【ビッケと弓矢の贈りもの】祝映画化!気弱でかしこい風変わりなバイキングの物語【小さなバイキングビッケ】【小学校中学年以上】

2024年2月19日

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ビッケと弓矢の贈りもの ルーネル・ヨンソン/作 石渡利康/訳 評論社

ビッケはフラーケ一族の族長ハルバルの息子です。でも、戦いや争いは大嫌い。けれど、誰よりも頭がよくてやさしいビッケは、頭を使ってピンチを乗り越えます。これは、ビッケの四番目の冒険の物語。今回は、なんとアメリカ大陸へ上陸です。

この本のイメージ かしこい☆☆☆☆☆ 愉快な☆☆☆☆☆ 大冒険☆☆☆☆☆

ビッケと弓矢の贈りもの ルーネル・ヨンソン/作 石渡利康/訳 評論社

<ルーネル・ヨンソン>
1916年~2006年。スウェーデンのニーブロに生まれる。スウェーデンのジャーナリストにして児童文学作家。1963年に、『小さなバイキングビッケ』を刊行、1965年ドイツ児童図書賞を受賞。

 「小さなバイキングビッケ」のシリーズ四作目。

 ひねくれものの巨大ハリケーンに吹き飛ばされたビッケとハルバルたちは、別れ別れになってしまいます。そして、ハルバルたちの船はビンカ人が住むビーンランド……つまりアメリカ大陸にたどり着くのでした。

 仲良しのアザラシの夫婦に助けられたビッケは、ハルバルに合流。ビンカ人と仲良くなり、悪いバイキング、スノッベを撃退します。そして、フリース人の追撃をかわして家に帰るのです。

 と、言うのが今回のあらすじ。

 ビッケたちフラーケ族が今回のたどり着いたビーンランドとはアメリカ大陸。そして、仲良くなった「ビンカ人」とはネイティブアメリカンのことです。

 一時はハルバルたちと別れ別れになってしまうビッケですが、小さい雲や、風や、あざらしの夫婦に助けられて、無事ハルバルたちと合流します。

 雲と風がビッケを助けてくれる理由が「(雲や風は)長生きできないから、生きている間は助け合うのさ」。ふとした言葉ですが、考えさせられますね。
 喧嘩ばかりしているのは、「時間なんてたっぷりある」と勘違いしているからかもしれません。

 ビッケとハルバルはめでたく合流し、あたらしく発見した土地に、あらためて上陸します。そこは、バッファローが住む豊かな土地でした。
 そこで暮らすビンカ人と言う心優しい人たちと、ハルバルたちは仲良くなり、互いの知識を交換して暫くのあいだ楽しく暮らします。

 すると、そこへ悪いバイキング、スノッベが襲ってきます。
 スノッベは髪を金髪に染め、カールしているきどったやつですが、とても横暴で残酷で強欲なバイキングでした。
 争いを好まないビンカ人から、様々なものを勝手に略奪しようとしていたのです。

 怒ったハルバルたちは、スノッベと戦うことになります。
 けれど、スノッベは強いのです。さて、ビッケはどうやってハルバルたちを勝利に導くでしょうか。

 今回のビッケは、小さく弱くても気持ちの通じ合う存在に助けられたり、見知らぬ種族でも心優しくわかりあえる人たちと仲良くし、同じスウェーデンのバイキング同士でも残酷で卑怯な奴らとは戦ったりと、「見た目や所属にとらわれない、心と心がわかりあうこと」を大切に行動して、フラーケ族を守ります。

 ビッケたちは、この信念をつらぬくことで、無事に故郷に帰りつきます。

 わたしが好きなのは、要所要所で、ビッケが怖気づいたり、おびえたり、不安でびくびくしたりする場面がきちんと描かれているところビッケは、頭がいいし、いままでも様々な困難を乗り越えてきていますが、本質的には臆病で小心者なのです。

 ビッケがとんでもない勇気を出したり、恐怖と直面して乗り越えるのは、すべて「ハルバル父さんのため」「みんなのため」「大好きな人たちのため」です。
 今回も、ハリケーンに飛ばされて、一度は「もうだめだ」とあきらめかけたビッケが、まだまだ頑張ろうと決心した理由は「自分が死んだらお父さんが悲しむ」から。お父さんを悲しませちゃいけない、という一心でビッケは知恵を搾り出し、危機を脱します。

 「知恵を使うなら、大切な誰かのために」と言うのは、1冊目の「小さなバイキングビッケ」のときからずっと根底にある、ビッケシリーズの大切な背骨にあたります。

 「頭のいい人は、その知恵を私利私欲に使わず、誰かを助けるために使いなさい」、というのがルーネル・ヨンソンの信念なのでしょう。また、ビッケはどんなに難しい問題を解決できたとしても、けっしていばることも、他の人をばかにすることもありません。それもビッケの魅力です。 


 50年以上前に生まれた物語なのに、まったく色あせず、むしろ今の時代に必要なメッセージがたくさん詰まっているビッケ。
 映画をきっかけに読んでみるのもよし、先に原作を読んで映画を楽しむもよし。小さなエピソードに別れているので、読み聞かせにも最適です。

 3巻はビジネス書としてもおすすめでしたが、この4巻は学校でうまくゆかず元気をを失っているお子さまにおすすめです。

 怖がりでも、臆病でもいいのです。
 むしろ、ビッケにとって恐怖や不安はいつも、愛情とともに問題解決のパワーになっています。

 わかりやすい強さはいっさい無いけれど、いざというときには必ず大切な人たちのために勇気を出せるビッケ。
 弱くて強いバイキングの物語を、どうぞ親子で楽しんでくださいね。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はまったくありません。ゆかいで、とんちの効いた、バイキングの物語です。ビッケは臆病で繊細でやさしい、どう見てもHSCなので、繊細なお子様は読むと励まされるでしょう。もちろん、大人のHSPにもおすすめの物語です。
 寝る前の読み聞かせに、大人ならお風呂上りにのんびり読んでみてください。クスッとできて、ほのぼのかわいいファンタジーです。

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