【魔女の宅急便特別編】おソノさんの過去とは?キキと出会った人びとの物語。【キキに出会った人びと】【小学校中学年以上】

2024年3月28日

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キキに出会った人びと 魔女の宅急便特別編  角野栄子/作 佐竹美保/画 福音館

「魔女の宅急便」の世界に住む、キキの周囲の人びとの物語。おソノさんの過去、市長さん不思議話、ヨモギさんのその後などなど。おソノさんが「グーチョキパン屋」をひらくまでには、こんな物語があったのです…… 

この本のイメージ おソノさん☆☆☆☆☆ 市長さん☆☆☆☆☆ ヨモギさん☆☆☆☆☆

キキに出会った人びと 魔女の宅急便特別編  角野栄子/作 佐竹美保/画 福音館

<角野栄子>
日本の童話作家、絵本作家、ノンフィクション作家、エッセイスト。日本福祉大学客員教授。代表作は「魔女の宅急便」

 今日は夏至。夏至(ミッドサマー)と言えば、魔女や妖精たちがお祭りをする、一年に一度の夜です。「真夏の夜の夢」の「真夏」とはミッドサマー、夏至のこと。

 そんなわけで、今日は魔女にちなんだ本をご紹介。「魔女の宅急便特別編」第1巻です。初版は2016年。

 魔女の宅急便シリーズは、本編が六巻、特別編が現在三巻出版されています。本編は、魔女の娘キキが13歳でひとりだちするところから始まり、とんぼさんと結婚しふたごの子どもを授かり、子どもたちが13歳で旅立つまでの物語です。

 短編のオムニバスではありますが、年齢順に読まないとお話がわからないので「読みたいな」と思った方は、まずは「魔女の宅急便」からお読みください。「魔女の宅急便」のレビューはこちら

 特別編では、「魔女の宅急便」の物語に登場した魅力的な人々の、それぞれの物語が描かれています。特別編第1巻に登場するのは、われらがおソノさん。そして、市長さんとヨモギさんです。

 キキが知らない街で戸惑っているとき、悩んでいるとき、いつもおおらかな笑顔で支えてくれたおソノさん。おソノさんの若い頃には、こんな人生があったのですね……。

 この本には、息子を亡くしたヨモギさんの物語もあります。ちょっぴり不思議でハッピーな市長ゲントさんの物語がまんなかに、おソノさんの物語とヨモギさんの物語にはさまれて収録されています。

 おソノさんとヨモギさんのお話は、大きすぎる哀しみに出会った人がそれを乗り越えるお話です。

 この国は、2011年以降、そういう体験をした人がぐんと増えたと思います。懐かしい人だけでなく、懐かしい場所もまるごと失った人もたくさんいます。

 世界全体からはちっぽけで個人的な出来事だとしても、その人にとっては世界が壊れてしまうような大きな哀しみ。そういった哀しみとどう付き合ってゆくか、平凡な人間のけなげな姿が描かれています。

 「大きな哀しみを乗り越える」と言っても、哀しみに雄雄しく立ち向かうわけではありません。深く悲しい気持ちを受け止めて、様々な人々に出会いながら、すこしずつ、すこしずつ、だんだん、だんだん、平気になってゆくのです。

 ふっくらと頼もしい、やさしい微笑みの「おソノさん」になるまで、ソノちゃんは長い長い人生の旅をしてきたのでした。

 あの、堂々とした力強いおソノさんが最初からポンといたわけではないのです。細くて弱弱しく、頼りない気持ちで必死に生きてきたソノちゃんがいてこそ、いまのおソノさんがある。

 女の人って、歳をとってふっくらとしてズケズケものを言うようになると、とかく悪く言われがちだけれど、経験を積んで力強く頼もしい大人になり他人に優しくなれるようになるのは、どこも悪くない素晴らしいことだと、わたしは思います。おそらくそれが、女性が本能的に持つ「母性」と言うものなのでしょう。

 母性に裏打ちされた女性の力強さは、じっさいにその人が子どもを産んでいるか育てているかに関係なく存在します。勝ち負けや暴力とはかけ離れたところにある強さなのです。

 もちろん、女性にも勝ち負けにこだわる強さを持つ人もいれば、男性にも母性のようなやさしさを持つ人がいます。「男性性」「女性性」と言われるものはどちらも男性にも女性にもあるからです。
 (厳密に言えば、それさえも性別では語れないもののようには感じますが、ここではあえて「母性」と書くことにしますね)

 「女の子は若くて細くてかわいいほうが良い」と言う価値観だと、若くて生きづらいソノちゃんのほうがおソノさんより良いと言うことになってしまいますが、人間的な魅力や強さ、頼もしさ、そして本人の幸福度も含めて、「おソノさん」のほうがだんぜんいい人生を生きてるのです。もちろんソノちゃんのつらい人生あってのおソノさんなんですが。

 ヨモギさんだって、若くて美しい時代にはたくさんのつらいことがあったとしても、これからの晩年、おだやかで幸せな、素敵な人生をおくることが出来るはず。

 この世界は、魔女がほうきで空を飛び、おとどけものやさんをしてくれる世界です。日常の中にちょっぴりだけ不思議が混ざっている。

 その不思議は、大切な人を生き返らせてくれるわけではないし、幸せな子ども時代を取り戻してくれるようなものではないけれど……

 でも、その「ちょっぴりの不思議」が、まるいチョコレートの甘さや甘酸っぱいユスラウメのジュースみたいに、涙で固まった心を溶かして、明るいほうへと導いてくれるのだと思います。

 「魔女の宅急便」の世界が大好きな方に、おすすめの特別編です。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 やさしい物語です。HSPやHSCの方のほうが多くのメッセージを受け取れるでしょう。

 大切な人を喪った大きな哀しみから立ち直るお話が二編あります。どちらもハッピーエンドです。
 読みたい時期にお読みください。プレゼントの場合は、まずはお読みになってみて、ご判断ください。励まされる内容だとは思います。

 読後は、まるいチョコレートでティータイムを。

 

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