【イーラちゃん】ハロウィンシーズンに! きかんぼうの女の子のファンタジック絵本。【イーラちゃんとまじょのヤーダちゃん】【4歳 5歳 6歳】
イーラちゃんはきかんぼうの女の子。今日はフリルいっぱいのドレスを着せられてご機嫌斜めです。「こんなのちっともすきじゃない!」イーラちゃんが家を出てゆくと、おんなじ顔の女の子と出会います……
この本のイメージ 魔女☆☆☆☆☆ ファッション☆☆☆☆☆ かわいくないけどかわいい☆☆☆☆☆
イーラちゃんとまじょのヤーダちゃん しまだともみ/作 偕成社
<しまだともみ>
1975年栃木県生まれ。多摩美術大学油学科卒業後、フリーのイラストレーターとして雑誌やCDジャケットなどを手がける。パレットクラブスクールでイラストと絵本のコースを受講し、2006年「イーラちゃんといじわるツリー」がタリーズピクチャアワードで最優秀賞を受賞。作曲家うちだえーすけ率いる「イーラちゃん楽団」による読み聞かせコンサートも全国各地で開催中。
ハロウィンシーズンなので、魔女や魔法使い、おばけやモンスターを題材にした絵本や児童書をご紹介しています。
もともと魔女ものや魔法ものファンタジーは大好きなので、ハロウィンじゃなくてもそういうのが多めなんですけども。
本日ご紹介するのはかわいくてきかんぼうな女の子、「イーラちゃん」の絵本シリーズの一冊。「イーラちゃんとまじょのヤーダちゃん」の初版は2018年です。
シリーズとはいえ、どれから読んでもわかるように作られていますが、順番にお読みになりたい場合は一冊目の「イーラちゃんはおうさま」から。「イーラちゃんはおうさま」のレビューはこちらからお読みください。↓
おはなしは……
イーラちゃんのママが、パステルピンクのふりふりのドレスをイーラちゃんのために買ってきました。
「ママったら、わたしのこのみ、ぜんぜんわかってないんだから!」
イーラちゃんは怒って森の中にずんずん歩いてゆきます。
そこへもう一人、ずんずん歩いてくる女の子がいて、ばったり鉢合わせ。
服と髪型以外はそっくりなお互いにびっくりです。
その子は魔女のお洋服屋さん、ヤーダちゃん。作っているお洋服が黒ばっかりなので、嫌になって逃げてきたのでした。
そこでふたりは名案を思いつきます。
互いの服を交換して、それぞれが家に帰るのです。さて、ばれないですごせるかな?
ところがイーダちゃんは、大人しくなんかしていません。魔女のお店でもやりたいほうだい。
真っ黒な服をもっとかっこよくしちゃおう! と、勝手にデザイン画を書き足してしまいます。
「ヤーダ! なんてことをしてくれたんだい」
激怒の魔女たち。さて、イーラちゃんたちはどうなるのかな……
……と、いうのがあらすじ。
あいかわらずイーラちゃんは、やりたいほうだいですが、今回はヤーダちゃんという小さな魔女も加わって、いたずらも二倍。でも、面白おかしく、ハッピーエンドで決着します。
シルエットはそれぞれ違うけれど色は全部真っ黒な魔女の服。「こんなのつまんない」とイーラちゃんが白いペンでデザイン画に書き足して、おしゃれなドレスに大変身。
表紙裏にはいろんなお洋服(黒い)のデザインが並んでいて、お子さまがお絵かき遊びができるようにもなっています。
また、今回もイーラちゃんたちがお話の中で歌う「まほうのうた」の楽譜が掲載されており、お絵かきをしたり、歌を歌ったりといろんな楽しみ方ができるようになっています。
薄いピンク色で、豪華でふりふりのドレスを着てぷんぷん怒っているイーラちゃん。「イーラちゃんはおうさま」を読んだあとだと、これが「このみじゃない」のはよくわかります。
イーラちゃん、「おうさまごっこ」で、つけひげをしたり、いろんな国の王様の格好をしてましたからね……。女王様の格好すらしませんでしたからね。お姫さまなんて、言語道断なんでしょう。
怒りんぼうで、やんちゃでいたずら好きなイーラちゃん。
デザイン的には、けっして美少女には描かれていないのですが、なんだか生き生きとしていて愛嬌があるのです。
女の子だからとかわいくしてなけりゃ、とかいいこにしてなくちゃ、とか気負ってしまいがちな子にはイーラちゃんのお話はいいかもしれません。男の子もイーラちゃんのお話は楽めそう。
こういう、やんちゃな子のお話って、大人になると「大人の心」が「こんな子、困っちゃうなあ」と思ってしまいがちですが、子どもの独創性や好奇心を高め、そして、日常の小さなかんしゃくやイライラは主人公に請け負ってもらえるという利点があります。
大人になってしまうと、「こういうの真似されちゃ困る」とついつい思ってしまうのですが、とても内気で引っ込み思案なお子さまだと、かえって救いになることがあるのです。
「やんちゃな子」って、男の子だと案外許容されるのですが、女の子だと許されない場合が多い。「あんなふうにできたらな」と思ってもその100分の1もできない子でも、物語のなかで発散できれば爆発せずに済む場合もあります。
小さな子どもの日常の言葉にならないちょっとしたイライラを、イーラちゃんの自由さが解消してくれるのです。
このイーラちゃんのシリーズ、毎回作曲家のうちだえーすけ先生が創った「イーラちゃんの歌」がついています。
しまだ先生は、この「イーラちゃんのうた」にあわせて、読み聞かせをする、「イーラちゃん楽団」による読み聞かせコンサート活動を12年ちかく続けていらっしゃいます。すごくかわいい歌なので、最後に動画をリンクしておきます。
字はわりと多めなのですが、すべてひらがなとカタカナで書かれているので、50音が読めればコツコツひとり読みすることができます。でも、読み聞かせをしても楽しそう。
読めばいろんなお洋服をお絵かきしたくなる楽しい絵本です。
いろいろと暗いニュースも多い昨今ですが、明るく豪快なイーラちゃんの絵本を読めば、気持ちもすっきり。
この秋、親子の時間にイーラちゃんの絵本をぜひどうぞ。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はありません。元気が出る絵本です。引っ込み思案で内向的なお子さまに。明るく、楽しく、豪快なイーラちゃんとヤーダちゃんの魔法を見たら、ちょっとした悩みやイライラはふっとんでしまうでしょう。
読むとお洋服のお絵かきをしたくなる絵本です。スケッチブックとクレヨンのご用意を。
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