【十二国記】めでたく再開した小野不由美の名作ファンタジー、まだの方はぜひどうぞ【中学生以上】

2024年1月17日

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月の影 影の海 十二国記 上下 小野不由美/作 新潮文庫

中嶋陽子はごくふつうの高校生でした。ある日、放課後の教室でガラスが割れ、無数の破片に襲われて、金髪の男にさらわれるまでは。突然、異世界に連れ去られ、同行者ともはぐれ、1人で旅をすることになった陽子。その陽子に過酷な運命が襲いかかります。

この本のイメージ 激動の運命☆☆☆☆☆ サバイバル☆☆☆☆☆ 恋愛ゼロ☆☆☆☆☆

月の影 影の海 十二国記 上下 小野不由美/作 新潮文庫

 日本ファンタジー界屈指の名作、十二国記です。
 ご存知の方には「知ってるよ」ですんでしまう、そしてご存じない方にはどう説明したらいいのかが難しい、けれども、まぎれもなく名作なのです。

 昔はよく「少女向けライトノベルだと思ったら大間違いの本格派」などと言われていましたが、今回読み返してみて、少女にこそ、読んでいただきたい作品だと再確認。これは少女向けでいいのだ!とあらためて思いました。

 主人公は、ごくふつうの高校生、中嶋陽子。
 普通の人よりちょっとだけ大人しく、ちょっとだけ真面目で、ちょっとだけ内気。なにもかも抜群にできるわけではなく、そこそこの、ほんとうにそこそこの女の子です。

 ただ、家でも、学校でも、ちょっぴり「浮いた」存在でした。

 ところが、そんな陽子の人生が一変する事件が起きます。放課後、突然、教室に金髪の男性が現れ、「私とおいでください」と言われるのです。男の名は「ケイキ」。そして教室中のガラスが割れ破片が降り注ぎ、一瞬にして教室は流血の惨状に。男に連れられて屋上に向かうと、見たこともない怪物に襲われます。

 そのまま、異界へと連れ去られる陽子。ところが、この金髪の男性とも、この直後にはぐれてしまいます。

 頼りになるのは、自分を守るために憑いている「ジュウユウ」と、「ケイキ」が渡してくれた、ひと振りの剣のみ。まったくのふつうの女子高校生陽子の、生きるための旅がはじまってしまっていました。

 なんとしてでも元の世界に戻りたい陽子は、まずははぐれてしまった謎の男「ケイキ」を探します。
 しかし、この世界は、平和な日本と比べてあまりにも過酷。困難に次ぐ困難、裏切りに次ぐ裏切りの連続で、陽子は1人、行き倒れてしまうのです。

 と、ここまでが上巻のあらすじ。

 以前、「家なき娘」ブックレビューで、ジュニア向け小説でここまで過酷な展開は「月の影 影の海」の上巻に匹敵する、と書きましたが、わたしが知る限り、「月の影 影の海」の上巻はジュニア向け小説で一、二を争う壮絶さだと思います。(大人向けにはもっと残酷なお話はありますが、少女向けという制約を考えるとなかなかすさまじい。暴力シーンと言うよりも、裏切られるシーンが多いのです)

 このシリーズは、最初の1冊目を読むのがいちばんしんどいので、そこをとにかく頑張って乗り越えていただきたい。尻上がりに面白くなって行きますから。

 下巻では、十二国記ファンの心の癒し、楽俊(らくしゅん)が登場します。上巻を読んですさんだ心が洗われる、のどかですがすがしい楽俊が旅の友となり、陽子の探求の旅はぐっと楽になります。

 楽俊が出るまで頑張って読んでください!あとは、ラストまで上がるだけです!

 はたして、陽子の運命は? そして謎の男、「ケイキ」とは何者なのか?
 陽子を襲う怪物たちの正体とは?

 これは、陽子の成長物語です。最初にかっこよく出てきた「ケイキ」は、まっっっったく頼りになりません。(正直言ってその後もあんまり……(汗))でも、陽子は見事に成長します。

 根底に流れるのは「生き様」とか、「覚悟」とか、そんな骨太のテーマです。
 人が人を信じるのは何のためか。善く生きたいと願うのは何のためか。
 そんな根源的なところへと、ごくふつうの女子高生が「生き延びる」ことを通じて問いかけます。

 そして、毅然として自分なりの「答」を導き出し、天命を受け止めた陽子は、まさに王者。
 ごくふつうの女の子が、王者として育って行く長い旅路の始まりです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 流血シーンはかなりあります。ご注意ください。上巻は精神的にきつい展開が多く、しんどいですが、下巻ですべて癒されます。セラピー小説として、本職セラピストからの評価も高い作品です。現在、きつい状態にある女の子や女性にはおすすめです。励まされます。流血シーンを乗り越えられるなら、ぜひ。

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