【長くつ下のピッピ】抱腹絶倒!世界一つよい女の子の物語。【小学校中学年以上】

2024年2月12日

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長くつ下のピッピ アストリッド・リンドグレーン/作 富原眞弓/訳 もけお/絵 角川つばさ文庫

小さな町の町外れに古い家がありました。その家に、1人の女の子がサルを連れて引っ越してきたのです。名前はピッピ。両親がいない、学校に行ったこともない、ちょっと変わった子でした。でも、ピッピは、世界一つよい女の子なんです。だって、馬だって持ち上げられるんですからね。

この本のイメージ 荒唐無稽☆☆☆☆☆ 抱腹絶倒☆☆☆☆☆ 絶対無敵☆☆☆☆☆

長くつ下のピッピ アストリッド・リンドグレーン/作 角川つばさ文庫 岩波少年文庫他

<アストリッド・リンドグレーン> スウェーデン生まれ。小学校の先生や事務員をしながら数多くの作品を発表し続けた。国際アンデルセン賞受賞。作品に「長くつ下のピッピ」「やかまし村の子どもたち」など。

 世界的名作「長くつ下のピッピ」のご紹介です!

 いつかしなければ、いつか書かなければ、と思いつつ、「いったい、これ。どう紹介したらいいんだろう」と一週間以上悩んでおりました。ファンの多い名作ではありますが、現代のお母さまがたに、ピッピの魅力をご理解いただけるよう説明する自信がまるでなかったのです……

 このめちゃくちゃだけどとびきり楽しいお話のあらすじをご紹介しますと、

 小さな町の町外れに、草ぼうぼうのお庭の古い家がありました。そこに、いっぷう変わった女の子が、小猿と一緒に1人でひっこしてきます。彼女の名前はピッピ。お母さんは小さいときに亡くなり、船乗りだったお父さんは海に落ちて行方不明。天涯孤独の女の子です。

 でも、彼女はいつだって天真爛漫、怖いものなし。だって、馬を持ち上げられるくらいの力持ちで、トランクいっぱいに金貨を持っている大金持ちだったのです。

 そんなピッピが、したいほうだい、やりたいほうだいに暮らす豪快な日常に、お隣の優等生きょうだい、トミーとアンニカはふりまわされっぱなし。でも、パパとママの言うことを大人しく聞いているだけでは、ぜったいに味わえない、最高に楽しい日々をピッピは二人にくれるのでした。

 とまあ、こんな感じの本なのですが、今のご時世ピッピのような子が現実にいたら、毎日SNSで炎上しちゃうと思います。楽しいか迷惑か、って考えたら、子どもにとっては最高に楽しいけれど、大人にとっては最悪に迷惑な女の子、それがピッピ。

 わたし自身は子供の頃、岩波少年文庫で読んだのですが、これを現代の感覚で「格調高い古典名作」と思って読むと、むしろ反発してしまったりしていろいろ誤解が生じるかもしれません(いい訳なのですが……)。

 現代のお子様方にわかりやすくピッピの雰囲気を伝えるには、入門編として新訳版の「角川つばさ文庫」版をおすすめします。

 ※ただし、角川つばさ文庫版は、どうやら「長くつ下のピッピ」と「船に乗のる」のみで、「南の島へ」は出版されていないようです。角川版は入門編として楽しみ、気に入った方は、岩波版で三部作をお楽しみください。

 角川版のピッピは、可愛らしい今風のイラストが漫画風にちりばめられていて、言葉遣いもやや現代風になっています。
 ピッピって、まさに、こんな感じなのです。言うなれば、古い世代にとってはドリフの「8時だヨ!全員集合」とか、「吉本新喜劇」だとか、それから少し下の世代だと「おぼっちゃまくん」みたいな
 でも、今の子はドリフは知らないでしょうし、「おぼっちゃまくん」だって古いはず……(困った)

 ようするにあれです、今ふうの感覚で言うなら「日常破壊系ギャグ」です。

 子どもの「こうだったらいいな」が思う存分詰め込まれてる。だから大人が読むと「そんなわけあるかい」と思ってしまうし、それだけでなく、自分の子どもの友達に「こんな子いたら困る」って思うので、面白さが相殺されてしまうのです。(わたしは子供の頃読んだときは最高に面白かったのですが、心が大人になってから読むと、けっこうびっくりしてしまったんですよね。)

 でも、純粋に子どもの視点だけで読むと、こんなに楽しくって頼りになる女の子はいません。
 お上品な上流階級のコーヒーパーティーはぶちこわし、強盗は撃退し、火事で絶体絶命の子どもを楽々と助け出してくれる。そして、作中のトミーとアンニカは、やんちゃなピッピと一緒に上等なお洋服がどろんこになるまで遊びたいと言う、ふつうの子の夢を叶えてくれます。

 それにしても、これを、70年以上前に書いたリンドグレーンって、どんな人だったのでしょう。突き抜けた感性です。

 子ども心に戻りたいときは、ぜひ、お子さまに読み聞かせしてあげてください。「ほんとうはこんなことしちゃだめなのよ」と言いたくなる気持ちをぐっと我慢して……。

 それさえできるなら、文句なしの名作なんです。もちろん、子どもにとって。

 ※さまざま頭を悩ませて書いてみましたが、お好きな方を傷つけてしまったかもしれないと思い、加筆修正しました。(2020.08.13)※角川版では続編が入手困難だとわかり、加筆修正しました。岩波少年文庫なら三部作ぜんぶが楽しめます。(2020.09.01)

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 HSCさんにはおすすめです。ギャグマンガと同じだと思えば、スカッとするんじゃないかと思います。

 ただ、大人になってしまうと逆に受け付けなくなる人がいるかもしれません。そこが、微妙なところです。ロアルド・ダールなどブラック・ユーモア系のお話が好きな方には、いいかも。
 毎日が息苦しいときに、風穴を開けてくれるようなさわやかさがある物語です。「マチルダは小さな大天才」や、「チョコレート工場の秘密」が面白く感じられるなら、ピッピはおすすめだと思います。

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