【チュウチュウ通り】エミリー・ロッダのほのぼの動物ファンタジー。ねずみたちの街のしあわせお菓子屋さん【チャイブとしあわせのおかし】【5歳 6歳 7歳】

2024年3月24日

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チュウチュウ通り 5番地 チャイブとしあわせのおかし  エミリー・ロッダ/作 さくまゆみこ/訳 たしろちさと/絵 あすなろ書房

ハツカネズミたちが住むネコイラン町には、チュウチュウ通りという素敵な通りがあります。5番地のチャイブはお菓子屋さんです。チャイブは、お菓子を作るのが大好きでした……

この本のイメージ かわいい☆☆☆☆☆ ほのぼの☆☆☆☆☆ 自分らしく☆☆☆☆☆

チュウチュウ通り 5番地 チャイブとしあわせのおかし  エミリー・ロッダ/作 さくまゆみこ/訳 たしろちさと/絵 あすなろ書房

<エミリー・ロッダ>
Emily Rodda、1948年4月2日~。オーストラリア・シドニー生まれのファンタジー作家。代表作は「ふしぎの国のレイチェル」「リンの谷のローワンシリーズ」など。

<さくまゆみこ>
東京生まれ。出版社勤務を経てフリーの翻訳家に。訳書にエミリー・ロッダ「リンの谷のローワン」シリーズ、「ふしぎの国のレイチェル」「テレビのむこうの謎の国」ホーキング「宇宙への秘密の鍵」など。

<たしろちさと>
東京生まれ。大学で経済学を学んだ後、四年間の会社勤めを経て絵本の制作をはじめる。絵本に「みんなの家」「ねずみのじどうしゃ」「すずめくんどこでごはんたべるの?」「くんくんいいにおい」など。

 「リンの谷のローワン」のエミリー・ロッダのかわいい絵本シリーズ。「チュウチュウ通り」です。
 原題は、LUCKY CLIVE (Squeak Street Stories). 原書初版は2005年。日本語初版は2010年です。これ、4巻と5巻、日本とオーストラリアでは出版された順序が違うようです。

 どの本から読んでもいい構成になっているんですが、一番地から順番に読みたい方は、こちらのレビューをどうぞ。↓

 お話は……

 チャイブはチュウチュウ通り5番地のお菓子屋さんです。チャイブは、お菓子を焼くのが大好きでしたが、ある日、久しぶりに同級生のローリー・ボーンズとデイジーに会ってから、自分の人生に疑問を持ち始めます。

 ローリーは、「生き方をかえ、おもしろいネズミになる方法」と言う本を出版し、講演会で大人気。
 幼馴染のデイジーは、美容師になるという夢をかなえ、ヘアサロンで働いていたときに映画監督の目に留まり、映画女優として大成功していたのでした。

 チャイブは、ふたりに影響をうけて、新しい仕事に就いて新しい自分になろうとします。ところが、何をしてもうまくはいきません。がっかりしたチャイブが店まで戻ってくると……

 ……と、言うのがあらすじ。

 エミリー・ロッダはストーリーテラーなので、子ども向けの絵本でも起承転結がかなりはっきりしており、読み応えがあります。この本は就学前~小学校低学年くらい向けの絵本ですが、お話的に30ページの読みきり漫画くらいのボリュームがあり、大人が読んでも楽しめます。30分~40分くらいの洋ドラみたいな雰囲気でもあります。

 今回のお話は、昭和のドラマではよく見た、少し懐かしい雰囲気のお話でした。

 チャイブは、地元のお菓子屋さんでしたが、同級生のローリーが大成功して故郷に錦を飾ったことで、今の自分に疑問を持ち始めます。このローリー、とくに掘り下げて描かれてはいませんでしたが、自己啓発講演会などをして成功しているネズミのようです。

 華やかな幼馴染の活躍を見て、何年も同じ場所で同じことを繰り返している自分の人生に疑問をもったチャイブでしたが、最終的には自分自身の人生に戻ってきます。自分はお菓子屋さんが大好きだと再確認し、そして、そんな自分のお菓子が実はたくさんの人に愛されていたという事実も知るのでした。

 これって永遠のテーマでもあります。

 最近は、ずっと同じ場所で自分の好きなことを地味にコツコツ続けている人のことを、「いつまでも快適な場所(コンフォートゾーン)にしがみついて、新しいことに挑戦しない人」と決め付けがち。
 今風の言葉だと「意識をアップデートしていない」とか、言われるようです。

 しかし、チャイブは、新しいお菓子を作るのに創意工夫をするのは好きで、毎日、変わったメニューを開発して、よその店にはないお菓子を作り続けているのです。ちゃんと新しいものを取り入れているし、頑張っていたはずなのに、大成功しているローリーやデイジーを見て、「これではいけない」と思いこんでしまいました。

 「新しい自分になろう」と転職を決意したあとのチャイブは大迷走。何をしても楽しくありません。

 へとへとになったチャイブは、本来の自分の仕事に戻ってきますが、結局はそれでよかったのでした。
 チュウチュウ通りのみんなはチャイブのお菓子が食べられなくてとっても困っていて、お菓子屋を再開してくれるのを待ち望んでいました。
 一見大成功しているように見えたデイジーは、実は女優の仕事が辛くなっており、結局は好きだった美容師に戻りました。

 これね、昭和のドラマや漫画だと、ローリーはたいてい、いい時計をつけていい靴をはいた詐欺師、みたいな感じで登場します。わりと、昔なつかしのストーリーなのです。

 これが新鮮に感じられるのは、逆に最近はローリーの主張が主流になってきて、チャイブの生き方が珍しくなってきたからかもしれません。ローリーはうさんくさいけど詐欺師や犯罪者ではなく、そこそこ成功した人として描かれているのも今風だと思います。

 でもねえ、どっちの人生でもいいと思うのです。本人が納得していれば。

 もちろん、華やかなこともすばらしい。人前に出て、派手なこと、目立つことをするのはとても勇気がいることです。それも大切なことだし、大成功している人たちが全員、「うさんくさい」「詐欺師」と言うのも極端です。

 その人が、ありのままの自分を大切にして、ほんとうにやりたいことを誰がなんと言おうとやればいいだけなんですよね。

 可愛らしいメルヘンですが、「幸せな人生とは」と言う、かなり大人びたテーマのお話でもあります。小さな子どもが読んだときにどこまで理解できるかわかりませんが、「自己肯定感」にも通じるテーマなので、大人が読んでも励まされます。他人にどう言われようが、好きなこと、やりたいことを続けていればよく、そして、人は、ありのままでよいのです。

 小ぶりで持ち運びのしやすい絵本です。絵本にしては文章が多めで、絵本と小説の中間くらいの感じ。字は総ルビですから、50音が読めれば、コツコツ最後まで読むことが出来ます。読みやすい文章です。

 たしろちさと先生の挿絵は総見開きにフルカラーで入っています。素朴で可愛らしく、原書の挿絵のイメージに寄せて描いてくれています。

 お子様が一人で読んでも、読み聞かせをしても。「チュウチュウ通り」のシリーズは、「物語を読む楽しさ」を感じる絵本です。本好きの小さなお子さまには、ほんとうにおすすめですよ!

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。ありのままの自分を認めるお話なので、子供が読んでも大人が読んでも励まされます。読後はお菓子をつくったり食べたりしたくなるかもしれません。

 親子で一緒にクッキーやカップケーキを作って、ティータイムもいいですね。

 

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