【たったひとつのドングリが】たったひとつのドングリから生まれる豊かな森。大自然の力と美を描いた絵本【すべてのいのちをつなぐ】【3歳 4歳 5歳】
たったひとつのドングリが木に育ち、その木に鳥が巣をつくり、落ちたタネから花が咲く……。すべての命は支えあって生きているのです。大自然の循環と美を描いた絵本。
この本のイメージ 食物連鎖☆☆☆☆☆ 大自然☆☆☆☆☆ 森ができるまで☆☆☆☆☆
たったひとつのドングリが ━すべてのいのちをつなぐ━ ローラ・M・シェーファーとアダム・シェーファー/文 フラン・プレストン=ガノン/絵 せなあいこ/訳 評論社
<ローラ・M・シェーファー>
アメリカの作家。数多くの子どもの本を手がけてきた。日本で紹介されている作品に「ライフタイム―いきものたちの一生と数字―」「おにいちゃんになるひ」「おにいちゃんだいすき」「うえにはなあに したにはなあに」などがある。
<アダム・シェーファー>
子どもの本の作家。昼間は公務員として働き、夜の時間を執筆にあてている。「たった ひとつの ドングリが」で、初めて母のローラと一緒に仕事をした。
<フラン・プレストン=ガノン>
ロンドン在住の画家。ケイト・グリーナウェイ賞など、多くの賞に名前があがっている。2011年には、イギリス人で初めて「センダック・フェローシップ」の一人に選ばれ、高名な絵本作家モーリス・センダックが住んでいた家で一ヶ月間の研修を受けた。
<せなあいこ>
翻訳家。英米の絵本を中心に活動中。おもな訳書に「あたし、うそついちゃった」「ホッキョクグマくん、だいじょうぶ?」「数ってどこまでかぞえられる?」などがある。
原題はBecause of an Acorn.アメリカでの初版は2016年。2018年です。
たったひとつのドングリが地面に落ち、芽を出して木に育ちます。
木に育てば鳥が巣を作ります。
鳥は近くの植物をゆすって種を蒔き、種は育って花が咲きます。
一輪の花から実がなって、実を食べにシマリスが来ます。
シマリスがいるところへヘビが来ます。ヘビを狙って鷹が来ます。
鷹が枝を揺らして、ドングリが落ちる……
はてしない自然の循環と、そのなかで森が豊かに育ってゆく様子が見事に描かれています。
版画のような絵は色鮮やかで、植物や動物たちは簡略化されながらも特徴をとらえられており、それぞれの魅力が存分に描かれています。森を描くのに使われている深い緑も美しい。
絵本を読む三歳や四歳の頃と言うのは、まだまだ自分の家、自分の部屋くらいしか行動範囲としてしっかりと認識はしていません。
四歳くらいになれば近所にお散歩くらいは出かけるでしょうが、自分の生きている世界が広くて大きな大自然に抱かれていることを知るのはもっともっと先です。
けれども、こうして大自然の生態系や食物連鎖について、本能的に知っておくことは大切なことでしょう。
現代社会では小さな子どもが食べ物の原型を知ることは困難です。
野菜や果物はきれいに洗って時には切った状態で売られており、肉や魚も切り身です。
自分が食べているものはどこで生まれてどんなふうに運ばれて自分のもとへやってくるのか、ふだん食べている鶏肉は、窓の外から見えるすずめやカラスと同じ種類の生き物だったのだとか、知らないことばかりです。
そんな生活の中で、自分という人間の子どもがどう大自然に組み込まれているのかは想像もつかないことでしょう。
けれど、幼い頃からこのように生態系の仕組みを描いた絵本を読んでいると、完全には理解できなくても、自分をとりまく大自然の法則をなんとなく肌感覚で感じることができるようになります。
文章は読みやすく、見開きに一行か二行。
文字はすべてひらがなとカタカナで書かれており、五十音が読めればお子さま一人で読みきることができます。
もちろん、親子で「この動物はね」と語り合いながら読み聞かせするのもおすすめ。
大自然の循環に想いを馳せ、感謝の気持ちを強くする絵本です。
夏の終わりにいかがでしょうか。
不思議と優しい気持ちになれます。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
おすすめです。大自然の法則や生態系について、魅力的な絵でわかりやすく描かれた絵本です。感受性の強いHSCのお子さまのほうが、より多くのメッセージを受け取れるでしょう。
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