【家守神】蔵の中の急須が危機を呼ぶ?ちょっぴり怖くて楽しい、付喪神たちとのアドベンチャーライフ【呪いの蝶がねむる蔵】【小学校高学年以上】

2024年3月27日

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家守神 いえもりがみ 2  呪いの蝶がねむる蔵    おおぎやなぎちか/作 トミイマサコ/絵 フレーベル館

佐伯家の暮らしにようやく慣れてきた拓でしたが、古い蔵にはどうやら秘密があったようです。何も知らない拓は、蔵に入り、古い葛籠(つづら)をあけてしまいました。中には注ぎ口の欠けた急須が……

この本のイメージ オカルトファンタジー☆☆☆☆☆ 家族愛☆☆☆☆☆ 友情☆☆☆☆☆

家守神 いえもりがみ 2  呪いの蝶がねむる蔵    おおぎやなぎちか/作 トミイマサコ/絵 フレーベル館

<おおぎやなぎちか>
秋田県生まれ。日本児童文学者協会、日本児童文芸家協会、全国児童文学同人誌連絡会「季節風」会員。「しゅるしゅるぱん」(福音館書店)で第45回児童文芸新人賞、「オオカミのお札」シリーズ(くもん出版)で第42回日本児童文芸家協会賞受賞。児童書の創作に「どこどこ山はどこにある」(フレーベル館)、「ぼくらは森で生まれかわった」(あかね書房)など多数。

<トミイマサコ>
埼玉県生まれ。イラストレーター。装画を手がけた児童書に「まぼろしの薬売り」(楠 章子・作/あかね書房)、「わたしのチョコレートフレンズ」(嘉成晴香・作/朝日学生新聞社)など。

 おおぎやなぎちか先生の「家守神」シリーズ第2巻。初版は2022年2月。
 お話は、一話完結の形式をとってはいますが、完全に続いているので、まずは第1巻「妖しいやつらのひそむ家」からお読みください。


 「家守神 妖しいやつらのひそむ家」のレビューはこちら

 ストーリーは……

 築百年の佐伯の家での生活にも慣れてきた拓でしたが、ある日、庭にある蔵に入り、古い葛籠を開けてしまいます。中には、注ぎ口の欠けた急須。

 しかし、その日から、拓は頭痛がするし、家族のみんなもギスギスしはじめ、家守神たちも慌て出します。

 どうやら、あの急須に秘密があったようです。ママたちは新婚旅行へ行き、おばあちゃんは体調を崩して寝込んでしまうなか、おじいちゃんは悪いやつにだまされているみたい?

 拓は、佐伯家を守れるのでしょうか? そして、欠けた急須の謎は?

 ……と、いうのがあらすじ。

 日本には、人に長く大切にされた古いものには魂がやどると言われています。とくに、百年を過ぎたものは「付喪神(つくもがみ)」と言う神様になると言われてきました。

 築百年の佐伯家には、古いものがいっぱい。
 鶴と亀の絵が描かれた襖には、鶴の鶴吉さんと亀の亀吉さん、古い藤柄の花瓶にはお藤さん、金魚の絵の掛け軸には金魚ちゃんという付喪神がいて「家守神」として、佐伯家を守っています。

 ところが、ここにいるのは「善い付喪神」だけではなかったみたいなのです。
 拓が偶然発見した古い急須には、邪気をいっぱい吸い込んだ禍々しい「何か」が棲んでいました。

 知らずに封印を解いてしまったために、佐伯家は大ピンチ!
 今回は、拓がクラスメイトの平井くんや風花ちゃんと力をあわせて、佐伯家の危機を救うお話です。

 禍々しい付喪神が封印から放たれて、家族の体調を悪くしたり、仲たがいさせたりするのは怖いことですが、本当に恐ろしいと感じたのは、おじいちゃんが悪い人にだまされそうになるところ。

 長い人生のなかには、誰しも一回や二回はこういうことがあるはず。
 家族が悪い人にだまされそうになることが。

 ところが、「それはまずい話だ」と近くの人が気がついても、そういうときに限って病気になってしまったり別の用事で忙しくなったりして、止められなかったりするのです。
 悪い奴って、そういうタイミングを狙ってくるところもあって、カンのいい人はなんのかんのと理屈をつけて遠ざけられてしまいます。まあ、家族の中でいちばんカンのいい人間をまず遠ざけようとする奴は、最初っから要注意なんですけども。

 この家だと、いちばんカンがいいのは拓くん。でも、拓はおじいちゃんとはまだ心の距離があって立ち入った話ができないし、付喪神たちのことで精一杯なのです。そうそう、この感じよ! こういう時がヤバイのよ!

 ここらへんが、ほんとうにリアルだなあと感じました。ハラハラしっぱなし。

 オカルトファンタジーとしてもとっても面白いし、付喪神さんたちだけでなく平井くんや風花ちゃんなど人間のキャラクターも魅力的なのはもちろんなのですが、若い方は今回のおじいちゃんがらみのエピソードを読んで、ぜひともこの「不穏な感じ」を心にとめておいていただきたいな、と思います。

 お年よりは知恵や人生経験もあって頼りになるのですが、その一方で、時代の流れに対応できていなかったり、情報の取得が遅かったりします。また、最近は、若い人たちと年配の方が疎遠になりがちなので、年配の方を狙う悪い人間がいても、若者が気づきにくいのです。でも、何かトラブルが起きれば、無関係ではいられません。

 そういう時はたいてい、事前にこういう「不穏な感じ」がするものなのです。子どもだって、拓くんみたいに大人を助けることができる時もあります。

 拓くんは、佐伯家の血を引いていないし、まだこの家に来たばかりの子どもですが、家守神たちと力をあわせて、佐伯家の危機を救いました。

 字はほどよい大きさで読みやすく、ごく簡単な漢字以外は振り仮名がふってあります。総ルビではありませんが、非常に読みやすく、本来は小学校高学年以上向けだとは思いますが、賢い子なら中学年から読めると思います。
 また、展開が面白いので、下町+オカルトファンタジーとして、大人も楽しめます。

 今回は新キャラも登場。新たな謎も生まれ、築百年の佐伯家にも、そして、「見えないものが見える」拓くんにも、まだまだ秘密がありそうです。

 ゆかいで、ちょっぴり怖くて、そして、モノを大切にすることを教えてくれる、新感覚のオカルト和ファンタジー。
 続きを読むのが楽しみです。

 ※この本には電子書籍もあります。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 呪いの付喪神がちょっぴり怖いけど、残酷なシーンや流血シーンはありません。安心して「ちょっぴり怖い」を楽しめると思います。

 今回は、何かをするときに「心をこめる」ことがテーマになっています。HSCのお子さまのほうが、より多くを感じ取れるでしょう。

 

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