【魔女の宅急便】ひとりだちしたキキの二年目の物語。キキと新しい魔法【小学校中学年以上】

2021年9月30日

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魔女の宅急便その2 キキと新しい魔法 角野栄子/作 福音館書店

コリコの町に引っ越したキキは二年目の生活に入りました。ちょっぴり成長したキキは、だんだん難しいものを運ぶようになります。カバだとか。そして、形のないもの……。小さな魔女の成長物語。

この本のイメージ 魔法とは☆☆☆☆☆ 自分とは☆☆☆☆☆ ちょっと切ない☆☆☆☆☆

魔女の宅急便その2 キキと新しい魔法 角野栄子/作 福音館書店

<角野栄子>
日本の童話作家、絵本作家、ノンフィクション作家、エッセイスト。日本福祉大学客員教授。代表作は「魔女の宅急便」。

魔女の宅急便その2 キキと新しい魔法 角野栄子/作 福音館書店

 「スタジオジブリ」によって、アニメーション映画にもなった「魔女の宅急便」2巻目です。
 十三歳の満月の夜に独り立ちしてから、コリコの町に引っ越したキキの生活は二年目になりました。

 いろんなものを運びながら、キキは少しずつ成長していきます。
 思春期に差し掛かったキキは「自分とはなんなのか」と言う悩みを抱くようになります。

 ライオンにしっぽをかじられて、「中心点行方不明病」になったカバさん。檻の生活のストレスで暴れていたゾウさん。
 そんなふうにキキも悩み始めました。

 飛ぶのが好きで、ただただ楽しいだけでやってきたお届け屋さんですが、思うように行かなかったり、ちゃんと届けられなかったりすることも体験するようになってきました。また、「心」や「気持ち」など、形のないものを届けるようにもなります。

アニメーションDVD

 大好きで、そして少ししんみりしてしまったお話は、入院中のおじいさんから「お散歩」をおとどけすることを頼まれたお話。愛用の杖を使って、おじいさんがいつも散歩しているコースを散歩してほしいというお願いです。
 キキは願いを叶えますが……。

 小さなエピソードのオムニバスですが、今回は楽しいお話だけでなく、少し哀しいお話も含まれています。
 そして、さまざまなことを受け止めかねて、自信を失い、うまく飛べなくなることも。

 彼女がもう一度自分自身を取り戻し、元気に飛べるようになり、そして、お母さんのコキリさんから「くしゃみの薬」の魔法を教わるまでが今回のストーリーです。

 キキは、やさしくて義理堅くて良い子ですが、一巻のときほどあっけらかんとしているわけではなく、だんだんと内省的な悩みを抱くようになります。映画では、自信を失い飛べなくなる期間はそんなに長くないですが、この本の中ではまったく飛べなくなることはないものの、「なんとなくうまく飛べない」「なんとなく、壊れかけたほうきをちゃんと直す気になれない」期間がずるずると長く続きます。

 現実のスランプや欝も、わりとそんな感じではないでしょうか。
 物語としてはダイナミックな展開のほうが面白いので、たいていは大事件が起きて心にひどくダメージを受け、ショック療法のように立ち上がるような話が多いのですが、現実はそんな極端な事件で人が劇的に良くなる事はあまりありません。

 本来は、このキキのように、小さな積み重ねの中で、時々くじけつつも、少しずつ、だんだんと回復してゆくものなんでしょうね。
 自信を失っても、哀しいことがあっても、そして、以前のようにいつも絶好調で楽しく仕事ができなくても、こつこつと誠実に仕事を続ける……。

 キキは、一時期、上手に届けられなくて「失敗してしまうお届け」がかなり続きます。正直にわけを話してお客さんにはわかってもらえるのですが、こんなにも失敗が続くのは、著者としてはわざとそう書いているのだと感じました。
 今回の物語は「仕事でうまくいかないとき」のお話なのです。

 はじめたての頃は楽しくて、何をやってすいすいとやってゆけますが、あるとき壁にぶつかって、どんなにがんばってもどうにならない時期と言うのがやってきます。
 そんなときに、どうすればいいのか……

 キキは急ぎません。
 慌てず、焦らず、一歩一歩、階段を登るように成長する小さな魔女のすがたは、思わず応援したくなります。

 そして、「これでいいんだ」と思えるようになったキキは、壊れかけていたほうきを、自分自身の手でしっかりしたものに作り直します。そして、飛ぶだけでなく、新しい魔法……コキリさんの「くしゃみの薬」の作り方を覚えようと決心するのです。

 新しい魔法を手に入れて、キキはまたひとつ成長しました。
 コリコの町で、様々な人の大切なものや「心」をお届けしていくうちに、すこしずつ成長してゆくキキ。そして、キキとの交流で変化しあたたかさを増してゆくコリコの町。
 これは、キキと「町」の成長物語でもあります。

 「飛ぶ」ことを、足が速いとか、リズム感がいいとか、生まれつき出来る特技だとすれば、「くしゃみの薬」は後天的に覚える特技のようなものです。今回、キキは、その二つを体得したことになります。
そして、知識によって後天的に得た特技は、先天的な才能がスランプなどで失われたときに、自分を支えてくれるものなんですね。
 だから、人は才能を伸ばすだけでなく、知識を積み重ねることも大切なのです。

 なるほど!
 ね、下手なビジネス書や自己啓発本より、児童書のほうが100倍わかりやすくてためになると思いませんか?

 子どもが成長していくうえで、たくさんの大切なことを教えてくれる物語だと思います。
 もちろん、大人にとっても。

 やわらかな筆致で描かれる、魔女の日常ファンタジーです。ほのぼのとしていて、ふんわりとしているのに、不思議と「がんばろう」と思えるお話です。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 実は、お年寄りが病気になり入院する、哀しいエピソードがあります。病気などにナーバスになっている時期には、あまりおすすめしません。けれども、しみじみとしたいい話で、感受性の豊かな方のほうがたくさんのことを受け止められることも確かです。
 お子様にプレゼントされる場合は、まずは保護者の方がお読みになりご確認ください。
 病気関係の描写があるのは、どうしても駄目だという場合は、避けたほうが無難です。
 「そういうシーンがあるのだな」と事前に身構えていれば大丈夫ならば、おすすめします。背中を押してくれるような言葉もたくさん出てきますし、淡々と日々をがんばるキキのすがたには励まされます。

 読み終わったら、サツマイモか、リンゴが食べたくなるかもしれません。

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