【まほろ姫】たぬきに育てられたお姫様の大冒険!ほのぼのとして、かわいい和製ファンタジー。【小学校低学年以上】

2024年1月18日

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まほろ姫とブッキラ山の大テング なかがわちひろ/作 偕成社

たぬきに育てられたお姫様、まほろには秘密があります。頭に葉っぱをのせて呪文をとなえると、思ったものに化けられるのです。おてんばお姫様まほろと、たぬきの茶々丸が大冒険するお話です。

この本のイメージ かわいい☆☆☆☆☆ 楽しい☆☆☆ 不思議☆☆☆☆☆

まほろ姫とブッキラ山の大テング なかがわちひろ/作 偕成社

 初読です。
たまたま見つけて、絵がとってもかわいいので読んでみたら大当たり。面白くて、ほのぼのとして、かわいらしい和製ファンタジーです。

 たぬきの乳母に育てられたまほろは、たぬきの茶々丸と乳兄弟です。乳母の砧は、まほろの母に命を助けられた恩で、人間に化けてまほろの乳母になりました。

 自分の子供、茶々丸と分け隔てなく愛情を注いだ砧は、まほろに変化の術を教えます。その術で、まほろは思ったものに化けられるのです。

 変化に使う葉っぱは、毎年、ブッキラ山の頂上に住むテングが満月のお祭りの日に運んできてくれるのですが、テングのご機嫌が悪いと葉っぱが少ないのです。
たくさん葉っぱがほしい茶々丸とまほろは、二人(?)で、ブッキラ山に登ろうと思い立ち、そこから大冒険が始まる……というお話。

 登場するキャラクターの中で、人間はまほろだけです。たぬき、テング、狛犬、いろんなキャラクターが登場しますが、みんな、どこかとぼけていて魅力的です。

 テングの設定が面白くて、たくさん勉強して知恵をつけると鼻が長くなる。その鼻の長さを毎年競う競争があって、そこで一位になるとお札がもらえる。
テングたちはそのお札がほしくて毎日勉強するのだけど、他人に知恵を分けてあげると、その鼻の長さが短くなってしまうのです。

 ブッキラ山の大テングは、毎年一位のテングだったのですが、ついに鼻が伸びすぎて、天井に突き刺さり、身動きが取れなくなっていたのでした。(いやいや、本当に頭がよかったら、そんなことにならんだろう、という突っ込みは無しで)

 たまたま、そこにやってきた、まほろが、テングを助けてふたりの交流が始まります。

 このテングの設定が面白いです。
現代人は、受験などで「競争」のために勉強しますが、はたしてそれに意味があるのか?なんのために勉強するのか。それは自分のためなのか、他人のためなのか?
それを考えさせられる設定です。

 伝統的なファンタジーにはよく、森の奥の隠者のような人が出てきます。たくさんの知恵があるけど厭世的になって森で暮らしている。そこに勇者が尋ねていくと、いろんなことを教えてくれる。たいていは、小さい自家菜園をもっていて自給自足をしているか、近所の人に生活の知恵を分け与えて、そのかわりに野菜や着物を分けてもらうみたいな感じの人です。

 でも、この物語のテングの設定は面白くて、テングたちの世界があって、テング同士の競争があるんです。それぞれが、ばらばらに暮らしているのに、意識して勝ち負けを競っている。まるで、受験戦争みたいなんです。

 まほろ姫は物語に出てくる種族たちの間を、唯一縦移動してつなげることができる子です。テング、人間、たぬきは、それぞれがそれぞれの世界で、それぞれの価値観で生活しています。たぬきたちの世界には「月食」と言う概念がありません。だから、月がどんどん欠けていくのは、自分たちの捧げ物が不出来だったからだと考えます。

 テングのいる「知恵の世界」では、それが間違っていることがあきらかにわかります。しかし、その知恵を、テングはたぬきたちにわかりやすく伝えることが出来ません。そこで、まほろが変化の術を使って、うまく伝達しようと思いつきます。

 実際の世界でも、この「通訳」をする人ってすごく大事なんです。官僚の難しい言葉は一般人にはわかりません。だから一般の人にもわかりやすく説明してくれる人は人気があります。会社でも、営業さんと技術さんはなかなか会話が成立しませんから、そこで通訳になれる人がいると、その人自身に営業や技術の能力が乏しくても、必要な人になれるのです。

 まほろは、それを変化……芸能の力でやろうとします。ようするにエンタメですね。
知識とは何か」「創作とは何か」「芸能とは何か」が、かわいらしいお話の中に、ふんわりと入っていて、深いメッセージも込められたファンタジーです。

小学生~中学生にかけて、「なんのために勉強するんだろう」と疑問に感じる、ちょうどその頃におすすめの本です。かしこい子なら小学校低学年でも、読み聞かせしてあげれば理解できると思います。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

ネガティブな要素はいっさいありません。安心してお読みいただけます。かわいくて、ちょっとイマドキ風の和製ファンタジーです。あんころもちと、渋茶をご用意くださいね。

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