【ドリトル先生】ドリトル先生100周年!ついに宇宙へ進出するドクター・ドリトルの大冒険【ドリトル先生と月からの使い】【小学校中学年以上】

2021年5月12日

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ドリトル先生と月からの使い ヒュー・ロフティング/作 井伏鱒二/訳 岩波少年文庫

遠い国に航海に出たり、サーカスで巡業したり、郵便局を作ったり、新しい動物園を作ったりとこの地上でたくさんの冒険をしてきたドリトル先生ですが、ついにその冒険の舞台を広げる時が来てしまいました。そう、それは…

この本のイメージ 前半は犬☆☆☆☆☆ 後半は宇宙☆☆☆☆☆ 超展開☆☆☆☆☆

ドリトル先生と月からの使い   【ドリトル先生シリーズ 7 】  ヒュー・ロフティング/作 井伏鱒二/訳 岩波少年文庫

<ヒュー・ロフティング> 1886〜1947年。イギリス生まれ。土木技師を経て、1912年アメリカで結婚し、文筆活動に入る。著書にドリトル先生シリーズ。 
ドリトル先生と月からの使い ヒュー・ロフティング/作 井伏鱒二/訳 岩波少年文庫

 ドリトル先生のシリーズの7冊目。今回のお話は、前半は雑種犬たちの冒険譚。そして、後半は、神秘の虫がドリトル先生の庭に降り立つことから始まる、新しい冒険です。

 前半のテリア犬ケッチの大冒険は、今「これはただの犬の話ではない」と考えて読むと、新しい発見がいっぱいです。
 わたしは、このケッチ、大好きです。

 牧羊犬の子として生まれてきたケッチ。両親からも「子犬たちのなかで一番かしこい」と、将来を期待されながらも、よそに出されそうになってしまいます。それで、ケッチは家を抜け出し、「自立した犬」として生きていくと決めるのです。

 「自分で稼いで自分で食べていこう」と考えたケッチが、上品な紳士からシルクハットを奪い取り、路上で大道芸をはじめるエピソードが愉快です。
 道行く人は、ケッチの飼い主がどこかで隠れて見張っていて、犬に芸をさせているのだと思って最初は帽子にお金を入れるのですが、ケッチがあまりにかわいいので、直接肉などを投げてやるようになります。
 それで、ケッチは自分も路上で芸をして食べてゆくことができるのだと自信を深めるのです。

 ただ、この作戦には欠点があって、最終的にケッチに飼い主がいないとわかると、見物人の中からケッチを連れ帰って自分の家で飼おうとする人間が出てきてしまうのです。

 で、そうなるとケッチは逃げ出す。その繰り返し。

 ケッチとしては、人間のために役に立つ←→人間から食べ物をもらう は、公平な取引だと思っているのだけど、相手は飼い主とペットだと思っている。そして、相手が自分を所有していると思っていると感じると、ケッチは家出してしまうのです。

 たぶん、ケッチはこの突拍子もなくロックな性格に反して、ふわんふわんの毛並みでくりくりした目の、相当に愛くるしいテリアだったのでしょう。「ドリトル先生のキャラバン」のオペラ歌手ピピネラの時も感じましたが、これは、たんなる犬の話ではなくて「かしこいけど可愛らしい女の子」の比喩なんじゃないかと思って読むと、かなり面白いのです。

 ケッチは牧羊犬のきょうだいたちの中で一番かしこくて、両親の犬は「あとを継がせるならケッチだ。」とまで期待していたのですが、飼い主はたくさんの子犬を飼いきれる財力はないので、子犬を近所の人に選ばせて譲ってしまおうとします。
 で、まっさきにもらわれることになったのがケッチです。たぶん一番かわいかったのでしょう。

 これが、貧しい農家から娘が間引かれて売られる話にとても似ています。しかし、ケッチは新しい飼い主にもらわれていく直前に脱走します。

 そして、様々なところを転々として生きてゆくのですが、どこにいても誰かがケッチをかわいい、家で飼いたいと言い出します。すると、その時ケッチのすぐそばにいた人間が、いきなりケッチのことを相手に売ろうとするのです。

 「自分はこの人の持ち物ではないのに、どうしてそこで金銭が発生するのか」と、理不尽に感じたケッチはそこを出て行きます。

 子どもの頃は、「すごい肝っ玉の犬だな」と思って読んでいたのですが、遠いアフリカから売られてきた人たちや、貧しい家から売られる娘たちなど、犬の話ではないと仮定して読むと、だんだんとこの作品の奥深さがわかってきます。

 ケッチは、生きてゆくためには優れた存在になる必要があるが、自分に魅力がありすぎると商品として売られてしまう、というジレンマを抱えていたのです。

 たぶん、当時もこういう人たちがたくさんいたのでしょう。
 貧しい家や貧しい屋敷で、家や、自分の主を支えるために懸命にがんばる息子や娘がいたとしても、彼や彼女がものすごく美しかったり、かしこすぎたりすると、貧しい家では彼らを食べさせて働かせるより、売ったほうがお金になるのです。だから、貧しい家では美しい娘から先に売られるし、優秀な息子から先に奉公にとられます
 結局、ずっとそこにいたいなら、能力を発揮しないほうがいいのです。

 矛盾に満ちた話です。でも、そんな人たちがたくさんいた時代だというのは、わかります。

 というわけで、ケッチは最終的にドリトル先生のもとに落ち着きます。
 とことんロックだったケッチが、納得できる落ち着き先だったのですね。

 後半は、ドリトル先生のもとに不思議な蛾が舞い降りてきて、いままでとはまったく違うスケールの大冒険にいざなわれるお話です。いきなりSFっぽい展開になりますが、新しい冒険の匂いにトミーはわくわくが止まりません。

 けれど、これはまだまだプロローグ。これからは、壮大なスケールでの異世界の冒険が始まるようです。次の巻では、別世界での大冒険が描かれます。楽しみですね。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はひとつもありません。愉快な動物ファンタジーです。でも、動物たちの冒険譚は比喩だと思って読むと、また別の味わいがあります。何度でも面白く読める名作です。古風な日本語も美しい。

 濃く入れたあつい紅茶と、シンプルなビスケットなどをご用意ください。陽のあたる場所でのんびり読むのにおすすめです。

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