【チュウチュウ通り】ねずみたちの町の物語。「ローワン」のエミリー・ロッダがおくる、ほのぼの動物ファンタジー【クツカタッポと三つのねがいごと】【5歳 6歳 7歳】
クツカタッポは冒険家。チュウチュウ通りの二番地で、古道具屋をしています。この仕事があまりにも好きだったので、それ以外のことにまったく気を配ることが出来ません。そんなわけで、靴が片方見つからないこともしばしばでした。ところがある日、旅の途中で不思議な青いビンを見つけ……
この本のイメージ かわいい☆☆☆☆☆ びっくり☆☆☆☆☆ 願い事とは☆☆☆☆☆
チュウチュウ通り 2番地 クツカタッポと三つのねがいごと エミリー・ロッダ/作 さくまゆみこ/訳 たしろちさと/絵 あすなろ書房
<エミリー・ロッダ>
Emily Rodda、1948年4月2日~。オーストラリア・シドニー生まれのファンタジー作家。代表作は「ふしぎの国のレイチェル」「リンの谷のローワンシリーズ」など。
<さくまゆみこ>
東京生まれ。出版社勤務を経てフリーの翻訳家に。訳書にエミリー・ロッダ「リンの谷のローワン」シリーズ、「ふしぎの国のレイチェル」「テレビのむこうの謎の国」ホーキング「宇宙への秘密の鍵」など。
<たしろちさと>
東京生まれ。大学で経済学を学んだ後、四年間の会社勤めを経て絵本の制作をはじめる。絵本に「みんなの家」「ねずみのじどうしゃ」「すずめくんどこでごはんたべるの?」「くんくんいいにおい」など。
「リンの谷のローワン」シリーズでおなじみ、エミリー・ロッダの絵本です。原題はOne-shoe’s Wishes (Squeak Street Stories) .初版は2005年。日本での初版は2009年です。
原書の挿絵はAndrew McLeanアンドリュー・マクリーンという方ですが、日本版はたしろちさと先生が描いています。ただし、絵を見ると、かなり寄せているようで、原書版の雰囲気を大切にしてくださったようです。
ハツカネズミの住む「ネコイラン町」に、「チュウチュウ通り」と言うすてきな通りがあります。その2番地に住むのは古道具屋のクツカタッポ。彼の本当の名はデズモンドでしたが、本人がその名前を忘れてしまい、みんなはクツカタッポと呼びました。
彼はとても忘れっぽくて、いつも靴を片方どこかに置き忘れていたからです。
そんなクツカタッポでしたが、彼は冒険家で、危険な土地に出かけては、めずらしいものを手に入れて帰ってきました。
ある日、彼は、旅先で、バラの模様のある青いビンを見つけました。家に持ち帰って、丁寧に拭いていると、それは、魔法のビンだとわかったのです。
ビンから出てきた魔神、エダム。三つのお願いをきいてくれるのです。
さて、クツカタッポはどんな願い事をしたかと言うと……。
と、いうのがあらすじ。
人の価値観はそれぞれであり、大多数の人の願い事と、まったくちがう願いを抱いている人もいるのだ、と言うお話です。
クツカタッポは、部屋を生理整頓することは出来ないし、忘れっぽいし、頼りないのですが、彼はいまの生活や仕事が大好きで、満足しており、他人から見て「そんなのでいいの?」と言う生活でも、充分幸せだったのでした。
ささやかなお願い事をすると、「そんな程度の」みたいな顔をして不機嫌になっちゃう魔神エダムがおかしい。
でもねえ、クツカタッポには、それが大切な願いなんです。
何かいい願い事はできないかと、クツカタッポはチュウチュウ通りの人たちの願い事を聞きにゆきます。みんな、それぞれ夢や願いがあって、そこでちょっとみんなのことがわかります。「全世界を自分の手におさめたい」とか言ってるマージがおかしい。クツカタッポのささやかな夢に文句を言っているエダムですが、こんな願いだったら困るはず。
いい人にビンを拾われたと思うんですけどねえ……。
クツカタッポが何を願ったかは、どうぞ絵本を読んで確かめてみてくださいね。ちゃんとお願い事をして、ちゃんと叶います。
ピーターラビットの絵本と同じサイズの、小ぶりのかわいい絵本です。字は程よく大きく、漢字にはすべて振り仮名がふってあり、ひらがなさえ読めれば、コツコツ読めます。挿絵はフルカラー。
ねずみたちがとても表情豊かで、かわいらしい。読み聞かせにもぴったり。
「幸せとは何か」みたいなちょっと哲学的なテーマでもあるのですが、わかりやすく、かわいらしく、まとめています。
誰になんと言われようと自分の道をすすむクツカタッポが、かっこいい。
チュウチュウ通りのほかの住人のお話も楽しみです。お次はたぶん、フィーフィーさんですね。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はまったくありません。趣味に打ち込む人を全力で肯定する物語です。それと同時に、人には十人十色でいろんな夢や願いがあるよね、と言う話でもあり、多様性の物語でもあります。
でも、お話自体は、ほのぼのとしていてわかりやすく、ちょっぴりクスっとできるストーリー。
「ムーミン」のスナフキンが好きな方なら、絶対好きになるはず。おすすめです。
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