【ごちそうたべにきてください】おもてなしが大好きなうさぎさんのもとへ、森の動物たちがやってきます。癒されるおいしい絵本【4歳 5歳 6歳】
ごちそうするのが大好きなうさぎさん。秋になると木の実を集めて、木の葉のお手紙を書きます。「ごちそうたべにきてください」。すると、森の動物たちがやってきて……
この本のイメージ 動物ファンタジー☆☆☆☆☆ おもてなしの喜び☆☆☆☆☆ ほのぼの☆☆☆☆☆
ごちそうたべにきてください 茂市久美子/作 しもかわらゆみ/絵 講談社
<茂市久美子>
岩手県生まれ。「おちばおちばとんでいけ」で、ひろすけ童話賞受賞。おもな作品に、「つるばら村」シリーズ(全10巻)、「ゆうすげ村の小さな旅館」(東京書籍小3国語教科書にも掲載)、「魔女バジル」シリーズ(全5巻)、「おひさま」シリーズ、「おいなり山のひみつ」「今日よりは 明日はきっと 良くなると」などがある。
<しもかわらゆみ>
東京都生まれ。千葉県在住。
2001年より講談社フェーマススクールズ(KFS)の通信講座にてイラストレーションを、同講座修了後はKFS直営教室で動物細密画(ワイルドライフアート)を学ぶ。
2013年、同スクールが主催した「第7回KFS絵本グランプリ」にてグランプリを受賞。「ほしをさがしに」(講談社)で絵本作家デビュー。ほかの作品に「ぽつぽつぽつ だいじょうぶ?」「おすわり どうぞ」「ねえねえ あのね」がある。
かわいい絵本をご紹介。
「つるばら村」や「魔女バジル」のシリーズの茂市久美子先生の絵本です。初版は2021年。
動物ファンタジーでは、たいていの場合、肉食獣と草食獣が仲良くしていたり、食物連鎖や生物界の法則に反した物語になっています。
そのため、科学が大好きで動物の生態にこだわるお子さまには、ウケが悪いこともあるのがむずかしいところ。
けれども、これは様々な人間をあらわす比喩なのだと説明すると、すんなりとその壁を乗り越えてくれる場合があります。
それはそれで、熊は気は優しくて力持ち、ねずみはすばしっこくて働き者、犬は義理堅くて信用できる、猫はわがままで気まぐれ、オオカミは暴力的で残虐、きつねはずるい卑怯者、のようなテンプレ描写もあり、それぞれの動物のファンが「そうじゃない!」と異を唱えたりすることも多いものです。
動物ファンタジーの弊害がいちばん多いのは熊で、熊は可愛らしい見た目ですが獣としてはかなり恐ろしい生物で、サファリパークのようなところでいちばん事故が起きやすいのは熊だそうです。ついつい油断してしまうんでしょうね。
ファンタジー界ではたいてい悪者として登場するオオカミは家族想いで身内にはやさしい動物だったり、長生きすると妖怪になると言われている猫もかなり愛情深い動物です。
とはいえ、動物をたとえにして、人間関係のあたたかさを描いた物語は、人間そのものを登場させておんなじ話を描くよりもすとんと胸に落ちますし、心がほかほかしてきます。動物たちの愛らしい仕草やくりくりしたつぶらな瞳など、人間の根源的な「かわいいものを愛でる気持ち」に訴えて疲れた人の心をひらく力があるのでしょう。
これは、お客様をおもてなしするのが大好きなうさぎさんの物語です。
ストーリーは……
山の大きな木の中にひとりで暮らしているうさぎは、お客様にごちそうするのが大好き。
秋になると、木の実をたくさんとって、森のみんなに木の葉の招待状を書きます。
「ごちそうたべにきてください」。
すると森中からお客さまがやってきます。
りすにねずみ、ちょうちょ、くまさんなどなど……
秋も終わりに差し掛かると、りすやねずみからお返しにもらった渋柿を、干してあまい干し柿をつくります。
雪深い冬にいらしたお客さまには、この干し柿でおもてなし。
そして、春になると、うさぎはお客さまたちのためにふきのとうを摘みにゆくのでした……
……と、いうのがあらすじ。
このお話には様々な動物たちが登場します。
しもかわら先生の絵は、リアルとディフォルメの配分としてはかなりリアル寄り。動物たちは洋服も着ていません。
ときどき二足歩行になったり、手紙を書いたりするような人間らしい仕草をたまにするだけで、かなりリアリティを重視して描かれています。けれど、だからこそ、このちょっとした仕草が愛らしい。
字はすべてひらがなで、50音が読めればひとりでコツコツ読むこともできるので、ひとり読みにおすすめ。もちろん、親子で読み聞かせしても楽しい絵本です。
そして、動物好きの大人の方への和み絵本としても。
わたしは、このサイトでは「大人の癒しとしての絵本、児童書読書」をおすすめしています。
現代の大人の社会はあまりにも複雑になってしまったので、毎日を頑張って生活しているだけでも、真面目な人は心が疲れてしまうときがあります。
難しい話は受け付けなくなり、長い文章は読めなくなり、パワフルな音楽や深刻なドラマなどを楽しむことが出来なくて、ただただくつろぎたくて疲れ果ててしまう。
それでも明日はあるし、がんばらなければ。
そんなとき、癒しになってくれるのは、シンプルで純粋で可愛らしいもの。混じりけのない、善意だけでできたもの。
絵本は、疲れた大人の心の回復剤になってくれるのです。
「ごちそう たべに きてください」は、そんな絵本です。ネガティブな要素はいっさいありません。
うさぎの集めた木の実でおもてなしされた動物たちは、お返しに渋柿を運んできてくれ、それは甘い干し柿になって冬の動物たちのお腹を満たします。それを喜んだうさぎは、春のはじめのふきのとうを採りにゆくのです。
うさぎの「誰かをもてなしたい」「誰かに喜んでもらいたい」と言う気持ちが、森じゅうに広がり、うさぎだけでなく、たくさんの動物たちがその輪に入ってゆきます。
善意が循環し、うれしさや幸せも循環し、そして幸せな動物たちがうさぎを中心にしてどんどん増えてゆく、小さな幸せが大きく育ってゆくストーリーです。
子どもも大人も、ちょっぴり疲れたときは、うさぎのおもてなしの心に触れて癒されてみませんか。
寒い冬にぴったりの、春を待つ心の絵本です。
つらいときや大変なときも、みんなでおいしいものを食べたら幸せ気分ですよね。
食べるものは、ほんのちょっとしたものでいいんですね。うさぎが教えてくれています。
お子さまのひとり読みに、読み聞かせに、そして大人の和み時間に。
愛らしい動物たちのおもてなしで癒されましょう。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はいっさいありません。お疲れモードのHSPやHSCにおすすめの絵本です。
動物の描写がリアルで愛らしく、動物好きなお子さまにも。本を読んだ後、動物図鑑でそれぞれの生態を調べるのも楽しいでしょう。
読むとおなかがすいてきて、ナッツや果物が食べたくなる絵本です。ご用意を。
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