【せかいでさいしょにズボンをはいた女の子】固定観念をぶっとばせ!なりたい自分になるために道をひらいた女の子のおはなし【絵本】【4歳 5歳 6歳】
むかしむかし、女の子はズボンをはいちゃいけなかった。でも、メアリーという女の子はそんなことはおかしいと思っていた。だからズボンをはいて街へ出てみたのだ。(せかいでさいしょにズボンをはいた女の子 キース・ネグレー/作 石井睦美/訳 光村教育図書)
この本のイメージ 実話☆☆☆☆☆ 固定観念を壊す☆☆☆☆☆ なりたい自分になる☆☆☆☆☆
せかいでさいしょにズボンをはいた女の子 キース・ネグレー/作 石井睦美/訳 光村教育図書
<キース・ネグレー>
大学で美術を学び、2013年に美術学修士号を取得。その後、作家、イラストレーターとして活躍している。これまでにイラストレーション協会から5つのメダルを獲得したほか、初めて手がけた絵本“Tough Guys"(未邦訳)でケイト・グリーナウェイ賞にノミネートされた。ワシントン州在住。
<石井睦美>
作家、翻訳家。受賞多数。子どものための創作読み物に「すみれちゃん」シリーズ(偕成社)、創作絵本に「100年たったら」(アリス館)、翻訳絵本に「おたんじょうびの 2つの たまご」(光村教育図書)など。
原題はMARY WEARS WHAT SHE WANTS.アメリカでの初版は2019年。日本語版の初版は2020年。
これは実在した女性、メアリー・エドワーズ・ウォーカーのお話をもとにした創作絵本です。
メアリーは1832年にニューヨーク州オスウィーゴで生まれました。
彼女は最初にズボンをはいた女性として知られていますが、当時としてはかなりショッキングな行動であったため、ズボンをはいていると言う理由で何度も逮捕されたことがあるそうです。
そのたびに彼女は「わたしは男性の服を着ているのではありません。わたしはわたしの服を着ているのです」と主張しました。
メアリーはその後医師となり、南北戦争のさいには北軍の医師として参加しています。
戦争末期にはドレスを着るように要求されながらも、それには応じず、ズボンをはきつづけました。
彼女はその後、軍医としての功績を認められ軍の名誉勲章を授与されたそうです。
この絵本でのメアリーは、明るくて元気な女の子です。
当時の女性たちが着るのが「あたりまえ」とされていたドレスは窮屈で、かがむこともできず、とても不便なものでした。
ドレスが大嫌いなメアリーは、勝手に自分のズボンを作って着てしまいます。
当然、町は大騒ぎですが、メアリーは自分の意思を貫きます。
そして……
……と、いうのがあらすじ。
このブログでは固定観念を壊す、または女の子の自己実現をテーマにしたお話をよく紹介しています。
わたしの好みではあるのですが、最近よく見られる過激なフェミニズム活動と女の子の自己実現は違うものなのだということを伝えたい気持ちもあるのです。
女の子の自己実現は、むやみに男女を対立させたり男性と争ったり男性を否定することではありません。
「女の子はもっと自由でいい」という意味なのです。
従来の凝り固まった「女の子らしさ」から解放されて、自分らしくいていい、と言うのが自己実現です。もちろんそれは、男の子だって「男の子らしさ」から解放されていいと思います。
女の子だからとってスカートを履かなければならないわけではないし、素敵なズボンを履いてネクタイを締めてもいい。
男の子だって、花柄の服やピンクの服を着てもいい。
女の子だからと言ってお料理お掃除が完璧にできなくてもいいし、男の子だからといって家の跡継ぎにならなくてもいい。
「らしさ」を越えてどんどん自由になったらいいじゃないか、と思うのです。
わたしの若いころ、仕事をがんばる女性に対して「そんなに男と張り合おうとしなくてもいいじゃないか」と言う人がいました。かなりいました。
でも、仕事を頑張る女性は別に男性と張り合いたいから仕事してるのではなくて、仕事が好きなのです。
それなのに「そんなに我を出さなくても」とか「女のくせに男に対抗しようとしなくても」とか「そんなに仕事がしたいなら、結婚はしないってことよね?」とか、謎の決めつけが多かったのです。
仕事が好き、だからしたい。それだけでどうして済まないのか。
仕事がやりたいなら、男が嫌いなはずだ、男に対抗したいと思っているはずだ、結婚や子どもは嫌いなはずだ、と言う謎の固定観念はとても窮屈なものでした。
女の子はお料理ができることが当たり前に要求される時代でしたが、「女がするのは家庭料理。プロはみんな男だろう。これが男女の差だよ」と言われたときには、なんだかむなしい気持ちでいっぱいになった記憶があります。
いまではそんなおかしなことを言う人もいなくなり、男性が自炊するのもごく普通の時代になりました。
逆に男子が日常的にお料理をすることを馬鹿にする風潮もなくなりました。ピンクやパステルイエローなどかわいい色のメンズ服もあるし、花柄だっておかしいとは言われません。いい時代になりました。
そんな自由な時代は、かつて切り開いてきた人たちがいたから手に入ったのです。
メアリー・ウォーカーのような。
字はほぼひらがなとカタカナ。簡単な漢字には振り仮名が振ってあるので、五十音が読めるお子さまならひとり読みでコツコツ読み切ることができます。
文章量も多くなく、見開きで最大10行くらい、だいたい5行くらいですので、読みやすいと思います。もちろん、読み聞かせにも。
自分はほかの子とはちょっと違うかもしれないと感じているお子さまに。
または、もっともっと自由になりたい、新しいことをしたい、何かに挑戦したいお子さまに。
「せかいでさいしょにズボンをはいた女の子」は挑戦する気持ちを後押ししてくれる素敵な絵本です。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はまったくありません。どこまでも自由な女の子のお話です。実在した女性がモデルなので、メアリー・ウォーカーについて調べてみると深い理解が得られます。
メアリーをけっして否定しない、おとうさんが素敵です。
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