【家守神】付喪神と一緒に暮らすことになっちゃった！ 奇妙で楽しいファミリーストーリー。【妖しいやつらのひそむ家】【小学校高学年以上】
拓は、ママが再婚して新しいおとうさんの家に引っ越すことになりました。築100年の古い家です。ところが、拓たちが引っ越してきてから、不思議な出来事がおきて……。拓が「見える」この奇妙な人たちは、いったい何者なんでしょう？
この本のイメージ オカルトファンタジー☆☆☆☆☆ 家族愛☆☆☆☆☆ 友情☆☆☆☆☆
家守神 いえもりがみ １ 妖しいやつらのひそむ家 おおぎやなぎちか/作 トミイマサコ/絵 フレーベル館
＜おおぎやなぎちか＞
秋田県生まれ。日本児童文学者協会、日本児童文芸家協会、全国児童文学同人誌連絡会「季節風」会員。「しゅるしゅるぱん」(福音館書店)で第45回児童文芸新人賞、「オオカミのお札」シリーズ(くもん出版)で第42回日本児童文芸家協会賞受賞。児童書の創作に「どこどこ山はどこにある」(フレーベル館)、「ぼくらは森で生まれかわった」(あかね書房)など多数。
＜トミイマサコ＞
埼玉県生まれ。イラストレーター。装画を手がけた児童書に「まぼろしの薬売り」(楠 章子・作/あかね書房)、「わたしのチョコレートフレンズ」(嘉成晴香・作/朝日学生新聞社)など。
初読です。おおぎやなぎちか先生のオカルトファンタジー「家守神（いえもりがみ）」。初版は2021年11月。すでに第二巻も発売されているようです。
ストーリーは……
篠田拓は、ママと二人暮らし。パパは６歳のときに肺がんで亡くなりました。ママが恋人の佐伯さんと結婚したいと言ったとき、拓は学校でいじめられていることをママに言い出せていませんでした。
「転校できる」と言う気持ちでいっぱいになり、ママの結婚を承諾し、築100年の佐伯家に引っ越した拓。
ところが、引越し早々、不思議な人たちに出会い、奇妙な体験をすることになります。おまけに、その人たちは、自分にしか見えないらしいのです……
拓は新しい家で新しい家族や学校になじめるのでしょうか。そして、この奇妙な人々の正体は？
……と、いうのがあらすじ。
学校ではいじめに遭い、新しいお父さんにはいまひとつ遠慮があり、どことなく緊張した日々を送っていた拓が、新しい家で新しい家族や新しい友だち、そして奇妙な存在たちと出会い、すこしずつ心がほぐれてゆく、摩訶不思議ヒューマンストーリーです。
日本には、人に長く大切にされた古いものには魂がやどると言われています。とくに、100年を過ぎたものは「付喪神（つくもがみ）」と言う神様になると言われてきました。
築100年の佐伯家には、古いものがいっぱい。
そこここに付喪神がひそんでいるのです。鶴と亀の絵が描かれた襖には、鶴の鶴吉さんと亀の亀吉さん、古い藤柄の花瓶にはお藤さん、金魚の絵の掛け軸には金魚ちゃん。
拓は、彼らの姿が自分にだけ見えることに気づき、自分には何か役割があるのではないかと考えるようになります。
新しい学校で出会った友だちは、ぶっきらぼうだけど優しい平井くんと、妖怪が大好きな妖怪博士、風花ちゃん。いままで友だちがいなかった拓でしたが、付喪神がきっかけで、仲良しトリオになりそうな予感。
まだまだお話ははじまったばかりですが、拓くんが新しい家族と環境を受け入れ、家族がひとつになってゆく様子が丁寧に描かれています。わくわくするファンタジーであると同時に、ほのぼのとした心温まるファミリーストーリーでもあります。
最近の日本の家屋には、「床の間」や「掛け軸」「襖」がない家も増えてきたので、古い家のお話は、子どもには新鮮かもしれません。でも、これらは昔の家には絶対にあったものなので、マンションやアパートでも、築年数のすごく古いものにはあったりします。
床の間がどういうものかわからないお子さまは、最近だと小民家再生系のユーチューブ動画を見ると、見ることができるかもしれません。
漢字の振り仮名は全部に振ってあるわけではありませんが、難しい漢字には振り仮名があり、字がわりと読みやすい、ちょっと大き目のフォントです。小学校高学年以上が対象だと思いますが、中学年でも賢い子なら読めると思います。また、展開が面白く、純粋に和ファンタジー＋下町ホームドラマとして大人も楽しく読めます。
まだまだ物語は始まったばかり。
この「濃い」連中と拓たちが、どんな冒険をすることになるのか、今後の展開が楽しみです。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はありません。拓くんが等身大の悩みと向き合い、一歩ずつ成長してゆくお話なので、読んでいて元気がもらえます。妖怪オタクの風花ちゃんがかわいい。
読後は、お気に入りのおせんべいと、緑茶でひとやすみ。
https://www.mmanorhouse.com/2022/04/09/post-9824/
