【白狐魔記】仙人に弟子入りした狐の冒険譚。時を越えた和ファンタジー児童文学です。【小学校中学年以上】

2024年2月11日

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白狐魔記 源平の風 斉藤洋/作 偕成社

とあるきつねが人間と言う生き物に興味を持ちました。そして、白駒山の仙人に弟子入りし、人間に化ける術を教えてもらったのです……

この本のイメージ 歴史冒険☆☆☆☆☆ 和ファンタジー☆☆☆☆ きつねかわいい☆☆☆☆

白狐魔記 源平の風 斉藤洋/作 偕成社 

<斉藤洋>
日本のドイツ文学者、児童文学作家。亜細亜大学経営学部教授。作家として活動するときは斉藤 洋と表記する。代表作は「ルドルフとイッパイアッテナ」「白狐魔記」など。

 初読です。友人に勧められて読みました。タイトルは「しらこまき」と読みます。

 あらすじは、

 とある一匹のきつねが、人間に興味を持ち、人間に化けてみたいと思うようになりました。
白駒山の仙人に弟子入りすると、変化の術が使えるようになると聞き、はるばる旅をして白駒山に向かいます。

 道中、様々な冒険をして白駒山にたどり着き、望みどおり仙人に弟子入りして、人間に化けられるようになります。白狐魔丸(しらこままる)と言う名前ももらい、山を下りた狐は、人間たちの戦に巻き込まれていきます……。

 というもの。

 きつねの白狐魔丸は、純真でちょっと生真面目なところがある子狐です。巣立ったばかりでまだまだ家族が恋しい年頃。でも、好奇心旺盛で、人間と言う生き物に興味津々です。

 修行すればきつねが人間に化けることができるらしいと小耳に挟み、白駒山の仙人のもとにやってきます。この仙人、強大な力を持っているのに、めちゃくちゃゆるゆるなんですよ。
それに、目を白黒させるきつねがとてもかわいい。

 変化(へんげ)するためには、滝に打たれたり厳しい修行が必要だと思いきや、「必要ないが、やりたければすればいい」と言うスタイル。下働きもさせないし、きつい修行もさせないけれど、必要なことはちゃんとさせるのです。

 人間にばけるための修行は一切無く、まず仙人の力できつねを人間に変えてしまう。
そうすると、最初は声も出ないし歩けもしないので、そこで人間の身体でしゃべったり身体を動かしたりさせてみるわけです。

 次は、字を覚えさせたり、言葉を覚えさせたり、人間として生活させて、生物としての人間を理解させます。知らないものに化けられるわけがないだろう、と言うことです。納得。

 これなら、人間に化けはしたものの、人の所作や振る舞いがわからなくてばれるということがありません。さすが仙人、二歩も三歩も先を見ています。

 しかも、声を荒げて𠮟ることもなく、好奇心旺盛なきつねにとって知りたいこと面白そうなことをどんどんさせているだけなので、表面的には甘やかしてかわいがっているだけにしか見えないんです。でも、必要な事はさせている。

 暫く人間の姿で生活させた後、ようやく自力で「やってみろ」と変化させると、きつねはあっさり、こともなく変化できました。

 この仙人、ゆるっとした雰囲気ですがコーチとして、とんでもなく優秀です。ひたすら合理的。いっさいの根性論、無し。
 古い世代のわたしは、心底感動してしまいました。これが、今ふうのコーチングと言うやつでしょうか。この仙人さんに弟子入りしたいくらいです。

 きつねくんのほうがわりと生真面目で、修行ないんですか?みたいな感じなんですけど、このゆるゆる師匠のもとで、ちゃんと高度な変化が出来るようになり、「白狐魔丸」(しらこままる)という人間らしい名前もいただきます。

 家族の顔も見たいだろう、と言う仙人の心遣いで、白狐魔丸は下山しますが、時はちょうど源平合戦の時代、落ち延びてきた源義経と偶然出会った白狐魔丸は、彼らの逃避行にちょっとだけ関ります。

 どうも、これは時を越えたファンタジーらしく、一巻で話はひとまず終わり、二巻目は鎌倉時代、蒙古襲来にかかわるようです。
 人間のことを知りたい白狐魔丸が、様々な時代、様々な人間に関って、人はどうして争うのか、人はどうして生きるのかを知っていく物語です。

 きつねの純真な目で見つめる人間たちの生き様が新鮮です。人はどうして食べもしないのに同族を殺すのか、どうして集団になって殺しあうのか、どうして負けるとわかっているのに闘うのか……

 白狐魔丸は、好奇心の赴くままに人間についていき、彼らの生き様に関ります。

 字が程よく大きく、読みやすく、漢字にふりがなもついています。小学校中学年から読めると思いますし、日本史に興味をもつきっかけにもなるでしょう。また、歴史ファンタジーですので、高齢の方へのプレゼントにも。お子様がおじいさまおばあさまに読み聞かせするのもいいかもしれません。

 白狐魔記は現在六巻まで出版されているようです。(完結しているのでしょうか?ちょっと不明)
こつこつ読んで紹介していくつもりですので、お楽しみに。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 合戦のシーンもありますし、人も動物も死にます。流血シーンもあるので、苦手な方にはおすすめしませんが、それらが大丈夫ならおすすめです。女の子も楽しく読めると思います。
凄腕コーチの白駒山の仙人がすばらしい。


読み聞かせにもおすすめです。読んだ後は、源平合戦や、義経、弁慶についてお子様に説明してあげてください。

おいしい緑茶と和菓子をお供に、ぜひどうぞ。

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