【木いちごの王さま】ふたりの姉妹の不思議体験。木いちごの王様からの恩返し。フィンランドからやってきた読み聞かせにぴったりのかわいい絵本です。
木いちごを摘みに行ったテッサとアイナ。二人は森で道に迷ってしまいますが、次々と不思議が事が起こります。
この本のイメージ かわいい☆☆☆☆☆ 不思議☆☆☆☆ おいしそう☆☆☆
木いちごの王さま サカリアス・トペリウス/作 きしだ えりこ/文 やまわき ゆりこ/絵
作者のトペリウスは「フィンランドのアンデルセン」と呼ばれているのだそうです。
木いちご(ラズベリー)のような赤い表紙のかわいい絵本です。挿絵は、「ぐりとぐら」の山脇先生です。何かの悪をとっちめる話ではありませんが、教訓的な側面のある話です。
テッサとアイナというふたりの姉妹が、木いちごを摘みに森に入って、不思議な体験をする物語です。ネタバレしてしまいますと、「○○の恩返し」系の話です。
その数日前に、テッサとアイナは、積んできた木いちごについていた、小さな虫の幼虫を助けてあげたのです。しかも、鳥に食べられないように、そっと葉の影に戻してあげていました。
その後、二人は迷い込んだ森の奥で不思議な体験をします。
実はその虫は「木いちごの王様」でした。神様が王様がうぬぼれないように、100年に一日だけ、王様を無力な虫に変えてしまうルールがあり、それがその日だったというのです。そして、無力な虫だった自分をやさしく助けてくれたので、王様は二人に恩返しをしてくれたというわけです。
なんかほのぼのする、かわいいお話です。
今の子供は、魚や肉を切り身でしか知らなかったりします。さまざまな食べ物が、どのように生まれてどのように口に入るか、あまり考えないで日々生きています。野菜や果物、お肉などについて、どこから来てどんなふうに食卓に上るのか、想いをはせるきっかけになるかもしれませんし、小さな虫などにも命があるのだと考えるきっかけになるかもしれません。
植物になぜ虫がいるかと言えば、蝶や蛾の幼虫は植物の葉を食べることで、葉が茂りすぎて蒸れたり、病気になったりするのを防いでくれているのです。成虫になりチョウチョになったら花粉を運んだりして植物が増えることを助けます。もちろん、青虫が増えすぎれば、鳥のごはんになって、鳥のおなかを満たします。
自然界に役に立っていない命はないのです。
そして、この姉妹が王様に感謝されたのは、この姉妹がこの虫を「王様だから」助けたのではなく、純粋に「小さな虫を助けたい」と思って助けたからだと思うのです。
今は、大人も子供も、こういうことが難しくなっています。役に立つから、有能だから、お手伝いをよくするから、おりこうだから……だから評価される。得だから、お返しがありそうだから、いいことがあるから他人にやさしくする。のではなく、純粋に人として親切にする、人間として助けるという行為がとても困難になってきています。
もっと言うなら、「~してはいけません」ではなく、助けましょう、親切にしましょう、分かち合いましょう、と言ったりしたりするのは難しいということです。難しい、だけど大切なこと……悪を成敗するのではなく、どこかの誰かを助けること…。ほんのちょっとしたことでも。
そのほうが、この世界は変われるんじゃないでしょうか。できることは小さくても。
わたしは、インターネットは大自然と同じだと思っています。見えないところで、何かが循環しているのです。だから、できることをできるかぎりやって、何かが育つのを信じたいと思います。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
かわいい童話です。小さな虫をみつけたとき、「これ、王様かもしれないね」と思えるかもしれません。また、食べ物を完成形でしか知らない子供には、いろんなことを考えてもらえるお話になるかもしれません。
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