【クララ白書】あの伝説の少女小説の名作第2巻。女子中学校のわくわく寄宿舎ライフを電子書籍で。【電子書籍】【中学生以上】
わたしは桂木しのぶ。通称「しーの」。札幌のカトリック系女子校、徳心学園中等科3年生。これは、中等科寄宿舎「クララ舎」での、わたしの奮闘の物語。文化祭も無事終わり、わたしたちは中学卒業に向けて忙しくすごしていたけれど……
この本のイメージ わくわく☆☆☆☆☆ 友情☆☆☆☆☆ スクールライフ☆☆☆☆☆
クララ白書Ⅱ 氷室冴子/作 集英社
<氷室冴子>
氷室 冴子(ひむろ さえこ、本名:碓井 小恵子(うすい さえこ)、1957年1月11日 ~ 2008年6月6日) 1957年北海道生まれ。藤女子大学国文学科卒業。77年、「さようならアルルカン」で青春小説新人賞受賞。少女小説の代表的人気作家。著書に「なんて素敵にジャパネスク」など多数。
全盛期になんとなく読みそびれ、ずっとわたしの中の「読まずに死ねない作家リスト」第1位だった氷室冴子先生の作品に、ついに着手しております。伝説の少女小説「クララ白書」の第2巻です。
主人公の桂木しのぶが愛読するのは、これまたこのひとつ上の世代にとっての伝説の少女小説「花物語」(吉屋信子)。こちらも、並行して読んでいるのですが、文章が美しいですよねえ!
乙女の好きなものはこうやって受け継がれてゆくわけです。
氷室先生が大人気だった時代というのは、「女の子の口語体」の一人称で書かれた小説が大ブームとなった時代です。読者層がだいたい15歳前後だったことから「いちご小説」と呼ばれました。
今読んでも氷室先生の筆力がすばらしく、群を抜くうまさです。デビューそこそこの時代からこんなに上手いなんて、当時の編集さんはどれだけ驚いたことでしょうね。
氷室先生の小説のすごさは、字がぎっしり詰まっていてかなりのボリュームがある小説なのに、あっと言う間に読みきってしまえること。最後まで読んだときに、その力量に気づくという感じ。文章のスピード感、テンポのよさ、読みやすさ。すべてにおいてハイレベル。若くして亡くなられたことが惜しまれる才能です。
「クララ白書」は、氷室先生の初期の作品ですが、学園コメディが好きな人たちからは根強い人気があります。
物語は、女子校徳心学園中等科の寄宿舎ライフを描いたオムニバス。少女たちの熱い友情や、それぞれが好きでこだわるもの(今で言う推し活やオタ活)などが生き生きと描かれています。
今回は、元気で友達想いだけどどこか抜けているしーの、美にこだわる美少女マッキー、漫画ひとすじど根性娘菊花の三人組の、すれ違いと誤解からおきるドタバタ劇がメイン。
けれど、どんなに盛大にケンカをしても、友達の危機には立ち上がるのです。
「クララ白書Ⅰ」では、中学生のしーのが菊花に対して「菊花が将来売れない漫画家になったら、わたしが働いて食べさせてやろう」とひそかに思うくだりがあるのですが、こういうところが、なんだかほほえましい。
今回の「クララ白書Ⅱ」では、外部の高校生にラブレターをもらったしーのが、喜んだのもつかの間、熱い友情の結果、どういうわけか大量の保護者つきでデートすることになり、さんざんなことになってしまったり、親友菊花の危機にしーのとマッキーが立ち上がったはずが、大失敗の末、かえってさらなる危機に陥らせてしまったり。
終始、そんな感じで話がすすみます。
作者の氷室先生のあとがきに「わたしの中には、ついぞ『女の敵は女』とよくいわれる同性観が欠落していました」と書かれていますが、「赤毛のアン」を思わせる、さわやかで楽しいガールズスクールライフです。
まだスマホどころか携帯電話もない時代の物語ですが、思春期の女の子たちのキラキラと、わちゃわちゃした楽しさがぎっしり詰まっていて、景気のよかったころの日本の、明るい学園生活を垣間見ることが出来ます。
デートのときのチョコレートパフェや、おみやげのシフォンケーキなどがなつかしい。
当時のチョコレートパフェは、いまのパンケーキみたいな位置づけで、シフォンケーキも、当時は人気が出始めの「新しいおしゃれなお菓子」って感じでした。(この一つ上の世代、わたしたちの親世代の女子学生の定番スイーツは「あんみつ」だったそうです)
あんみつ→チョコレートパフェ→チーズケーキ→ティラミス→ドーナツ→パンケーキ
みたいな感じでしょうかね?(ティラミスのあとパンケーキまでがちょっとわからない)あいだにクレープとかナタデココとか、パンナコッタとか、ベルギーワッフルとか、スイーツのブームはあるにはあるのですが、喫茶店に入ったときの定番お菓子とはまた違うんですよね……。
考えてみたら、最近の女の子は、喫茶店に寄り道しないんだ。ファストフードやショッピングモールのフードコートのほうがはるかにリーズナブルだし、おしゃれでもある。時代は変わるのだなあ。
そんなレトロな描写も、しーのたちの生き生きした生活にまぎれているため、あまり古さを感じさせません。(オバハンのわたしが読んでいるからかもしれませんが) 構成力があり筆力が確かなので、誤解が誤解を呼ぶ複雑な展開も、さすがの納得力です。
語彙力が豊富で、行間が詰まった漢字の多い文章ながら、驚くほど読みやすいので、騙されたと思って読んでみてください。すいすい読めちゃうのでびっくりしますよ。
電子書籍で名作をお探しなら、ぜひこれを!
古き良き少女小説です。
乙女心があるなら、老いも若きも、そして男性でも、まあ一度読んでみてくださいましよ。
さわやかな女の友情を感じることができますよ。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素がいっさいありません。
ひたすらさわやかで、楽しい、女の子たちの寄宿舎ライフです。登場するキャラクターたちは全員個性的で、魅力的な女の子たちばかり。高等部のお姉さまたちも全員、かっこかわいいです。
読後はチョコレートパフェが食べたくなるかもしれません。
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