【ルイスと不思議の時計2】ルイスが手に入れたのは幸福のコイン?それとも……【小学校中学年以上】

2020年10月14日

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闇にひそむ影 ルイスと不思議の時計2   ジョン・べレアーズ/作 三辺律子/訳  静山社ペガサス文庫

魔法使いの甥、ルイスは、ローズ・リタというおてんばな女の子と親友になりました。でも、ほんとうはルイスだって強くなりたかったのです。だって、乱暴者のウッディに毎日いじめられていたから。そんなルイスがある日、手に入れたのは「幸運のコイン」でした……。

この本のイメージ 魔法☆☆☆☆☆  友情☆☆☆☆☆  勇気☆☆☆☆☆

闇にひそむ影 ルイスと不思議の時計2   ジョン・べレアーズ/作 三辺律子/訳  静山社ペガサス文庫

<ジョン・べレアーズ>
ジョン・ベレアーズ(John Anthony Bellairs、1938年1月17日 – 1991年3月8日)は、アメリカの小説家。児童向けのファンタジー小説を得意とした。代表作として『霜のなかの顔』、「ルイスと魔法使い協会」シリーズ、「ジョニー・ディクソン」シリーズなど。

闇にひそむ影 ルイスと不思議の時計2   ジョン・べレアーズ/作 三辺律子/訳  静山社ペガサス文庫

 「ルイスと不思議の時計」シリーズ第2巻です。
 1巻のラストで、ルイスにはローズ・リタと言う親友ができたと書いてありましたが、今回の物語は、ルイスとローズ・リタ、ジョナサンおじさん、ツィマーマン夫人の四人が活躍します。

 ルイスは、太っていて気弱な冴えない男の子。心根は優しくていい子ですが、自分に自信がありません。
 ローズ・リタは強くておてんばでかしこくて、そして、オタクな趣味も持つ女の子です。男の子に混じって野球をしたりするけれど、中世の戦争や武器や帆船のマニアで、ディープな会話をするのも大好きな彼女は、ルイスの大切な親友になります。

 そんなルイスには悩みがありました。ウッディと言う乱暴者に目をつけられてしまい、毎日のようにいじめられていたのです。
 ローズ・リタは、ルイスを守ろうと戦ってくれるのですが、ルイスは女の子のローズ・リタに守られてしまうのも情けなくなります。中学のジムに通って強くなろうとしますが、すぐには筋肉はつきません。

 悩んだルイスは、おじいさんの形見の「幸運のコイン」に頼ろうとしますが、そのコインには恐ろしい秘密があったのです……

 と、言うのが今回のあらすじ。

 原作の初版は1975年。インターネットも携帯電話もない時代ですが、子どもの心はおんなじですね。まったく古さを感じさせません。

 乱暴者のウッディにいじめられる毎日に耐えられなくなったルイス。親友のローズ・リタが自分を守ろうとしてウッディと喧嘩しているのを助けられなかった自分への嫌悪。強くなろうとボクシングを始めたのに、続けられない自分……。

 たしかにルイスは勇気が無いだけでなく持久力が足りず、「何ヶ月、何年とトレーニングを続けないと強くなれないぞ」と言われてくじけてしまう、いくじのないところがあります。

 しかし、ウッディのいじめは現在進行形で毎日続いており、「今すぐなんとかしたい」とルイスが思ってしまうのも無理も無いのです。
 結果的にルイスは自分では手に負えないものを呼び出してしまうのですが、これを安易に「意思が弱い」とか、「おろかな判断」だとか言うこともできないなと感じました。

 読み終わった後、「もし、ルイスたちの世界に魔法が無いとして、ルイスはどうすればよかったのだろうか」と再度じっくりと考えてみました。しかし、簡単には答が出なかったのです。ウッディのいじめは間断なく、だんだんとエスカレートしています。
 コインの力で一度、ウッディを殴り返した後、しばらくいじめがなかったことを考えると、もしかしたらルイスは殴られた分だけ殴り返せばよかったのかもしれません。しかし、ルイスは元来、他人に暴力をふるえない子どもです。

 また、他人と殴り合いができるほど自信がつくくらいに身体を鍛えて筋肉をつけるためには、何ヶ月も何年もの月日が必要です。けれど、ウッディのいじめは「今」「毎日」なのです自分が強くなるまでウッディは待ってはくれません。

 そして、そのあいだに、ローズ・リタまでいじめられるのです。

 がまんするのか。
 負けるとわかっていて、やり返すのか。
 それとも、超自然的な力に頼るのか。

 一般的なものさしで言えば、ルイスには道が無いように見えます。
 けれど、この物語ではルイスの問題は解決し、救われました。

 つまりは、作者が言いたかったのは「男の子だって、女の子や女の人に助けをもとめて助けてもらってもいい」ってことなんじゃないでしょうか。40年以上昔の物語にしてはこの考えは新しすぎますが、「世の中とはこうだ」と言う固定観念を脇に置いたら、この物語が伝えようとしていることは、それなんじゃないかと思います。

 このお話では、強力な魔力で問題解決に乗り出し、敵と魔法戦を繰り広げるのは魔女のツィマーマン夫人であり、危機に陥った親友を助けに冒険するのは女の子のローズ・リタであり、深い優しさでみんなを精神的に支えるのはジョナサンおじさんであるという、「一般的に考えられている男女の役割」をそっくり逆転させたつくりになっています。

 おそらく、作者は「男の子だからって、かっこよくなくてもいいんだよ」と言いたかったのではないでしょうか。ルイスは、いわゆる「男らしい」子ではありません。とにかく、情けない子です。
 けれど、心が優しくて気遣いが出来て、いいところもたくさんある。だから、ローズ・リタはルイスのためにウッディと、取っ組み合いの大喧嘩も辞さないのです。

 そして、ルイスはすごくゆっくりと、成長してゆくのだと思います。自分の成長をいちばん我慢強く待たなければならないのは自分自身です。けれど、理解してくれる友達や家族がいたら、もどかしい日々も乗り越えられるはず。

 第3巻は、ローズ・リタの成長物語のようです。楽しみです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 いじめのシーンがあるので、読んでいてつらくなることもあるかもしれません。「そういうシーンがあるのだな」と身構えていれば大丈夫の方にはおすすめです。ハッピーエンドですし、それぞれがそれぞれ、成長します。
 読後はチョコチップクッキーが食べたくなると思うので、ご用意を。

いつもありがとうございます

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