【ジークメーア】「ルドルフとイッパイアッテナ」の斉藤洋の本格ファンタジー開幕!【小箱の銀の狼】【小学校中学年以上】

2024年3月27日

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ジークメーア 小箱の銀の狼  斉藤洋/作 にしざかひろみ/絵 偕成社

海辺の洞窟で、不思議な力をもつ母と二人暮らしのジークメーアは、ある日、母の予言に従って、百人隊長ランスとともに旅に出ることになる。ランスはジークメーアのことを「マーリンの書」に書かれた予言の少年だと言うのだ……

この本のイメージ 中世☆☆☆☆☆ 本格ファンタジー☆☆☆☆☆ 物語の幕開け☆☆☆☆☆

ジークメーア 小箱の銀の狼  斉藤洋/作 にしざかひろみ/絵 偕成社

<斉藤洋>
1952年、東京都生まれ。中央大学大学院文学研究科修了。デビュー作「ルドルフとイッパイアッテナ」で講談社児童文学新人賞、「ルドルフ ともだち ひとりだち」で野間児童文芸新人賞を受賞。路傍の石幼少年文学賞、「ルドルフとスノーホワイト」で野間児童文芸賞を受賞。作品に「白狐魔記」シリーズ、「西遊記」シリーズ、「アーサー王の世界」シリーズ、「遠く不思議な夏」「オイレ夫人の深夜画廊」「サブキャラたちの日本昔話」などがあり、出版点数は300を超える。

<にしざかひろみ>
1979年、神奈川県生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。おもにペン(インク)・水彩を使用した作品を制作し、挿絵・装画などの仕事とともに、個展・国内外のアートフェアにて展示を発表。挿絵を担当した作品に「ラビントットと空の魚」シリーズ(越智典子 作)、「みんな みんな おやすみなさい」(いまむらあしこ 文)、「オズの魔法使い」(ライマン・フランク・ボーム 著、河野万里子 訳)など多数。

 「ルドルフとイッパイアッテナ」の斉藤洋先生による、本格ファンタジーの開幕です。初版は2021年9月。

 舞台はザクセン公国。現代のドイツがあるところに、中世から近世にかけて存在した大きな国です。ドイツは斉藤先生のホームグラウンドですね。

 ジークメーアをそのままグーグル翻訳にぶっこんだら「勝利の行進」と出ました。おおう、そういう意味だったのですか。

 海辺の洞窟で、魔術を使い、予知能力を持った母ヘレナに育てられた少年、ジークメーアは、あるとき、母から「百人隊長ランスが迎えに来たら、彼についてゆけ」と命じられます。

 ランスはザクセンの百人隊長ですが、実はイングランド人。彼は、「マーリンの書」によって「魔神たちを倒しイングランドを救う」と予言された「フクロウより見える少年」を探しており、暗闇でも物を見ることが出来るジークメーアをその少年だと信じて迎えに来たのです。

 ちょうどその頃、遠いフランク王国でも、予言の少年を探す動きがありました。マーリンの予言ではフランク王国が「魔神たちと手を組み、周辺の国々侵攻しいずれイングランドを支配しようとする」としるされていたのです。そのフランク王国を倒すのが「フクロウより見える少年」だったのでした。

 ランスとともにザクセン公のもとへに到着したジークメーア。彼らは、予言された「小箱の銀の狼」を探して、さらに冒険の旅へとむかいます……

 ……と、いうのがあらすじ。

 魔術を使い、病気を治したり予知をしたりする不思議な母親ヘレナに育てられたジークメーアは、弓の名手。そして、暗闇でもものが見えると言う特技があります。
 ランスは剣の使い手で、一人で八人を相手にしてもびくともしない百人隊長。

 このふたりが、ひょんなことから冒険の旅に出ると言う、本格ファンタジーです。

 当時、イギリスは七つの王国が支配するイングランド、ドイツのある場所はザクセン公国、そしてフランスあたりにフランク王国がありました。
 今回の敵?は、このフランク王国のようです。

 「ジークメーア」のはじまりの舞台はザクセンですが、物語の根底には、イギリスのアーサー王と聖杯探求の伝説があり、アーサー王付きの魔術師マーリンが書き残した「マーリンの書」と言う預言書も登場します。彼は予言された少年なのです。
 マーリンは海辺の洞窟に暮らしていたと言う伝説が残されています。
 ジークメーアの母は魔術を使う人で、海辺の洞窟で母子ふたり暮らしをしていたことから、もしかしたらヘレナはマーリンとなんらかの関係があったのかもしれません。
 こういう細かな設定も、想像を掻き立てますね。

 ジークメーアは、無口で内向的な、賢い少年です。
 優れた運動神経の持ち主で、弓の名手。母のいいつけを従順に守る生活をしてきたものの、自分の頭で考えて自分なりの結論を出すこともできます。また、「なぜ」「どうして」と感じたことは、質問できる能力もあります。

 斉藤先生の主人公キャラに共通する、「おだやかだけれど、どこか物事を俯瞰的に見ている、冷静で醒めたところがある」少年です。
 ジークメーアは大人しいけれど冷たいわけではありません。人の死ぬところは見たくなくてつい助けてしまったりすることもあります。それでも、ふだんはどこか一歩引いてものを見ている、と言う感じです。
 猫のルドルフも、狐の白狐魔丸もそういう子です。

 と、ここまで書いて気がついたけれど、今回、主人公が人間だ! めずらしい。西遊記だって、主人公は猿なのに。

 であれば、きっと「小箱の銀の狼」がしゃべるんでしょうね。楽しみです。

 文章量としてはそれほど多くなく、簡単な漢字以外には振り仮名が振ってありますし、漢字も多くはないので、小学校中学年から読めると思います。物語の中に起伏があるので、読み応えがあります。

 まだまだ物語ははじまったばかり。
 予言の「魔神たち」とはなんなのか、なぜジークメーアが予言の少年なのか、そして、マーリンやアーサー王たちとどう関係してゆくのか、あれやこれやと想像して、楽しみでなりません。

 本格ヒロイック・ファンタジーの開幕です。続きを読むのが楽しみです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 人が死ぬシーンがあります。気をつけて書かれているので、それほど残虐ではありませんが、中世の話なのでたくさん死にます。「そういうシーンがあるのだな」とわかっていれば読める方なら、面白いのでおすすめです。配慮して書いてあります。

 中世の古い地図などをお手元に置いて読むと、より面白いと思います。

 ジークメーアがリンゴをめずらしがるシーンが印象的です。読後はリンゴとハーブティーで、雰囲気に浸ってみましょう。

 

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