【番ねずみのヤカちゃん】とぼけた天然ねずみの大活躍。自己肯定感を高める楽しい絵本です。【4歳 5歳 6歳 7歳 8歳】

2024年3月17日

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番ねずみのヤカちゃん リチャード・ウィルバー/作 松岡享子/訳 大社玲子/絵 福音館

あるところに、おかあさんねずみと四匹の子ねずみがいました。子ねずみのうち、三匹はおとなしくて静かな子でしたが、四匹目は「やかましやのヤカちゃん」と呼ばれていました。どうしてかって? それは……

この本のイメージ 自己肯定感☆☆☆☆☆ 楽しい☆☆☆☆☆ 短所は長所☆☆☆☆☆

番ねずみのヤカちゃん リチャード・ウィルバー/作 松岡享子/訳 大社玲子/絵 福音館

<リチャード・ウィルバー>
リチャード・ウィルバー(Richard Wilbur、1921年3月1日 ~2017年10月14日)はアメリカ合衆国の詩人、文芸翻訳家、絵本作家。ピューリッツァー賞2回、全米図書賞その他多くの賞を贈られ、2人目のアメリカ合衆国桂冠詩人に指名された。(Wikipediaより)

<松岡 享子>
1935年、神戸で生まれた。大学卒業後、ウェスタンミシガン大学大学院で児童図書館学を学び、ボルチモア市の公共図書館に勤めた。帰国後、東京子ども図書館を設立し、子どもと関わる幅広い分野で活動をする。1974年、石井桃子氏らと、財団法人東京子ども図書館を設立し、同館理事長を務める。

<大社玲子>
1946年、山口県生まれ。青山学院大学英文学科卒業。在学中から子どもの本の挿し絵を描き始め、「黒ねこの王子カーボネル」(岩波書店)「こねこのチョコレート」(こぐま社)など多数。訳書に「くろて団は名探偵」(佑学社)がある。ほかに松岡享子氏の創作童話「なぞなぞのすきな女の子」(学習研究社)、翻訳「番ねずみのヤカちゃん」(福音館書店)の挿し絵も。

 初読です。「虹いろ図書館のへびおとこ」で紹介されていたので、読んでみました。
 原題はLoud Mouse(うるさいねずみ). 原書初版は1963年。日本語版初版は1992年です。翻訳されたのは遅いですが、それでもかなりのロングセラーです。

 ストーリーは……

 ドドさんの家の壁の裏側に、おかあさんねずみと、四匹の子ねずみが暮らしていました。
 子ねずみたちのうち、三匹はふつうの、おとなしいねずみでしたが、四匹目はちがいました。地声がものすごく大きいのです。あまりにもやかましいので、「やかまし屋のヤカちゃん」と呼ばれていました。

 家ねずみは、人間に見つからないよう、捕まらないように、静かに大人しく暮らしていなければならないのに、ヤカちゃんの声は、とにかく大きい。

 ふつうに話しているだけで、人間のドドさんがびっくりしてしまうくらいの大声なのです。

 おかあさんねずみは、なんとかしてヤカちゃんを大人しくさせようとしますが、ある日、ドドさんの家にどろぼうが入って……

 と、いうのがあらすじ。

 これは、「しょうぼうじどうしゃじぷた」と同じテーマで、「欠点と思っていたところが、実はかけがえのない自分だけの武器だった」と気づく物語です。

 「じぷた」がわりと感動的なお話だったのに比べて、こちらは、とにかくゆかいで楽しい。同じテーマでも料理の仕方でこんなに違うんですねえ。

 また、ヤカちゃんの性格が、明るくてのびのびしていて、そこがいいのです。

 大声をコンプレックスにするわけでもなく、クヨクヨしてないんです。というか、自分の声がでかすぎるという自覚もなさそう。このヤカちゃんのセリフが、ものすごく大きなフォントで書かれているところが楽しいのです。

 わたしは以前、友達に「インターネットで書き込みを読んでいるとき、フォントが大きいと大声で話しかけられてる気持ちになる」と言ったら「そんなふうに思う人は珍しいよ、フォントはフォントでしょ」と返されたことがあるのですが……

 いや、伝わりますよ。これ。ヤカちゃんの声がどんなにデカイかが、このフォントで。

 ヤカちゃんは、自分らしく、のびのびと生きているだけで、けっして無理をしません。「自分のせいで家族が人間に捕まってしまうかも」などと考えて縮こまったり、声を小さくしようとか、目立たないようにしようとかまったく考えないのです。

 けれども、ヤカちゃんが自分の個性を殺さなかったことで、結果的にヤカちゃんたちは、ねずみとしては最高に幸せで快適な生活を送れるようになりました。

 日本人は、どうしてもへこんだところがあると、そこを埋めよう、埋めようとがんばってしまいます。他人と違うところがあると、そこは「劣っているところ」と判断し、「他の人と同じように」なるよう、矯正しようと、本人も周囲もがんばりすぎて消耗してしまいます。

 でも、「いっそ、突き抜けてしまったほうがいいのではないか」「欠点と思っていたところは、武器になるのではないか」と言う発想の転換が必要なのかもしれません。

 ヤカちゃんの周囲……人間のドドさんたちや、ヤカちゃんのお母さんは終始右往左往しているのですが、ヤカちゃんは実はほとんど慌てても困ってもいません。つねにマイペースなのです。

 ゆかいで、楽しく、大切なテーマもひそんでいるファンタジーです。

 絵本の装丁をしていますが、字の分量がかなり多く、小学校低学年向け。絵が中心の絵本を卒業して、そろそろ長めの物語を読み始めの、絵本と小説の中間くらいの本です。

 幼稚園から小学校に上がると、子どもを取り巻く環境が大きく変わります。幼稚園までは、個人の発育にあわせてマイペースで行動できたところを、小学校からは「クラスの子どもたちの標準」にあわせることを要求されるようになるからです。

 この年頃のお子さまにとって、「ありのままでいい」と言い切ってくれる物語は、新しい環境に戸惑うお子さまの力強いサポートになるはず。

 文章は平易で読みやすく、絵はとぼけていてかわいいので、ボリュームのわりにすいすいと楽しく読めます。もちろん、読み聞かせにも。ヤカちゃんのセリフを大声で読むのが楽しそうなので、お子さまに朗読してもらうのもいいかも。

 まじめすぎるお子さまには、ヤカちゃんがおすすめです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。むしろ、お子様がHSCであれば、おすすめです。とぼけていて、楽しくて、気持ちが楽になるメルヘンファンタジー。ヤカちゃんの屈託のなさに癒されます。

 読後はチーズが食べたくなるかもしれません。チーズケーキと紅茶でティータイムを。

 

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