【白狐魔記】妖力を得た狐の時を越えた冒険譚、第四巻。信長と狐の物語。【小学校中学年以上】

2024年2月11日

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白狐魔記 戦国の雲 斉藤洋/作 偕成社

長い眠りから目覚めた白狐魔丸。ひょんなことから知り合った不動丸と言う少年の復讐を見届けることになります。その頃、妖狐雅姫(つねひめ)は小桜と名乗り、信長と関っていました……。

この本のイメージ 和ファンタジー☆☆☆☆☆ 歴史ミステリー☆☆☆☆☆ 冒険活劇☆☆☆☆

白狐魔記 戦国の雲 斉藤洋/作 偕成社

<斉藤洋>
日本のドイツ文学者、児童文学作家。亜細亜大学経営学部教授。作家として活動するときは斉藤 洋と表記する。代表作は「ルドルフとイッパイアッテナ」「白狐魔記」など。

 仙人のもとで修行して人間に変化(へんげ)できるようになった妖狐、白狐魔丸(しらこままる)の人間探求の物語、第四巻めは、「戦国の雲」。戦国時代の物語です。


 第1巻「源平の風」で、白狐魔丸に変化の術を教えてくれた、白駒山のゆるゆる仙人は天竺に旅に出たまま戻ってきていません。第1巻からずっと登場しているのは白狐魔丸だけになってしまいました。2巻から登場の雅姫(つねひめ)は、今回も登場、妖しい魅力をふりまきます。

 今回は、白狐魔丸が白駒山で偶然出会った、不動丸という鉄砲撃ちの少年が織田信長に復讐するまでをが見届けるお話です。

 自分が武士とかかわると、ろくなことにならないんだよなあ、嫌だなあ、と思いながら、なんとなく気になった人間のことを助けようとする白狐魔丸。わからないことがあると、小首をかしげる癖がかわいいですね。

 不動丸は、朝倉義景との戦いのさい、敗走する信長を狙撃しようとして失敗した杉谷善住坊の弟子でした。彼はのこぎり引きの刑にされた師匠のなきがらを白狐魔丸の助けで運び出し、弔います。そのとき、念仏をあげてくれた一向宗の僧侶のために、恩返しとして一揆の手伝いをすることに。そして、その後はひょんなことで、本能寺へと……。


 こういう、情に篤くて義理堅い人間に出会うと、ついつい助けてしまう、白狐魔丸。

 でも、そんな人間より、竹崎季長のような、ちょっぴりちゃらんぽらんでおおらかな人間のほうが、ふてぶてしく長生きするのに、とも思っているようです。(でも、白狐魔丸はそんな人間にはあまり興味がない。ここが皮肉なところ)

 戦国時代は、個性の強い人間が山ほど出てくる時代なので、この巻だけで終わってしまうのはもったいないですね。

 この巻で白狐魔丸は、魂憑依という、最も難しい術を体得します。それによって、狐に戻ったときの姿も白く、大きくなりました。そんな白狐魔丸の成長を実の姉のように見守る、雅姫。人間に対しては、ちょっと残酷な雅姫ですが、こんなふうに長く生きている狐もめずらしいでしょうから、格別の情があるようです。

 今回は、不動丸は死ぬこともなく生き延びます。白狐魔丸にとっては、それが救いですね。

 それにしても、人間は憎しみ恨みの再生産、あだ討ち敵討ちのループです。おそらく、それが著者の書きたいことなのでしょうけれど、このまま、どうなってしまうのか……。

 ゆるゆる仙人の帰還が待ち遠しいです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 戦国時代なので戦の描写がありますし、人はたくさん死にます。流血シーンもあります。苦手な方にはあえておすすめしません。「そういうシーンがあるのだな」とあらかじめ身構えていれば大丈夫な方には、お話自体は面白いのでおすすめです。
 お子様に歴史への興味をもってもらう助けになるので、読み聞かせにも。
 歴史ミステリーなどが好きな方にはとくにおすすめいたします。
 読後には、いい香りの緑茶と和菓子をどうぞ。

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