【さかなくん】魚だって走ってみたい。夏にぴったりの、多様性に満ちたほのぼの絵本【4歳 5歳 6歳】
さかなくんは小学生。さかなくんはさかななので学校にいくのがたいへんです。ゴムのズボンをはき、ガラスのヘルメットをし、ひれにクリームをぬって……たいへんだけど、さかなくんは学校が大好きなのです。
この本のイメージ 魚☆☆☆☆☆ 多様性を受け入れる☆☆☆☆☆ 夏にぴったり☆☆☆☆
さかなくん しおたにまみこ/作 偕成社
<しおたにまみこ>
1987年千葉生まれ、埼玉育ち。女子美術大学工芸学科陶コース卒業。背景美術制作会社勤務を経て、絵本制作をはじめる。2014年「やねうらおばけ」で第15回ピンポイント絵本コンペ優秀賞受賞。2018年「そらからきたこいし」で絵本作家としてデビュー。同作が第11回MOE絵本屋さん大賞新人賞第2位受賞。作品に、「やねうらべやのおばけ」、「たまごのはなし」(ブラチスラバ世界絵本原画展金牌受賞)がある。
夏にぴったりの絵本です。初版は2023年。
お話は……
さかなくんは小学生。
でも、さかなくんはさかなです。
陸上の学校に行くのには準備が必要で、ゴムのズボンをはき、ガラスのヘルメットをし、ひれにクリームをぬって……たいへんだけどさかなくんは学校が大好き。
けれど、体育の授業だけは苦手です。嫌いなリレーの授業では、走りにくいさかなくんはころんで悔しい想いをします。さかなくんの足ひれははれてしまいました。
さかなくんは悔しくて泣いてしまいました。
家に帰って、むっすりしてしまうさかなくん。
ところが、とかげさんとにんげんくんが家まで遊びに来てくれて、素敵なプレゼントをしてくれたのです……
……と、いうのがあらすじ。
主人公はさかなの姿で描かれていますが、これは多様性をテーマにした絵本です。
この世界には、いろんな子どもがいます。
足が弱くて走れない子もいるし、肌がよわくて毎日クリームを塗らなければならない子もいます。生まれつき髪の色素が薄くて茶色っぽい子もいるし、何もしなくてもくるくると髪がカールしてしまう子も。
でも、そんな子どもたちに無理やり同じことをさせるのではなく、それぞれの個性を認めて仲良くしようよ、と言うお話です。
わたしが学生のころから「茶髪証明書」と言うのはありました。
「髪を染めているわけではない、これは生まれつきなのだ」と保護者が証明する届出です。
当時でさえ「ばからしい」と思っていたのに、最近では「黒髪に染めるように」と言う校則さえあるそう。天然パーマも今はストレートにするよう言われる学校もあるとか。
時代に逆行しているのではとも思いますが、昔に比べて気軽にカラーリングやストレートパーマできるようになったからでしょうか。それにしても、無意味に感じます。それに、費用がばかになりませんしね。
なにもかもみんなと同じでなければ、と言う同調圧力にぐいぐいと押されると、その人本来の良さがどんどん失われてしまいます。
右をみて左をみて、おんなじようにおんなじようにと一生懸命だと、もうそれだけで神経が磨り減ってしまって疲れ果ててしまうことも。
さかなくんは、陸上の学校が大好きなのでかなり無理をして登校しています。
けれど、周囲はさかなくんに何も強要しません。辛かったら休んでいいと言ってくれます。友だちたちは、さかなくんが早く走れるためにアイディアを出してくれます。
「あの子だけ休んでずるい」「あの子だけ特別な道具を使ってずるい」って攻撃しないのはなんて素敵なんでしょう。
世界にはいろんな子がいて、それぞれの目から見た世界はそれぞれの美しさがある。
繊細でほのぼのとしたあたたかい絵で、やさしい世界が広がります。
どのページのさかなくんも、さかならしさがありながら表情豊かで、ついつい「がんばれ」と声をかけてあげたくなるけなげな可愛らしさ。
心がほっこりあたたかくなるハッピーエンドです。
文章はひらがなとカタカナだけで書かれており、とても読みやすく、五十音が読めれば小さなお子さまでも一人でコツコツ読みきることができます。でも、これはぜひ、読み聞かせで。
また、テーマがあたたかく繊細な絵もすばらしいので、大人の和み絵本としても。
たくさんの文字は読みきれないほど心が疲れたとき、他人と同じことができなくてへこんだときなど、お気に入りの飲み物を飲みながら眺めるように読むのがおすすめです。
ちょっぴり奇妙な、心あたたまるファンタジー絵本。
この夏、お休み前のリラックスタイムにぜひどうぞ!
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はありません。世の中にはいろんな子がいるけど、それぞれの立場や個性を認めて仲良く楽しくやろうね、と言う本です。
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