【白狐魔記】妖狐がみつめる人間模様。大塩平八郎の乱編【小学校中学年以上】

2020年10月22日

広告

白狐魔記 天保の虹  斉藤洋/作 偕成社

長い眠りから醒めた白狐魔丸は、雅姫(つねひめ)に誘われて江戸に向かいます。江戸では怪盗鼠小僧が世を騒がせていました。江戸から戻った白狐魔丸は大阪へ。大阪では飢饉で苦しむ人々が反乱をおこそうとしていたのです。

この本のイメージ 和ファンタジー☆☆☆☆☆  人間って……☆☆☆☆☆  群像劇☆☆☆☆☆ 

白狐魔記 天保の虹  斉藤洋/作 偕成社

<斉藤洋>
日本のドイツ文学者、児童文学作家。亜細亜大学経営学部教授。作家として活動するときは斉藤 洋と表記する。代表作は「ルドルフとイッパイアッテナ」「白狐魔記」など。

白狐魔記 天保の虹  斉藤洋/作 偕成社

 妖術を得た白狐、白狐魔丸の人間探求の物語第七巻です。

 長い眠りから醒めた白狐魔丸は、白駒山にたずねてきた妖狐雅姫(つねひめ)と連れ立ってひさしぶりの江戸へ。雅姫は、何代目かの市川桜花と名乗って、歌舞伎役者暮らしをしていました。

 彼女の世話で宿を得てのんびりしていた九十九小吉こと白狐魔丸ですが、江戸で鼠小僧という怪盗が世を騒がせていると知ります。また、桜花の話では、その鼠小僧のニセモノまでいるようです。

 ひょんなことで次郎吉という男に出会い、鼠小僧騒動に巻き込まれた白狐魔丸は、その後大阪に向かい、今度は大塩平八郎の乱に立ち会うことになります。

 今回の物語は、俯瞰からみた群像劇です。
 虹のように、さまざまな価値観の様々な人々の人間模様が描かれ、それぞれにとっての正しさ、幸せの形は、こんなにも違うのだと思わされます。

 人生において、「ただひとつの正解」があり、それ以外は全部間違っているとするならば、どんなに楽で、どんなに簡単なことかしれません。

 でも、そうでないからこそ、人はすばらしく、そして美しいのだと思います。

 子供向けのファンタジーで、ここまで容赦なく哲学的なテーマを投げかけてくる作品は珍しく、読み終わった後は、しばらく頭を使います。何をどうするのが正解だったかというのは人それぞれで難しく、「えっ、それがその人の幸せだったの?」と他人には理解できないものもあり、それが人間と言うものなのでしょう。

 千差万別の生き方を、狐である白狐魔丸がくもりのない澄んだ瞳で見つめています。

 何百年も生きている妖狐である雅姫も、強大な力を持ちながらも思う通りには生きられず、肝心なときにはままならないことばかり。わりとそういうものなのかもしれません。ものすごく能力があっても、タイミングに恵まれないというような。

 白狐魔丸と雅姫の関係が、何百年も命のある存在同士、深くわかりあいながら恋愛関係ではない強い信頼があるのが好きです。こういう関係は、ごく一部の女流作家が描くことはあるのですが、男性作家で書いてくれる人は少ないので、うれしいですね。

 その雅姫も、人間の尺度ではけっしていい人とは言い切れないところがあります。そういうところも含めて、おおらかに内包する物語です。

 つらい展開もあり、苦しい展開もありますが、ラストには光が見え、救いのあるお話になっています。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 白狐魔記は、このサイトでご紹介する作品の中では、わりとハードな内容のほうで、人も死にますし、合戦シーンや残酷なシーンもあるので、繊細な方やそのような展開が苦手な方には、基本的にはあまりおすすめできません。けれども、「そういうシーンがあるのだな」と身構えていれば大丈夫の方にはおすすめです。

 非常に深いテーマを取り扱っているので、HSPやHSCのほうが多くのことを受け取れると思います。
 途中に哀しいシーンもありますが、今回のラストは、救いのある結末です。

いつもありがとうございます

にほんブログ村 本ブログへ

広告