どもが複数いる家庭の、上の子が思春期に差し掛かった頃の様々な問題が、かなりリアルに描かれています。ようするに、ムーミンパパは「中年の危機」というやつなのです。

 平和で平凡な毎日の繰り返し、幸せだけど安定しすぎているムーミン谷の生活では、自分はないがしろにされて頼られない、と感じたムーミンパパは、安定したムーミン谷での生活を捨てて、離れ小島の灯台へ移住してしまいます。

 この強引な決定に、おだやかについてゆくムーミンママですが、孤島での生活はなかなか厳しく、思うようにはいきません。ムーミンは、ちょっぴり思春期を迎えていて、美しい生物うみうまに恋をしたり、孤独なモランに慕われたりします。

 小さなミィは、ムーミン一家の養女になっていて、彼らについてきますが、彼女だけはつねにマイペース。子どもらしい生命力で島の生活を満喫します。

 ムーミンパパは「頼れる父親」になろうと空回りし、安定したムーミン屋敷での生活が恋しいムーミンママは現実逃避し、ちょっぴり思春期のムーミンは家族から離れて自分だけの場所をさがしたり、美しい生き物に淡い恋心を抱いたりします。

 ほのぼのしていたムーミン谷の生活とはちがい、あまりにも過酷な毎日なので、読んでいるほうがへこたれそうになりますが、ムーミン一家はへこたれない。

 そして、ばらばらだった家族はだんだんと結束してゆきます。

 これは、家族再生の物語であり、失った自分を取り戻す物語でもあります。
 また、一人ぼっちの漁師が立ち直ったり、絶望の象徴であったモランが救われたりすることから、もうダメだと思ったところからでも道が開けるという、前向きなメッセージもひそんでいます。
 そうは言っても、ムーミンパパの亭主関白ぶりがかなり迷惑なレベルではあるのですが……

 パパは自分を取り戻し、ママはホームシックを乗り越え、ムーミンは成長します。

 終始、ほの暗い雰囲気に包まれたお話なのですが、よくよく読むと全員が成長しているハッピーエンドです。子どもの頃に読んだときは、「暗い」っていう印象しか残らなかったのですが、読み返したら様々な発見がありました。

 トーベ・ヤンソンは、このお話を大人向けに書いたそうです。

 「ムーミン谷の冬」もよかったのですが、「ムーミンパパ海へいく」も、自分を内省する期間にはおすすめの本です。残念ながら、癒し要素はあまりありませんが、哲学はあります。小さなお子様には少し難しいかもしれませんが、大人になって読み返したときに、子どもの頃の疑問が氷解する体験も貴重なので、よかったら親子で回し読みしてみてください。

 文章自体は平易で読みやすく、難しい漢字には振り仮名がふってあります。小学校中学年くらいから読めると思います。ミィくらいの歳で読んでも、ムーミンくらいの歳(たぶん中学生くらい)で読んでも、保護者の方が読んでも、それぞれの感動があるでしょう。

 ラストはさまざまな事を象徴するハッピーエンド。
 ちょっぴり難解で、家族を振り回すパパがウザく感じることもある本作ですが、大切なテーマがたくさん詰まっているので、雨の休日などお時間のあるときに、ゆっくりお楽しみください。

※ムーミン全集は電子書籍もあります。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 残酷シーンはほとんどないのですが、終始、暗く深刻な雰囲気の物語です。ただ、哲学的なテーマがあり、登場人物は全員成長します。

 非常に内省的な物語です。学校や仕事場で苦しい状態にあったり、人生の目的を見失っていたり、「これでいいのか」と悩んでいたりと、内面の悩みを抱えているときにはおすすめです。
ムーミンたちがそれぞれの問題を乗り越えてゆくのに立ち会っているうちに、そっと静かに力づけられます。

 いかなるときでも、ムーミンママはおいしいコーヒーを淹れてくれるので、読後はお気に入りのコーヒーでリラックスタイムを。

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