【チュウチュウ通り】エミリー・ロッダのほのぼの動物ファンタジー絵本第７巻。古い車に秘められた謎とサスペンス【レトロと謎のボロ車】【5歳 6歳 7歳】
７番地に住む車の修理屋さんレトロは、夢の車サンダーバードを手に入れるため、チーズを貯めている毎日でしたが、ある日、不思議な手紙が届きます……
この本のイメージ 動物ファンタジー☆☆☆☆☆ サスペンス☆☆☆☆☆ 大冒険☆☆☆☆☆
チュウチュウ通り ７番地 レトロと謎のボロ車 エミリー・ロッダ/作 さくまゆみこ/訳 たしろちさと/絵 あすなろ書房
＜エミリー・ロッダ＞
Emily Rodda、1948年4月2日～。オーストラリア・シドニー生まれのファンタジー作家。代表作は「ふしぎの国のレイチェル」「リンの谷のローワンシリーズ」など。
＜さくまゆみこ＞
東京生まれ。出版社勤務を経てフリーの翻訳家に。訳書にエミリー・ロッダ「リンの谷のローワン」シリーズ、「ふしぎの国のレイチェル」「テレビのむこうの謎の国」ホーキング「宇宙への秘密の鍵」など。
「リンの谷のローワン」のエミリー・ロッダのかわいい絵本シリーズ。「チュウチュウ通り」です。
原題は、KEVIN TO THE RESCUE (Squeak Street Stories). 原書初版は2006年。日本語初版は2010年です。
どの本から読んでもいい構成になっているのですが、１番地から順番に読みたい方は、こちらのレビューをどうぞ。↓
https://www.mmanorhouse.com/2021/04/28/post-6863/今回のお話は……
チュウチュウ通り７番地に住む、自動車修理屋のレトロ。彼は、憧れの車サンダーバードを手に入れるため、毎日チーズ(この世界の通貨はチーズ)を貯金していました。
そんなある日、不思議な手紙が届きます。
ロージー・セレーブという女性が、「わたしとヘンリーを助けてください」と送ってきたのです。
困っている女性を救いに行くなんて、わくわくする！
レトロは勇んで出かけましたが、そんなレトロを待っていたのは……
……と、言うのがあらすじ。
エミリー・ロッダは優れたストーリーテラーで、長い小説でも「リンの谷のローワン」など名作がたくさんあります。
この「チュウチュウ通り」シリーズは、絵本と小説のちょうど中間くらい、絵ばかりの絵本を卒業して、少しだけ長めの物語を読み始めの頃におすすめの本で、小学校就学前～低学年くらいまでが対象です。
ところが、お話の内容はなかなかバラエティに富み、ドラマチックで面白いのです。どのお話も、短めの子ども向け洋ドラのような面白さがあります。
１番地のゴインキョのお話では特殊詐欺、３番地のフィーフィーのお話はワンオペ育児、５番地のチャイブのお話では自己啓発セミナー、６番地のクイックのお話では契約問題など、現代社会での問題も題材にしていて料理もうまい。子ども向けの動物ファンタジーなのに、なかなか深いのです。
今回は、本格的なサスペンス。謎の女性から「助けてください」と手紙をもらったレトロは、困っている女性を助けに行ったことがきっかけで、思わぬ事件に巻き込まれます。
このあと、詳しいあらすじを書いてしまうとつまらないので、今回はここまでにしますが、少しだけ差し支えの無いネタバレを書きますと、レトロのガールフレンドがレインボーであることがあきらかになります。
レインボーは今回の事件に少しだけ巻き込まれてしまいます。
また、レインボーが扉を描いた「おひさまホーム」も少しだけ登場します。
このお話、一話完結の形になっていますが、全部つながっているんですね。あと３冊ですが、どんなにふうになるのか、これは楽しみになってきました。
字はわりと大きめで、すべての漢字に振り仮名が振ってある「総ルビ」なので、ひらがなカタカナの五十音が読めれば、一人でも読めます。もちろん、読み聞かせにもおすすめ。
たしろちさと先生の挿絵は総見開きにフルカラーで入っています。どの絵も素朴で愛らしく、原書の挿絵のイメージに寄せて描いてくださっているのも、ありがたいですね。
こんなに短いお話なのに、こんなに起伏に飛んでいて面白いシリーズはなかなかないと思います。
そろそろ絵ばかりの絵本からは卒業かな、と言う年齢のお子さまに。読書が楽しくなる絵本です。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はありません。今回はサスペンス風味の大冒険なので、そういうお話が大好きなお子さまにおすすめです。こんなに薄い絵本なのに、大人が読んでも面白いので驚きです。
読後はチーズか、チーズケーキでティータイムしましょう。
