【バレンタイン企画】【チョコレート工場の秘密】映画にもなった、ブラックユーモアファンタジーの名作。秘密のチョコレート工場に潜入しよう!【小学校中学年以上】
ジョニー・デップがウィリー・ワンカを演じた映画で有名な、ロアルド・ダールの児童向けファンタジーです。語りかけるような口調の翻訳が魅力的。
この本のイメージ 不思議☆☆☆☆☆ 楽しい☆☆☆☆ ブラックユーモア☆☆☆
チョコレート工場の秘密 ロアルド・ダール/著 クェンティン・ブレイク/絵 柳瀬 尚紀/訳 評論社
<ロアルド・ダール> 1916年。サウス・ウェールズ生まれ。イギリスの作家。第二次世界大戦中イギリス空軍のパイロットとして従軍した時の経験を描いた作品で作家に。
映画があまりにもヒットしたので、そちらの印象のほうが強いかもしれません。ジョニー・デップが、チョコレート会社の社長、ウィリー・ワンカを怪演しました。
映画のワンカさんは、若くて怪しく美しい社長さんですが、原作のワンカさんは、かなりお年寄りです。
でも、相当変人でムチャクチャな人なので、若い(というか見た目若い)設定に変えたのはよかったのかも。子どもたちやウンパッパルンパッパ人の扱いとか、わりと乱暴でびびります。ワンカさんはねえ、敏腕経営者じゃないですよ、これはどう見てもマッドサイエンティスト。
お話自体は文章が読みやすいのと、展開が速いので、すいすい読めてしまいました。
90を過ぎているジョウじいちゃんをはじめとして、お年寄りたちがなんともチャーミングで、主人公のおかれた深刻な状況もヘビーな気持ちになりすぎずに読むことが出来ます。
でも、チャーリーの家がとんでもなく貧しいのは、重要な設定なんです。
板チョコに封入された黄金切符によって選抜された五人の子どもたち(と同行するその親)は、秘密のベールに包まれたワンカさんのチョコレート工場の見学ツアーに招待されます。
そこは見たこともない、不思議な不思議な工場。そこで子どもたちは、摩訶不思議な経験をして…と言うファンタジーストーリー。
とてもコミカルで愉快な話なのですが、ときどきブラック。でも、根底には「児童文学はかくあるべき」のような、骨太の信念も感じられます。
四人の子どもたちの一人、テレビ狂の男の子のエピソードでは、ウンパッパルンパッパ人(映画ではウンパルンパ人)は「テレビばっかり見てないで本を読め」と歌うんですが、映画ではゲーム狂の男の子に改変されていました。やっぱりテレビを悪者にするのは難しいのでしょうかしらね。読書はすべきなのですが。
五人の子どもたちが、子どもたちだけでなく保護者の付き添いも許されたことは、読み進んでいくと理由がわかってきます。
チャーリー以外の子どもは、工場の中で禁止された行為をしたことで、ひどい目に遭うのですが、そのさい、親も一緒に被害をうけるのです。でも、その災難の被り方は読者視点では「まあ仕方が無いだろうな」と思えるんですよね。チャーリーの家族以外は、あからさまに毒親なんですよ……。子どもの命より、上等のスーツが大事とかね。
子どもは勝手にいけ好かない性格に育つわけではないので、そのように育てた親には責任がある。
と言うのが、ダールの主張なのでしょう。だから、大人である親は容赦なくひどい目に遭う。
だけど、子どもには同情があるので、工場に飲み込まれた子どもたちは、死ぬようなことはなく、ラストではちゃんとそれなりに元に戻してもらい、そして、ちゃんと約束どおり一生分のお菓子をもらい、帰路につくのです。
ワンカさんが約束を守って、どんな悪さをした子どもたちにも、きちんとお菓子を持たせて家に帰すところは、細かいところだけど大好きです。
しかし、その他の部分では、とにかくワンカさんの行動が、ダイナミックすぎて、むちゃくちゃ強引で、終わりよければ途中なんてどうでもいいって言う性格なので、
「この人と一緒なのはチャーリー大変だな」って気持ちのほうが大きいラストシーンでした。いや、ハッピーエンドなんですけどね。
バレンタインデーに、お相手が本好きの人なら、このかわいい本にチョコを添えてプレゼントするのもいいかも、って思います。デザインもすごくおしゃれで、サイズは小さくてかわいい本です。
ロアルド・ダールは印税の10パーセントを慈善事業に寄付する方針なのだそうです。こんなブラックユーモアに満ちた童話を書く人がそんなことを…と思うと、しかしたらワンカさんは作者の分身で、だから作中のワンカさんの行動や気持ちは案外全部本気なのかもと思えてきます。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
愉快な童話です。ダイナミックすぎて、顎が外れそうになるかもしれませんが、細かいことは気にせずに読みましょう。文句なしのハッピーエンドです。もちろん、読むときはチョコレートを用意してくださいね。
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