【チュウチュウ通り】エミリー・ロッダの、ゆかいな動物ファンタジー絵本第9巻。海をめざすセーラと不思議な宝の地図【セーラと宝の地図】【5歳 6歳 7歳】

2024年3月29日

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チュウチュウ通り 9番地 セーラと宝の地図  エミリー・ロッダ/作 さくまゆみこ/訳 たしろちさと/絵 あすなろ書房

9番地に住む船大工のセーラは船が大好き。そろそろ自分の船が欲しくなり、なにからなにまでお気に入りの船、チュウチュウ号をつくります。そんな時、郵便配達員のスタンプが、宝の地図を拾います。ふたりは、チュウチュウ号で冒険の旅に出ました……

この本のイメージ 動物ファンタジー☆☆☆☆☆ 宝の地図☆☆☆☆☆ 航海と冒険☆☆☆☆☆

チュウチュウ通り 9番地 セーラと宝の地図   エミリー・ロッダ/作 さくまゆみこ/訳 たしろちさと/絵 あすなろ書房

<エミリー・ロッダ>
Emily Rodda、1948年4月2日~。オーストラリア・シドニー生まれのファンタジー作家。代表作は「ふしぎの国のレイチェル」「リンの谷のローワンシリーズ」など。

<さくまゆみこ>
東京生まれ。出版社勤務を経てフリーの翻訳家に。訳書にエミリー・ロッダ「リンの谷のローワン」シリーズ、「ふしぎの国のレイチェル」「テレビのむこうの謎の国」ホーキング「宇宙への秘密の鍵」など。

 「リンの谷のローワン」のエミリー・ロッダのかわいい絵本シリーズ。「チュウチュウ通り」です。
原題はADDY AND THE PIRATES.(アディと海賊) 原書初版は2006年。日本語版の初版は2011年です。

 どの本から読んでもいい構成になっているのですが、1番地から順番に読みたい方は、こちらのレビューをどうぞ。↓

 今回のおはなしは……

 9番地に住む船大工のセーラは、船が大好き。大きい船から小さい船まで、注文があればどんな船もつくります。だけど、そろそろ自分だけの船がほしくなってきました。

 セーラは、なにからなにまでお気に入りの船、チュウチュウ号をつくります。

 そんなとき、郵便配達員のスタンプが、不思議な瓶を海で拾ってきました。瓶の中には、紙が。
 それは、キャプテン・ヘアの宝の地図でした。

 ふたりは、宝を探しに地図の島、チーチュウ海のまんなかの「はげ山島」へ。

 ところが、途中で海賊に襲われてしまい……

 ……と、いうのがあらすじ。

 今回のお話は、わりとオーソドックス。仏教的な要素のあるお話です。

 エミリー・ロッダはストーリーテラーなので、「チュウチュウ通り」のほかのお話は起伏が激しくどんでんがえしの多く、絵本といえども凝ったお話ばかり。
 それなのに、今回、「お約束」な話に感じられて、なんとなく物足りないと感じるのは、わたしが日本人だからかもしれません。

 そう、あれです、「本当に大切なのは宝じゃない」っていうあれ。

 でも、「冒険の旅に出て宝を手にしよう!」と言う物語のほうがスタンダードな海外では、もしかしたら、これはかなり斬新なラストだったのかも。

 セーラは船を創るのが大好きで船に乗るのが大好きだから、自分の作った船で冒険の旅に出ただけでかなり満足しているのです。その結果、宝を手に入れたかどうかは関係ない。過程が楽しかったら、思い通りの結果にならなくても楽しいはず。

 オーソドックスなテーマだけど、大切なことなのかもしれません。
 「チュウチュウ通り」は毎回哲学的なテーマがひそんでいるのが魅力です。今回の「宝探し」は、我々日本人にはとてもなじみがあるテーマですが、あらためて考えてみると深いテーマではあります。

 字はわりと大きめ、すべての漢字に振り仮名が振ってある「総ルビ」です。お子さまがひらがなカタカナの五十音が読めれば、一人でも読めます。もちろん、読み聞かせにもおすすめです。

 たしろちさと先生の素朴でかわいい挿絵は総見開きにフルカラーで入っています。原書の挿絵のイメージに寄せて描いてくださっているのも愛がある。

 「チュウチュウ通り」は、絵ばかりの絵本を卒業して、そろそろ小説にチャレンジしようという「手前」の時期におすすめのシリーズです。絵本なのですが、不思議と読み応えがあり、達成感を感じられる絵本です。

 この夏、シリーズを一気読みしてみるのもいいかもしれません。シリーズはあと一冊、近いうちにご案内します。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はまったくありません。
 「大切なのは結果なのか、過程なのか?」「本当の宝物とは?」 という、オーソドックスなテーマを真正面から描いています。お話はとても楽しく、セーラとスタンプが知恵を使ってピンチを切り抜けるときは痛快な気分になります。

 読後はおいしいお茶と、チーズケーキでティータイムしましょう。

 

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