【嵐の守り手】ついに最終決戦。時空が交錯する現代ケルティックファンタジー、完結編【試練のとき】【小学校高学年以上】
「嵐の守り手」フィオンは、モリガンとの決戦を前に、太古の魔導士ダグザを呼び戻そうと「ささやきの木」へと向かう。けれど、そこで知ったのは意外な事実で……
この本のイメージ 本格ファンタジー☆☆☆☆☆ ケルト☆☆☆☆☆ 最終決戦☆☆☆☆☆
嵐の守り手 3 戦いの行方 キャサリン・ドイル/作 村上利佳/訳 評論社
<キャサリン・ドイル>
アイルランド西部の大西洋岸で育つ。アイルランド国立大学ゴールウェイ校に学ぶ。祖父母が生まれ育ったアランモア島で語りつがれてきた物語や、実際に島で暮した自身の経験から発想を得て「嵐の守り手」シリーズを執筆。ゴールウェイを拠点としながら、ロンドンやアメリカでも生活。
<村上利佳>
南山大学外国語学部卒業。商社勤務を経て、翻訳の世界に。訳書に「気むずかしやの伯爵夫人」「人形劇場へごしょうたい」(偕成社)「名探偵テスとミナ」(文響社)シリーズなどがある。
現代のアイルランド、アランモア島を舞台に、古代の魔法で魔女と戦う本格ファンタジー、第3巻、ついに最終決戦です。
原題はThe Storm Keeper’s Battle.(嵐の守り手の決戦) 原書初版は2021年、日本語版は2022年初版です。
お話は、完全な続き物なので、まずは第1巻からお読みください。第1巻のレビューはこちら↓
ストーリーは……
火を灯すと時空を跳ぶことができる不思議なキャンドルを作れる「嵐の守り手」。
アランモア島の人々は、島を侵略しようとする魔女モリガンとソウルストーカーに対抗するため、キャンドルの力で対抗していましたが、ほとんどのキャンドルは破壊されてしまいました。
亡き祖父から守り手を継いだフィオンは、モリガンたちに対抗するための力を得るべく、「ささやきの木」に向かいます。
そこには意外な真実が。
新しい力を使いこなせず、うまく戦えないフィオン。
そんななか、「潮の招き手」シェルビーがモリガンに奪われてしまいます。
シェルビーが奪われたことで、味方だったメロウたちが敵になってしまう。
絶体絶命の状態が続くなか、不安定な力をコントロールしながら、リーダーとして仲間たちをまとめなければならないフィオン。
はたして、フィオンに勝機はあるのか?
……と、いうのがあらすじ。
第3巻はついに完結編。フィオンは大いなる力を受け継ぎ、島民たちのリーダーとなります。まだまだ不安定で、完全には力を使いこなせない状態なのに、人を率いなくてはならなくなるフィオン。
頼りないフィオンに不満を持つ人もいれば、どうしてお前がリーダーなんだと敵意を燃やす人もいる。むしろ、理解して支えてくれる人はわずか。人の上に立ってチームを纏め上げることの難しさや、それを引き受ける勇気が描かれます。
今回、ヒロインのシェルビーは正統派ヒロインらしく敵に攫われてしまいます。海の精メロウたちを率いるシェルビーが奪われたことでメロウたちも敵に回ってしまい、大ピンチ。
しかし、もう一人のヒロイン、フィオンの姉のタラが大活躍してくれます。
後半は、いままでの伏線が面白いように回収され、見事なエンディング。かなりのボリュームですが、読みきったときの達成感はひとしおです。
ラストでは一回り成長したフィオンたちが、新しいアランモア島の歴史を歩み始めます。
でも島の魔法は失われていないし、フィオンの中にまだまだ魔法は残っています。続編の可能性も残しながらの、さわやかなハッピーエンド。これは、続きがあるなら読みたいですね。
文章は平易で読みやすく、難しい漢字には振り仮名がふってありますので、小学校高学年から。ヒロインがYoutubeでヘアメイクを学んだり、主人公たちがスマホを使いこなしたりと今時要素もあり、古代の魔法を使う子どもたちも普段はふつうの現代っ子。読者である子どもたちが共感できる要素もたくさんあります。
ハイテク時代に蘇る、古代ケルトの本格ファンタジー。この夏に一気読みしてみてはいかがでしょう。もちろん、大人でも楽しめますよ!
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
最終決戦では死者も出ます。気をつけて書かれているので、流血シーンや残酷シーンはほとんどありませんが、覚悟してください。「そういうシーンがあるのだな」とまえもって身構えていれば大丈夫な方なら、おすすめです。面白いです。
また、心理描写は繊細で、HSPやHSCの方のほうが、多くのメッセージを受け取れるでしょう。
読後はアイリッシュティーでティータイムを。
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