【魔女の宅急便特別編その3】半分の月と半分の心。不思議な女の子ケケが成長して書いた物語。【ケケと半分魔女】【小学校中学年以上】

2024年3月31日

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ケケと半分魔女 魔女の宅急便特別編その3  角野栄子/作 佐竹美保/画 福音館

シリーズ本編第三巻に登場した不思議で勝気な女の子ケケ。ケケは大人になって小説を書きました。題名は「半分魔女━もうひとつのものがたり━」。これは、ケケが書いた小説なのです。

この本のイメージ スピンオフ☆☆☆☆☆ 劇中劇☆☆☆☆☆ ケケ☆☆☆☆☆

ケケと半分魔女 魔女の宅急便特別編その3  角野栄子/作 佐竹美保/画 福音館

<角野栄子>
日本の童話作家、絵本作家、ノンフィクション作家、エッセイスト。日本福祉大学客員教授。代表作は「魔女の宅急便」。

 全六巻で完結している「魔女の宅急便」の特別編、その3です。初版は2022年。

 「魔女の宅急便」はスタジオジブリによってアニメーション映画化された名作で、その後実写映画化もされました。キキは小芝風花さん、お母さんのコキリさんは宮沢りえさんです。

 キキが13歳で独り立ちしてから彼女の成長を一年ごとに描く物語なので、未読の方で興味を持たれた方はまずは第1巻からお読みください。第1巻のレビューはこちら

 今回のお話は、本編第三巻に登場した、不思議な女の子「ケケ」のその後……ケケはその後、小説家になるのですが、このお話はケケが書いた小説、と言う形をとっています。
 小説のタイトルは、「半分魔女━もうひとつのものがたり━」。

 主人公はタタと言う女の子です。

 おはなしは……

 タタはお父さんと二人暮らし。お母さんのミコさんは、小さい頃に亡くなったのでおぼえていません。けれど、どうやら不思議な女の人だったようです。

 ミコさんをこよなく愛していたお父さんのタヒオさんは、タタを溺愛しますが、タタはだんだん息苦しくなり、自分の空虚感の意味を探して、家を飛び出してしまいます。

 そして、不思議な森へとたどりつき、ミコが残したらしいものと出会うのでした……

 ……と、いうのがあらすじ。

 主人公はタタということになっていますが、もしかしたらこれはケケの自伝なのかもしれません。
 タタのママは、人間なのか、人間以外の存在なのか、はっきりしない、不思議な女性。もしかしたら魔女だったのかもしれません。

 しかし、タタが4歳の頃に亡くなってしまったので、タタはママのことをまったく覚えていませんでした。

 「魔女の宅急便」の世界では、魔女は血によって受け継がれるものだとされています。そして、13歳のときに魔女になるかどうかを選ぶのです。

 けれども、タタはお母さんから何も教わらずに成長してしまいました。パパはふつうの人間で、ふつうの人間として愛娘のことをただただ溺愛します。

 それはそれで幸せなことなのですが、自分の内の半分に「ふつうではない何か」を抱えたままのタタは、それが何かわからないもどかしさと、父親からの愛の息苦しさとで家を飛び出してしまうのでした。

 「魔女の宅急便」の第三巻で鮮烈な登場をしたケケ。キキが一生懸命やり遂げてきたことを、魔法も使わずにすいすいと不思議な力でやってしまうケケ。キキは、ケケに劣等感を刺激され、自分の魔女としての価値に疑問すら抱く瞬間もありました。

 けれども、ケケもどうやら当時、自分ではどうにもならない空虚感や頼りなさを抱えていたようです。

 これは、おそらくは若き日のケケの自分探しの物語です。タタという、ちょっととんがった女の子のお話を読みながら、これはきっとケケのことなんだろうな、この子はもしかしたらトトなのかもしれないな、と思って読むといろいろと想像できて楽しい。

 そして、このお話のなかで、その「はんぶん」の空虚感は埋まります。この「はんぶん」を埋めるのが「自分自身」であるところがわたしは好き。
 もちろん、旅の途中でタタはたくさんの人々と出会い、様々なことを感じ、考えます。でも、「はんぶん」を「他人に埋めてもらう」のではなく、自分自身で埋めたのはすばらしい。

 とても、とても大切なことが書いてある小説だと思います。

 非常に哲学的な内容なので好みが分かれるかもしれませんが、思春期に差し掛かりかけたお子さまにおすすめの本です。大人が読んでも瑞々しい感性に癒されます。「魔女の宅急便」はいつも歌うように書かれている物語で、心にすーっとしみてくるところがあります。

 「魔女の宅急便その3」を読んで、ケケのその後が気になっていた方には、おすすめのスピンオフです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。「自分とは何か」と考え始めたお子さまにおすすめの小説です。スピンオフ小説なのでこの本だけでも楽しめますが、本編を読んでからだと、ケケの生い立ちを想像することができて、二倍楽しめます。

 読後は、あったかいジャガイモスープが飲みたくなるかもしれません。

 

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