【かいじゅうたちはこうやってピンチをのりきった】こわい気持ちとどう付き合う?心の不安と仲良くするための絵本【4歳 5歳 6歳】

2024年3月24日

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かいじゅうたちはこうやってピンチをのりきった 新井洋行/作 森野百合子/監修 パイインターナショナル

かいじゅうたちには怖いものがありました。高いところとか、注射とか、大勢の人とか、暗闇とかです。これは怪獣たちがどうやってピンチを乗り切ったかの物語……

この本のイメージ だれにだって怖いものはある☆☆☆☆☆ ピンチになったとき☆☆☆☆☆ 不安との付き合い方☆☆☆☆☆

かいじゅうたちはこうやってピンチをのりきった 新井洋行/作 森野百合子/監修 パイインターナショナル

<新井洋行>
東京造形大学デザイン科卒業。2人の娘と遊ぶ中でヒントを得て作った、あけて・あけてえほんシリーズ「れいぞうこ」他(偕成社)で人気を博す。同シリーズは、海外でも出版され、国内外の子ども達にも愛されている。絵本の作品に、「れいぞうこ」「といれ」「はこ」(偕成社)、「いろいろ ばあ」(えほんの杜)、「おやすみなさい」(童心社)、「ちゅうちゅうたこかいな」(講談社)、「しろとくろ」(岩崎書店)、「いっせーの ばあ」(KADOKAWA)、「おばけとホットケーキ」(くもん出>版)、「つんっ! 」(ほるぷ出版)他多数。挿絵の仕事に、「モーキー・ジョー」シリーズ(フレーベル館)、 「パーシー・ジャクソン」シリーズ(ほるぷ出版)などがある。性格は、心配性であがり症。

<森野百合子>
医師。精神科専門医。英国児童・思春期精神科専門医。家族療法士。
日本医科大学を卒業後、国立精神神経医療研究センター、日大板橋病院精神科などを経て、渡英。ロンドン大学付属精神医学研究所とモーズレイ病院にて、家族療法及び児童・思春期精神科臨床を学ぶ。ロントド大学キングスカレッジにて家族療法修士修了。家族療法士、児童・思春期精神科レジデントとしてモーズレイ病院に勤務。帰国後は、東京都立梅ヶ丘病院医長、東京都立小児医療総合センター児童・思春期精神科部長を経て、現在は、なります子どもの心ケアセンター準備室室長。感情障害や発達障害、摂食障害など心の問題に悩む子どもと親たちに向き合い、家族療法を用いながら日々治療を重ねている。

 子どもの頃には、たくさんの怖いものや苦手なものがありました。人は成長過程で、怖いもの苦手なものをひとつひとつ消してゆきます。それでも、苦手なものはありますよね。

 これは、かいじゅうたちが自分たちの苦手なものをどう乗り越えていったかの物語。

 北京オリンピックでの、フィギュアスケートの羽生結弦選手のクワドアクセルへの挑戦が話題になっています。挑戦を宣言して練習を始めたのはかなり前なのですが、最初は世間も半信半疑でした。しかし、オリンピックと言う大舞台で挑戦したことで、多くの人の心を揺さぶりました。

 日本のフィギュアスケートには、昔から困難への挑戦の系譜があります。

 トリノオリンピックで、荒川静香選手(当時)が金メダルを勝ち取った陰で、安藤美姫選手は四回転サルコウに挑戦しました。(安藤選手は当時すでに、過去に四回転サルコウを成功させていましたが、成長した体型でオリンピックで四回転を成功させることに期待が高まっていました)
 結果は転倒してしまったのですが、その後、引退を考えていた安藤選手に「オリンピックで四回転に挑戦してくれてありがとうございます」と話しかけたとあるご婦人がいて、その方の一言で現役続行を決意したという、胸が熱くなるエピソードがあります。

 ソチオリンピックでは、ショートプログラムで出遅れた浅田真央選手が、フリープログラムで三回転半を含めて全種類のトリプルジャンプを成功させるという偉業を成し遂げました。当時の女子シングルで最高難度のプログラムでした。

 今回の北京オリンピックでは、羽生結弦選手が、人類で始めてオリンピックで四回転半ジャンプに挑戦し、転倒しながらも認定されました。

 どうして、彼らはこのような困難な道に挑戦するのか、できるのか、そして、どうしてわたしたちは、そんな彼らにここまで熱い「なにか」をもらうのか。

 人には、様々な恐怖や不安があります。その中でも彼らが乗り越えようとしたものは、「栄光を勝ち取れないかもしれない恐怖」「失敗したときに多くの人に責められる恐怖」「夢を掴めなかった時の哀しみ」と言う、ふつうの人間にとっては計り知れないものでした。なぜなら、ふつうの人間は、まずオリンピックに出場するまでには至れないし、オリンピック選手になれるほどの努力や困難を乗り越えられないからです。

