【魔女の宅急便特別編その2】あの子とあの猫の出会い。旅立つまでのキキとジジの物語。【キキとジジ】【小学校中学年以上】
キキが生まれたとき、どこからともなく黒い子猫がやってきました。すやすや眠る赤ちゃんの横で、気持ちよさそうに眠るた子猫。それがジジだったのです……
この本のイメージ キキとジジの出会い☆☆☆☆☆ ひとりと1匹☆☆☆☆☆ 旅立つまで☆☆☆☆☆
キキとジジ 魔女の宅急便特別編その2 角野栄子/作 佐竹美保/画 福音館
<角野栄子>
日本の童話作家、絵本作家、ノンフィクション作家、エッセイスト。日本福祉大学客員教授。代表作は「魔女の宅急便」。
全六巻で完結している「魔女の宅急便」の特別編、その2です。初版は2017年。
スタジオジブリによってアニメーション映画化された名作で、その後実写映画化もされました。キキは小芝風花さん、お母さんのコキリさんは宮沢りえさんです。
「魔女の宅急便」は、キキが13歳で独り立ちしてから彼女の成長を一年ごとに描く物語なので、未読の方で興味を持たれた方はまずは第1巻からお読みください。第1巻のレビューはこちら↓
今回のお話は、主人公のキキと、その相棒の黒猫ジジの出会いの物語です。生まれたばかりのキキのお話だけでなく、ジジの生まれた場所と母親のこと、赤ちゃんの頃のことも書かれています。
魔女には生まれたときに相棒となる黒猫が1匹つくことになっている、と本編では書かれており、13歳のキキが旅立つときにはすでに長年の相棒という形でジジは登場しています。
キキとジジはどんなふうに出会ったのかしら、と読者が知りたがっていたことが、今回、描かれました。キキとジジは導かれるように出会ったようです。
双方生まれたばかりのときは、互いが違う生き物だとは認識できず、それぞれが相手の真似をしようとするのもほほえましい。こんなにも昔からずっと一緒にいたんですね。それにしても、魔女猫は長生きだ……
キキは、本編中でもときどき、定期的に魔女でいるのが嫌になったり、古くからの魔女の伝統をやぶりたくなったりするのですが、その原因はほとんど「服」の問題だったりします。
魔女の服の色は「黒の中の黒」と決められており、魔女の娘のキキも、まだ旅立ち前の頃から黒やグレーなどの地味な色の服を着せられていたのでした。
キキはおしゃれな子なので、魔女になってからも定期的に明るい色の服が来たくなり、大いに悩みます。そして、今回、魔女になると決める前も、魔女になろうかなるまいか、服の件でかなり悩んでいたことがわかりました。
服以外のことでは、魔女は特別だし仕事は面白いし空を飛ぶのは楽しいしで言うこと無しなのに、可愛い服を着ている子を見てうらやましくなったり、黒しか着れないことでつまらなく感じてしまったりするのです。
こんな小さな頃からそんなふうに悩んでいたなんて、おしゃれするってキキにとっては本当に本当に大切なことだったんですね。それなのに、それを全部あきらめて魔女になると決意するとは、13歳のキキがとても大きな決意をしたことがあらためてわかります。
現代では13歳で人生の大切な決断をするようなことはほとんどありません。
それを考えるとつくづく「キキ、がんばったなあ」と思います。ジジがずっと一緒にいてくれたことは、そんなキキの大きな支えになったはず。
角野先生特有の、やわらかでリズミカルな歌うような文章でつづられる、キキとジジの物語。ときどき入る韻を踏んだ歌が、ミュージカル風でおしゃれなのです。読んでいるとふんわりとした、やさしい風に包まれた気持ちになります。だいたい、小学校中学年くらいから、読めると思います。
この本から読み始めて、本編第1巻を読んでもよし、本編を全部読んでからこの本を読んでもよしの、特別編です。キキとジジがもっともっと好きになること間違いなし。「魔女の宅急便」ファンなら、ぜひ、読んでくださいね。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はまったくありません。キキとジジの小さな頃のことがわかる、「魔女宅」ファンなら「待ってました!」と言った感じの特別編です。なんでもキキとおんなじがいいジジが、とってもかわいい。
読後はハーブティーでひと休みしましょう。コキリさんのくすりぐさのお茶を飲んでいる気分になって。
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