【くのいち小桜忍法帖】キュートなくのいち忍法帖!新感覚時代劇児童文学、見参!【小学校中学年以上】
時は元禄。あるときは商家の丁稚、そしてまたあるときは可憐な町娘。しかしてその実態は、橘北家のお庭役、生まれついての凄腕くのいち、それが小桜なのです。今日も、彼女は世間を騒がせる事件を追って、夜のお江戸を駆け巡ります……
この本のイメージ 時代活劇☆☆☆☆☆ 忍者☆☆☆☆☆ 謎解き☆☆☆
月夜に見参! くのいち小桜忍法帖 斉藤洋/作 大矢正和/絵 あすなろ書房
<斉藤 洋>
日本のドイツ文学者、児童文学作家。亜細亜大学経営学部教授。作家として活動するときは斉藤 洋と表記する。代表作は「ルドルフとイッパイアッテナ」「白狐魔記」など。
「ルドルフとイツパイアッテナ」の作者が送る、新感覚痛快時代劇です。初版は、2015年。おお、今回は人間の話だ。
幕府直轄のお庭役宗家、橘北家の末娘、小桜はふだんは商家の丁稚すがたで働いていますが、あるときは町娘、あるときは丁稚、そして夜は忍装束で「おとつめ」にも出る、くのいちです。
まだちょっぴり半人前のところもある小桜ですが、正義感と好奇心の強い彼女は、江戸を騒がせる事件を聞くと黙ってはおれず、立ち上がってしまいます。これは、そんな小桜の冒険物語。
今回は、江戸を騒がせる、のっぺらぼうが出るという怪異事件と、小さな子どものかどわかし事件、そして、小桜の兄たちが追う、長崎奉行関係の大事件が絡み合った捕り物です。一見、無関係に見えるそれぞれの事件、いったいどんなかかわりがあるのでしょうか?
小桜は、経験は足りないけれど直感力があり、ピンと来たらすぐ行動する女の子。
相棒は、お兄さんが南蛮から手に入れた、シェパードの「半守(はんす)」です。
ふだんは、綺麗な振袖を着てそぞろ歩きをするのが趣味の、お洒落大好きな女の子ですが、いざとなると大切な振袖を振り捨てて大立ち回りも出来る、肝の据わったくのいちなんです。そして、ちょっぴり無鉄砲。
でも、そんな無鉄砲な小桜が、謎に包まれた事件の鍵を見つけ、解明していきます。
どんな結末になるのかは、読んで見てのお楽しみ。
小桜のお兄さんたちは、みんなかっこいいですし、うきうきする設定です。今後それぞれ見せ場があるのかと思うと楽しみです。謎めいた歌舞伎役者の市川桜花は、どこかで見た雰囲気。これは、もしや……と思わせます。
今はテレビで時代劇を見る機会も減りましたし、児童文学で時代ものが読めるのはうれしいですね。
とくに、お庭役が出てくるお話は新鮮です。忍者の設定はオリジナルだと思いますが、詳しく設定されていて面白い。
字は大きく読みやすく、難しい漢字には振り仮名が振ってあり、小学校中学年以上、かしこい子なら低学年から。挿絵はかわいらしく、ふんだんに入っており、どの絵も文章にぴったりです。
小さなお子さまが時代ものに興味を持つきっかけには最適。大人ももちろん楽しめますから、親子で読み聞かせで楽しむのもよし、また、お年寄りへの差し入れにもおすすめです。
今は、孫がおじいちゃんおばあちゃんを訪ねていくのも難しい時期です。
高齢者でも読める大きな字の、楽しい時代小説をプレゼントしてみるのもいいかもしれません。もしかしたら、Zoomで読み聞かせしても喜ばれるかも。新しいカタチの里帰りに。
大人が子どもに読んであげても、子どもがお年寄りのために読んであげても楽しい、新感覚の時代小説です。
わたしも続きが楽しみ。これから、こつこつと読もうと思います。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
活劇シーンがあるので、苦手な人はいるかもしれませんが、暴力描写は激しくありません。ちょっととした活劇シーンならだいじょうぶな方なら、おすすめです。
大人も子どもも楽しめる、さわやかな忍法帖です。小桜がおしゃれでかわいらしいので、女の子にもおすすめです。
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