 四年に一度、国内で三人しかいないトップレベルの人たちが、なお、守りに入らずに夢をかなえようとする姿に、わたしたちは、心を揺さぶられます。

 とくに、今回、羽生選手のショートプログラム、最初のジャンプをアクシデントで失ってから、瞬時に立て直し、残りの要素を完璧に滑りこなしたことに、賞賛が集まっています。ふつうの人間だと、最初のジャンプであのようなことになったとき、動揺してしまい、ほかの要素も失ってしまうことが多いからです。

 どうしたら、そんなふうになれるのでしょうか?

 この「かいじゅうたちはこうしてピンチをのりきった」は、心の中の不安や恐怖、動揺とうまく付き合う方法を描いた絵本です。

 新井洋行先生のとぼけた絵で、かいじゅうたちが様々なピンチをどうのりきってゆくかが描かれています。
最初の方法は、わりと普通の人がやってしまう方法。苦手なことを別の方法で乗り切ったり、強固にガードしたり、やらずにすましたり……

 でも、それだと「心のゾワゾワ」は大きくなってしまうので、うまく付き合う方法を考えよう、と「ゾワゾワ」ちゃんが語りかけます。

 最後にいろんな「ゾワゾワ」が登場します。高いところがこわい、むしがこわい、おこられるのがこわい、水がこわい、などなど……

 でも、これらの「こわい」が全部無い人間がいたとしたら、その人は確かにすごく強い人だと思うけれど、あんまり魅力的な人ではないかも。ありすぎは困るけれど、こういう、「苦手なこと」があることが、人間臭い魅力になっていたりもします。

 なので、すべての「ゾワゾワ」は、消しゴムのように消してしまうのではなく、向き合って、お話を聞いて、一緒にお散歩したりして、なかよくしてみよう。
 なかよくすると、ゾワゾワちゃんはだんだん小さくなって、小さくなったゾワゾワちゃんは、大きな助けになるから。
 と、ゾワゾワちゃんが教えてくれるのです。

 「ゾワゾワ」を感じることは「悪いこと」や「いけないこと」ではない、「ゾワゾワ」をまったく感じないことも危険なことだ、と言う大切なことも書いてあります。身体や心の不調のサインを無視して、無理して働き続けたら過労死してしまいます。

 人間の不安や恐怖を、全面的に否定せず、「恐怖や不安を感じない人」になるのではなく「恐怖や不安とうまく付き合う人」になろうと言う、やさしい絵本です。

 この絵本は、ぜひ、読み聞かせしてあげてください。一人で読んでも、そして大人が読んでも面白いし元気が出る絵本だけど、やはり、読み聞かせがいい気がします。小さなお子さまが、安心できる環境で「ゾワゾワ」について話ができたら、わりとあっさりと小さくなる「ゾワゾワ」もたくさんある気がするのです。

 「完成された美しい人生」が「成功した人生」なのでしょうか。そうじゃないですよね。人間も人生も、不完全だからこそ、美しい。
 人生の一瞬、完璧に見える瞬間があるかもしれないけれど、そこまでに至る道の含めてが人生のすばらしさ。

 今回、金メダルを獲得したネイサン・チェン選手だって、過去に苦しい挫折がありましたし、宇野選手も鍵山選手も多くの困難を乗り越えてきています。メダルはもちろんすばらしいことですが、過去の困難も含めてのメダルなのだと、思います。

 日常で出会うたくさんの「ゾワゾワ」ちゃんと仲良くしながら、そして、できれば「ゾワゾワ」ちゃんを「ワクワク」ちゃんに変えながら、わたしたちも、自分なりの冒険の旅をしよう。

 人生をワクワクしたものに変えるために、ちょっぴり手を貸してくれる絵本です。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 HSPHSCが日常で出会う、たくさんの違和感や不快感、苦手な感情との向き合い方、付き合い方について書かれている絵本です。ふつうの子より敏感で、感じやすい、小さなお子さまには、どうぞ読み聞かせしてあげてください。
 「心のゾワゾワは誰にでもある」「どこにでもある」ことを描いています。

 感じやすいお子さまは「こんなにたくさんゾワゾワがあるのは、自分だけではないか」と悩んでいるものなので、「いっぱい仲間がいるよ」と言うのは、救いになるかもしれません。ゾワゾワちゃんとの会話は、できれば、一緒にしてあげてください。もちろん、大人が読んでも、癒される絵本です。

 

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