【エルマーのぼうけん】空を飛んでみたいなら?老猫のアドバイスで旅立つエルマーの大冒険【小学校低学年以上】

2024年2月13日

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エルマーのぼうけん ルース・スタイルス・ガネット/作 ルース・クリスマン・ガネット/絵 わたなべ しげお/訳 こどもの本編集会/編集 福音館書店

エルマー・エレベーターは、偶然出会った老猫を助けて仲良くなります。老猫は、助けてもらったお礼に、空を飛んでみたいと願うエルマーにある助言をするのです。それは、囚われの竜を助け出す、秘密の作戦で……

この本のイメージ 冒険☆☆☆☆☆ 知恵☆☆☆☆☆ 自由☆☆☆☆☆

エルマーのぼうけん ルース・スタイルス・ガネット/作 ルース・クリスマン・ガネット/絵 わたなべ しげお/訳 こどもの本編集会/編集 福音館書店

<ルース・スタイルス・ガネット>
アメリカの作家。1923年ニューヨーク生まれ。化学者だったが、その後、児童図書協議会の職員として働く間に、「エルマーのぼうけん」(福音館書店)を執筆。ほかに「エルマーとりゅう」「エルマーと16ぴきのりゅう」

<ルース・クリスマン・ガネット>
ルース・スタイルス・ガネットの母親。アメリカの有名イラストレーターで、ニューベリー賞を受賞したキャロル・シャーウィンベリーの「ミス・ヒッコリー」などを手がける。

 古典的名作、「エルマーのぼうけん」を再び読み直しました。母娘で作った絵本だったのですね。
そして、作者はもと化学者だったようです。

 主人公は、エルマー・エレベーター。この物語の中では、本の作者は彼の息子となっています。原題は、My Father’s Dragon(僕の父さんの竜)だからです。

 さて、あらすじは、
 ある日、エルマーは老いた猫を拾います。そして、家に連れ帰り、ミルクをあげますが、エルマーのお母さんは野良猫が大嫌いなので、飼うことを許してくれません。
 それで、エルマーは地下室でこっそり面倒をみてあげることにしました。しかし、それも三週間後にばれて、猫は追い出されてしまいました。

 憤慨したエルマーは、大きくなったら飛行機が欲しいな、そして自由にどこへでも行きたいなと思うようになります。

 実は、もと冒険家だった老猫は、「とってもとっても、そらをとんでみたいとおもいますか?」と聞くのでした。

「とびたいさ。とべるんならなんでもするよ」
「それなら、」
とねこはいいました。
「ほんとに、そんなにとびたいんなら、大きくなってからでなくても、
とぶほうほうがあるかもしれませんよ。」(引用)

 そんなわけで、老猫は一年前にある場所で知った、重大な秘密を教えてくれたのです。

 それは「どうぶつ島」で囚われて虐待されている竜の子どものことでした。

 「エルマーのぼうけん」は、少年エルマーが、老猫探検家に授けてもらった知恵と、自分自身の勇気と行動力で、囚われていた竜の子どもを助け出すお話です。老猫は虐待されていた竜に出会うも、なにもできず、「いつかたすける」と約束したまま、助け出せないことを苦しんでいました。だから、その想いをエルマーに託したのです。

 エルマーは、リュックサックに入れた様々な道具でピンチを乗り越え、虐待されていた竜の子どもを救い出します。
 「どうぶつ島」に出てくる猛獣たちは悪い獣ばかりで、この本では残念ながらゴリラも悪いやつです。(猫以外の動物は全部悪いやつなんですけどね)

 エルマーは、チューインガムやキャンディー、虫眼鏡など、身近な道具でおそろしい猛獣たちから身を守り、竜のもとへとたどり着くのです。

 いつも思うのですが、こういう童話って、日本ではなかなか作られないんですよ。

 先日の「小さなバイキングビッケ」レビューでも書いたのですが、海外の児童文学と日本の児童文学には大きなちがいがあって、海外の物語は「知恵を使う」ことと、冒険の末「豊かになる」ことは是とされているのに対して、日本の物語は「豊かさや楽しさを求めること」だけでなく、「豊かなことや楽しいことそのもの」を是としないむきがあります。
 また、小ざかしく知恵を使うよりも物事に誠実に向き合い、その結果望みがかなわないことがあっても、そのほうが善い生き方であるという考えが根強いのです。

 どちらが正しいとか、どちらがよりよいとか、一概には言い切れませんが、世界にはどちらの考え方も必要な気がするのです。
 正々堂々とぶつかりすぎると争いが絶えなくなりますし、誠実さを失うと人間関係はギスギスしてしまいます。

 知恵を使って危険をのりこえるエルマーですが、そのエルマーは弱った老猫の面倒をみるやさしさがあり、囚われの竜に義憤を感じる正義感があります。
 「小さなバイキングビッケ」も、家族や一族を助けるために知恵を使います。

 おそらく、知恵や知識は人を幸せにするために使うべき、と言うことなんでしょう。
 「エルマーのぼうけん」は、作者ルース・スタイルス・ガネットが化学者だったらしいので、「知識や知恵の正しい使い方」について、信念があったのではないかと思います。
 知恵がないまま生きていく事はできないけれど、知恵を求めるならやさしさは忘れてはいけない……

 知恵そのものが「卑怯」なのではなく、かといって、真正面からぶつかれば「正しい」わけでもなく、そのあいだの、互いがいちばん幸せになれる道を探っていく……それが大切なことなんだなと、あらためて感じました。

 児童書や絵本を読んでいると、ふとした瞬間、世界や人生の土台みたいなところに触れる時があります。これが、わたしが今児童書を読んでいる理由であり、大人にも児童書が必要だと感じている根拠でもあるのです。

 子どもの頃に読んだ本でも、大人になってもう一度読むと新しい発見があります。悩んでいることや迷っていることの答えが見つかることも。

 「もう知ってるよ」と言う本でも、もう一度読んでみてください。
 その人なりの、新しい発見があるはず。

 文章のボリュームもそこそこあるので、絵だけの絵本を卒業して、長い物語を読み始めたくらいのお子様向けです。

 読み聞かせなら幼稚園から。お1人で読むならば小学校低学年から。表紙イラストはカラフルでかわいらしく、挿絵は白黒ですがふんだんに入っています。
 絵の中のエルマーや竜、動物たちがとても生き生きとしているので、お絵かき好きなお子様は、読んだ後は絵が描きたくなるかもしれません。

 このおはなしは「エルマーとりゅう」「エルマーと16ぴきのりゅう」へと続きます。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。安心してお読みいただける低年齢向けの絵本です。大人が読んでもほのぼのとあたたかい気持ちになるので、親子で、お1人で、休日の午後に楽しまれてください。

 読書の後は、あたたかいお茶と、みかんやりんごなど、お好きなフルーツをどうぞ。

 

 

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