【ドラゴンの来襲】魔法の笛吹きと竜たちの住む世界。少年の冒険物語第1巻。【魔笛の調べ】【小学校高学年以上】

2024年3月24日

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ドラゴンの来襲 魔笛の調べ 1  S.A.パトリック/作 岩城義人/訳 評論社

人とドラゴンが暮らす世界で。パッチは禁断の曲を奏でた罪でティヴィスキャン城の奥深くに投獄されてしまいます。しかし、そんなとき、竜と人間の争いが勃発し、「ドラゴンの暗黒」が襲いかかるのでした……。「音楽」の魔法を描いた、冒険の物語開幕。

この本のイメージ 音楽☆☆☆☆☆ 魔法☆☆☆☆☆ 異世界ファンタジー☆☆☆☆☆

ドラゴンの来襲 魔笛の調べ 1  S.A.パトリック/作 岩城義人/訳 評論社

<S.A.パトリック>
北アイルランド、ベルファスト出身。オックスフォード大学で数学を専攻。作家になる前は、ゲームプログラマーとして13年間働く。ほかの作品に、セス・パトリック名義で書いたホラースリラー、Reviverシリーズなどがある。本作が児童書としてはじめての作品。現在は、妻と2人の子どもとともに、イギリスのコーンウォール在住。

<岩城義人>
富山県に生まれる。訳書に「軋む心」(白水社)、「うみべのまちで」(BL出版、産経児童文化賞 翻訳作品賞受賞)、「オーケストラをつくろう」(BL出版)、「プラスチック星にはなりたくない!」(ひさかたチャイルド)、「いっぴきぐらしのジュリアン」(岩崎書店)などがある。

 初読です。原題はSongs of Magic. 第1巻のサブタイトルはA Darkness of Dragons. 英国初版は2018年。日本語版初版は2020年です。

 魔法の曲を奏でる笛吹きが主人公の異世界ファンタジー。相棒は、ネズミに変身した女の子と、ドラゴンとグリフォンのハーフ、ドラコグリフです。

 お話は……

 禁断の曲を吹いた罪で、ティヴィスキャン城に投獄された、笛吹き見習いの少年、パッチ。ここで死を迎えるばかりかと思っていたとき、人間と竜の戦いが勃発してしまいます。

 はたして、パッチはこの戦いを止めることができるのか? そして、かつて大勢の子どもたちをさらった「ハーメルンの笛吹き」事件の真相を明らかにすることはできるのでしょうか?

 偶然出会った、奇妙な仲間たちを道連れにして、パッチたちの冒険の旅がはじまります……

 ……と、いうのがあらすじ。

 日本語版の初版が2020年10月。第1巻が出版されてから、かなり時間が経っていますので、もしかしたら2巻以降が出版されないのかしれません。

 お話は、1巻でも一応のまとまりがあり、完結しており、これはこれで面白くはあるのですが、続編も読みたいと思ってしまいます。本国イギリスでは現在3巻まで出版されているようです。2巻タイトルは、A Thunder of Monsters,3巻タイトルはA Vanishing of Griffinsです。少し間があいていますが、翻訳されて欲しい……。

 物語は、人間や竜、魔法使いなどが暮らす世界で、「笛吹き」と言う、魔法の笛を吹く少年の冒険物語です。正確に言うと、主人公のパッチは、笛吹きの訓練所で訓練を受けながら、最終試験の前に逃亡した、見習い笛吹きです。無資格の笛吹きって感じです。

 優秀だけれど正規の資格を持たない笛吹きのパッチと、ねずみの姿にされた女の子のレン、ドラゴンとグリフォンのハーフ、ドラコグリフのパルヴァーの三人(一人と二匹?)が、冒険の旅をするストーリー。

 この世界では「音楽」が強い力を持ちます。

 現実の世界でも、古くから音や音楽は特別な意味を持っていました。西洋でも、優れた音楽は教会音楽として神に捧げられていましたし、日本でも独特の節回しで謡われる昔の言葉は、祝詞や童歌のように不思議な力があるとされています。

 歌謡曲でも、「自分の元気ソングはこれ」。と、落ち込んだときに聞く曲を決めている人もいますよね。

 この世界では、魔法の曲を奏でる特殊な能力を持った人間を「笛吹き」といい、専門の機関で養成していたのでした。

 しかし、ひょんなことから正規の笛吹きへの道を絶たれたパッチは、やがて、かつて笛吹き界だけでなく世界を震撼された「ハーメルンの笛吹き」事件の真相に近づいてしまうのでした。

 世界設定と魔法の設定が面白く、設定だけでぐいぐい読ませてしまいます。後半は、追い詰められた主人公が、いったいどう状況を逆転させてゆくかを描いています。

 とくに音楽と音楽がぶつかり合い、戦うシーンはわくわくします。「嵐の守り手」では、キャンドルを使って魔法をかけると言う技が新鮮でしたが、音楽で戦うと言うのも面白いですね。
 作者の方は、15年間ゲームクリエイターをされていた方だそうです。ゲームの音楽は短い曲がループするように作られるので、たしかにちょっと呪文的で魔法的かもしれません。

 異世界の設定の面白さあり、キャラクターの魅力あり、そして正統派の冒険ありと言う、わくわくのファンタジーです。
 正しい主人公たちが悪い敵をやっつける話ではなく、主人公たちがそれぞれ、みんな少しずつダメなところがあるのが、支えあって一緒に困難を乗り越えるうちに成長してゆくお話です。

 ラストで完全に引きがあって続いているわけではなくて、いったんは一応の完結はしているので、楽しく読むことはできます。異世界の独自の設定にしびれるファンタジーです。面白かったし、続きがとても気になるので、出版社さま、よろしくお願いします!(と、テレパシー)

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 人が死んだりとか、そういうシーンはあるにはあるのですが、残酷過ぎないように気をつけて書かれています。「そういうシーンがあるのだな」と身構えていれば、多少のことは気にならない方なら、面白いのでおすすめです。

 音楽が好きで、楽器をやっていたりすると、より楽しめるかもしれません。

 読後は、熱い紅茶とお好きなお菓子で、ひとやすみしてください。好きな音楽をかけるのを忘れずに。

 

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