【チュウチュウ通り】ねずみたちの町のファンタジー。エミリー・ロッダのほのぼのストーリー。ねずみ画家のおはなし【レインボーとふしぎな絵】【5歳 6歳 7歳】

2022年8月20日

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チュウチュウ通り 4番地 レインボーとふしぎな絵  エミリー・ロッダ/作 さくまゆみこ/訳 たしろちさと/絵 あすなろ書房

絵描きのレインボーは、大好きな絵さえ描ければ、食べ物や着るものに無頓着。ある日、お気に入りの絵を描いた、自分の家のドアを買い取りたいと言う人が現れ、彼女はドアを売ってしまいました。ドアのない家で絵を描くことになったレインボーは……

この本のイメージ かわいい☆☆☆☆☆ ほのぼの☆☆☆☆☆ 面白がる力☆☆☆☆☆

チュウチュウ通り 4番地 レインボーとふしぎな絵  エミリー・ロッダ/作 さくまゆみこ/訳 たしろちさと/絵 あすなろ書房

<エミリー・ロッダ>
Emily Rodda、1948年4月2日~。オーストラリア・シドニー生まれのファンタジー作家。代表作は「ふしぎの国のレイチェル」「リンの谷のローワンシリーズ」など。

<さくまゆみこ>
東京生まれ。出版社勤務を経てフリーの翻訳家に。訳書にエミリー・ロッダ「リンの谷のローワン」シリーズ、「ふしぎの国のレイチェル」「テレビのむこうの謎の国」ホーキング「宇宙への秘密の鍵」など。

<たしろちさと>
東京生まれ。大学で経済学を学んだ後、四年間の会社勤めを経て絵本の制作をはじめる。絵本に「みんなの家」「ねずみのじどうしゃ」「すずめくんどこでごはんたべるの?」「くんくんいいにおい」など。

チュウチュウ通り 4番地 レインボーとふしぎな絵  エミリー・ロッダ/作 さくまゆみこ/訳 たしろちさと/絵 あすなろ書房

 「リンの谷のローワン」のエミリー・ロッダのかわいい絵本シリーズ。「チュウチュウ通り」です。
 原題は、PINK-PAWS PAINTING (Squeak Street Stories). 原書初版は2006年。日本語初版は2010年です。

 どの本から読んでもいい構成になっているんですが、一番地から順番に読みたい方は、こちらのレビューをどうぞ。

 「レインボーとふしぎな絵」の原題は「ピンクポーの絵」なので、怪訝に思ってちょっと調べてみたら、この「レインボー」というねずみは、原作では「ピンクポー」(ピンクの足)という名前だったようです。ただ、名前を変更しようとした意図はわかります。たしかに、わかりにくいですもんね。

 エミリー・ロッダはストーリーテラーなので、この「チュウチュウ通り」は子供向けのショートストーリーなのに起伏があって、大人が読んでも読み応えがあります。

 ハツカネズミたちの住むネコイラン町には、10匹の住人がいて、4番地に住んでいるのは画家のレインボー。
今回は、絵が好きすぎて生活に支障をきたしてしまうレベルの芸術家、レインボーのおはなし。

 この町の2番地には、クツカタッポという探検家が暮らしているんですが、この人も自分の興味のあることを見つけると周りが見えなくなるタイプ。チュウチュウ通りは、そんなねずみたちが暮らす町みたいです。

 レインボーは、絵さえ描いていれば幸せなめすねずみですが、物欲がなさすぎて、たまに画材が買えなくなる時があります。そんなレインボーは、自分の家のドアにおひさまの絵を描いていました。

 ある日、その絵を気に入ったねずみが、レインボーの家のドアを買いたいと申し出ます。
 迷いましたが、画材を買いたいレインボーは家のドアを売ってしまいました。

 さて、ドアのない家で暮らすことになったレインボーですが、そのため、新作の絵に驚くべき事件が起きたのです。それは……

 ……と、いうのがあらすじ。

 四作目にして気がついたんですけど(遅いよ)、この世界のねずみたちの通貨は「チーズ」だったんですね!

 一番地のゴインキョが、お屋敷にチーズを大量に溜め込んでいた意味がわかりました。あれは、金倉だったのかあ。あの大量のチーズは、チーズじゃなくて金塊だと思えば、チーズ部屋に忍び込んで寝ていたねずみや、こっそりチーズを運び出そうとしていたねずみたちの印象が違ってきます。

 レインボーは創作欲以外の欲がないねずみなので、生活にはちょっと困っていました。なので、自分で描いてかなり気に入っていた家のドアを売ってしまいます。

 そのドアを買ったねずみは、みよりのない老ねずみたちのための「おひさまホーム」の所長でした。

 この物語の後半は、「おひさまホーム」にかざるおおきな絵を選ぶコンテストと、それに出品しようとしたレインボーが貧しくて絵の具が買えなかったことや、ドアがない家に住んでいたことで驚くようなことがおき、それが彼女を助けたと言う展開になっています。

 物語の根底に、「災い転じて福」「ピンチのときも面白がる」「芸術を選ぶのは審査員ではなく大衆」など、大切なテーマが複数流れています。とくに最後の「芸術を選ぶのは審査員ではなく大衆」は、作者が常日頃感じていることなのかもしれません。

 レインボーは自分にお金(チーズ)が足りなくて、画材を充分に揃えることが出来なくても、限られた環境で「でも。これも面白そう、こうしてもけっこうイケそう」と状況を面白がって絵を描き、結果的に作品は多くの人に愛されます。

 レインボーの「好き」の力、何事も面白がってピンチをチャンスにする力は、小さな子どもから大人まで、人間にとって大切なことだと思います。レインボーは気が弱いし、自信のない大人しいねずみですが、「すべてを面白がる」と言う、貴重な美徳がありました。

 強くて、勇気があって、自信があって、ポジティブで……なんて、なにもかも上出来である必要はないですよね。一つでも、美徳があれば。レインボーの絵の才能は、彼女の「なんでも面白いと感じる」美徳から生まれたもの。

 もちろん、哀しみや悩みから芸術を生み出す人もいますから、絶対に身の回りの何もかもを面白がることができなければならないわけでもない、とも思います。どんな人にも、なにかひとつ、「自分にはこれだ」と言うものがあればいいのじゃないでしょうか。

 レインボーは、自分の絵が評価されて、チーズがたくさんもらえて、友達がたくさんできて、とても幸せになりました。でも、貧乏で友達が少なかったときのレインボーも、とても楽しそうに暮らしていたので、わたしは、そんなレインボーも大好き。

 小ぶりで持ち運びのしやすい、かわいらしい絵本です。絵本にしては文章が多めで、絵本と小説の中間くらいの感じ。でも、とても読みやすい文章です。字はほどよい大きさで、総ルビですから、50音が読めれば、コツコツ最後まで読むことが出来ます。

 たしろちさと先生の挿絵は総見開きにフルカラーで入っています。素朴で可愛らしく、原書の挿絵のイメージに寄せて描いてくれているのもうれしい。

 お子様が一人で読んでも、読み聞かせをしても。「チュウチュウ通り」のシリーズは、「物語を読む楽しさ」を感じる絵本です。本好きの小さなお子さまには、強くおすすめします。

 芸術の秋、レインボーのまきおこす奇跡のストーリーを楽しんでみてくださいね。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はまったくありません。何が起きてもポジティブで、すべてを面白がることができるレインボーの感性に励まされ、癒されます。
 絵を描くのが好きなお子さまに。

 読後は、青すぐりのジャムとトーストでティータイムはいかがでしょう。

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