【チュウチュウ通り】エミリー・ロッダのほのぼの動物ファンタジー。スターになっちゃうねずみのドラマーのお話【クイックと魔法のスティック】【5歳 6歳 7歳】

2024年3月28日

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チュウチュウ通り 6番地 クイックと魔法のスティック  エミリー・ロッダ/作 さくまゆみこ/訳 たしろちさと/絵 あすなろ書房

クイックはドラムをたたくのが大好き。有名なドラマーになりたくて、田舎からチュウチュウ通りに引っ越してきました。ある日、森へ行く途中、穴にはまった不思議なおばあさんを助けたら、お礼にと魔法をかけられて……

この本のイメージ  有名より幸せ☆☆☆☆☆ 魔法☆☆☆☆☆ 契約はよく確かめて☆☆☆☆☆

チュウチュウ通り 6番地 クイックと魔法のスティック  エミリー・ロッダ/作 さくまゆみこ/訳 たしろちさと/絵 あすなろ書房

<エミリー・ロッダ>
Emily Rodda、1948年4月2日~。オーストラリア・シドニー生まれのファンタジー作家。代表作は「ふしぎの国のレイチェル」「リンの谷のローワンシリーズ」など。

<さくまゆみこ>
東京生まれ。出版社勤務を経てフリーの翻訳家に。訳書にエミリー・ロッダ「リンの谷のローワン」シリーズ、「ふしぎの国のレイチェル」「テレビのむこうの謎の国」ホーキング「宇宙への秘密の鍵」など。

<たしろちさと>
東京生まれ。大学で経済学を学んだ後、四年間の会社勤めを経て絵本の制作をはじめる。絵本に「みんなの家」「ねずみのじどうしゃ」「すずめくんどこでごはんたべるの?」「くんくんいいにおい」など。

 「リンの谷のローワン」のエミリー・ロッダのかわいい絵本シリーズ。「チュウチュウ通り」です。
 原題は、QUICK-STICK’S MAGIC (Squeak Street Stories). 原書初版は2005年。日本語初版は2010年です。

 どの本から読んでもいい構成になっているのですが、一番地から順番に読みたい方は、こちらのレビューをどうぞ。

 お話は……

 クイックはドラムが大好き。
 小さな頃から野原でドラムを叩いていました。

 でも、都会で有名になりたいという夢を持ち、チュウチュウ通りへ引っ越してきたのです。
 同じように音楽が大好きな女の子ねずみたちと、ガールズバンドを作ったクイック。

 ある日、森に行く途中に泥にはまって困っているおばあさんを助けます。おばあさんは、ドブネズミの運転する車にはねられて泥にはまってしまったようです。おばあさんは、お礼にとクイックのドラムスティックに不思議な枝をふるとスティックは金色にかがやきました。

 金色のスティックでドラムを叩くとあら不思議! いつもより上手に叩けて、どんどん人が集まってきて踊り始めます。あのおばあさんは、魔法使いだったようです。

 大人気となったクイックたち。そこへレックス・サギシーという怪しい男がやってきて、クイックに細かい字がたくさん書いてある契約書にサインさせるのですが……

 ……と、いうのがあらすじ。

 指折りのストーリーテラーであるエミリー・ロッダのお話は、短くても起承転結がはっきりしており、小さな子向けのお話でもかなり読み応えがあります。「チュウチュウ通り」は幼稚園~小学校低学年くらいの、絵の多い絵本を卒業したくらいのお子さま向けですが、伏線など構成が手が込んでおり、大人が読んでも楽しいのです。子ども向けの短めの洋ドラみたい。

 また、現代の世相を反映しており、1番地の「ゴインキョとチーズどろぼう」では特殊詐欺を、5番地の「チャイブとしあわせのおかし」では自己啓発セミナー、今回の6番地では契約詐欺について取り扱っています。

 今回のお話では、よくわからないまま契約書にサインしてはいけないことが小さな子どもにもわかるように書かれています。成人年齢が18歳に引き下げになったこともあり、このようなお話を子どもの頃から読んでおくのもいいかもしれません。

 5番地のチャイブのお話で、有名になったりお金持ちになったりすることがはたして幸せなのか? と言う問いかけをしていましたが、今回のお話でも、クイックのお母さんの

 「それに ゆうめいになるのもいいけど、しあわせになるのは、もっとだいじなことよ。それを、わすれないでね」(引用 P12)

 と言う金言もあり、これはエミリー・ロッダの取り組みたいテーマのようです。
 また、クイックが最終的には実力で観客を喜ばせることが出来たことも、この物語のテーマのひとつ。

 小ぶりで持ち運びのしやすい、かわいらしい絵本です。絵本よりは文章が多めで、絵ばかりの絵本を卒業して少し長めの物語に挑戦し始めた頃向け。総ルビなので50音が読めれば、一人でもコツコツ最後まで読むことが出来るでしょう。

 たしろちさと先生の挿絵は総見開きにフルカラーで入っています。素朴で可愛らしく、原書の挿絵のイメージに寄せて描いてくれているのがうれしい。

 お子様が一人で読んでも、読み聞かせをしても。
 ドラマチックな「チュウチュウ通り」は、本を読みはじめのお子さまに「物語を読む」楽しさを教えてくれるはず。
 大人が読んでも、チュウチュウ通りの住人たちの一員になったかのような気持ちにさせてくれる、惹きこまれるストーリーです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。明るくゆかいな動物ファンタジーです。よくわからないまま契約書にサインしてはいけない、有名になるよりありのままの実力で自分も他人も楽しいほうが幸せ、と言う教訓が含まれています。

 読後はチーズが食べたくなると思うので、チーズやチーズのお菓子をご用意を。

 

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