【二年間の休暇】少年版ロビンソンクルーソー。15少年漂流記としても知られる、冒険小説の古典【中学生以上】

2024年2月13日

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二年間の休暇 上下 ジュール・ヴェルヌ/作 私市保彦/訳 岩波少年文庫

休暇で六週間の航海に出るはずだった、ニュージーランドのチェアマン寄宿学校の少年たち。ところが、船が流され、嵐の果てに無人島に漂着してしまいます。少年たちは力をあわせて島でのサバイバルを開始します……

この本のイメージ サバイバル☆☆☆☆☆ 寄宿舎☆☆☆☆ 冒険☆☆☆☆

二年間の休暇 上下 ジュール・ヴェルヌ/作 私市保彦/訳 岩波少年文庫

<ジュール・ヴェルヌ> 
1828~1905年。ブルターニュ地方生まれ。フランスの作家。法律を学ぶが,文学の道を志す。30代半ばに出した『気球に乗って五週間』で成功をおさめ,以後つぎつぎに80作を超える冒険小説を書き「空想科学小説の父」と呼ばれる。著書に「地底旅行」「月世界旅行」「八十日間世界一周」など。

 まずは、不朽の名作「ロビンソン・クルーソー」(ダニエル・デフォー)が大前提です。
 この作品があまりにも人気が出たゆえに、その後、さまざまな「ロビンソンもの」が生まれました。(ロビンソン・クルーソーをご存じない方に少し説明しますと、無人島に漂着したロビンソンが、1人でサバイバルするお話です。)
 そして、この本の著者ジュール・ヴェルヌは、「まだ寄宿学校の少年たちのロビンソンものがない」と考えたのだそうです。

 これは、15人の少年たちのサバイバルの物語です。
 ニュージーランドのチェアマン寄宿学校の生徒たちが、本来は六週間の休暇で航海に出る予定だったところ、嵐で漂流して無人島にたどり着き、二年間を自給自足で生き延びました。「二年間の休暇」は日本では「15少年漂流記」として有名な冒険小説の完訳版です。

 要点としてはそれだけなのですが、130年以上前の物語ですから、その当時の時代背景が色濃く出た作品になっています。
 著者のジュール・ヴェルヌがフランス人なので、主人公のブリアン(フランス人)は、ほとんど欠点のない性格になっています。イギリス人のドニファンは高慢ちき、アメリカ人のゴードンは生きて帰ることより無人島を植民地にすることに使命感を感じている、など、著者のイギリス観とアメリカ観がちょっぴり透けて見えているところも面白いんです。(ゴードンは気のいい奴ですし、ドニファンは後にただのツンデレとわかり、和解します。見せ場もあります。)(2020.7.27追記)

 また、水夫見習いのモコは黒人であるため、少年たちの中でも一段身分が低く、たいへん有能なのにもかかわらず、定期的に行うリーダー選出選挙の投票権がありません。このあたりが、リアルです。

 チェアマン寄宿学校の生徒たちは世界中の裕福な家庭の子弟なので、それぞれが個性的な上にわりと譲らず、ガンガンぶつかり合いながら友情を深めていきます。無人島で寄宿学校らしい自治を行いながら、サバイバルしていく様子は、サバイバルものなのに学園ものの要素もあって、独特の魅力があり、今なお愛されている理由がわかります。

 最初は価値観もバラバラで、ぶつかり合うことが多かった少年たちが、数々の困難を乗り越えて団結していくのは、お約束とは言え気持ちのいいものです。
 また、少年たちそれぞれが、最善と思ってしたことがうまくいかなかったり、失敗したと思ったことが最善の結果を連れてきたりするところが、ものごとってわかりやすい善悪ではなく、表裏一体なんだなと思わされます。人生ってそんなもんですよね。

 たどり着いた無人島が、鳥がたくさんいたり植物も豊かだったりして、そんなに食べ物に困る記述がありません。また、水夫見習いのモコが料理上手で、なんでもおいしく調理してしまうので、遭難中なのに少年たちの食事がおいしそうなんですよ!

 食べ物がおいしいと、ほかが不便でもなんとか生きていける気がしますよね。
とにかく、モコがすごくて、調味料が塩とメープルシロップくらいしかないのに、豪勢な料理をなんでも作ってしまうのが素晴らしい。子どもたちが致命的な喧嘩をせずにすんだのは、ひとえにおいしい食事のおかげではなかろうか。

 ラスト近くに、ある事件があって、のどかだった無人島生活は一気に緊迫したものになります。途中、かなり凄惨なシーンもありますが、子どもたちは成長しますし、友情の絆も固くなり、ラストはめでたいハッピーエンドです。

 読み応えのある冒険小説なので、ぜひ、完訳版でお楽しみください。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ラスト近くに、かなり凄惨な戦いがあります。子どもたちは全員生き残りますが、暴力シーンが苦手な方は、ご注意ください。「そういうシーンがあるのだな」と最初から身構えていれば大丈夫な方にはおすすめです。
 食べ物のシーンがどれもおいしそうです。
 少年の心になりたいとき、週末にゆっくりとお楽しみください。たぶんローストチキンが食べたくなりますので、ご用意を。

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