【モモ】ミヒャエル・エンデの不朽の名作。時間泥棒から時間を取り戻した少女の物語。【小学校高学年以上】
あるところに、古い円形劇場のある小さな町がありました。そこに、モモという少女がやってきます。モモには、「人の話をきく」という不思議な力がありました。モモに話を聞いてもらうと、幸せな気持ちになるのです。あるとき、モモの住む町に、灰色のセールスマンたちがやってきました。
この本のイメージ 富とは☆☆☆☆☆ 時間とは☆☆☆☆☆ 幸せとは☆☆☆☆☆
モモ ミヒャエル・エンデ/作 大島かおり/訳 岩波少年文庫
<ミヒャエル・エンデ>
ミヒャエル・エンデ(Michael Ende, 1929年11月12日 – 1995年8月28日)はドイツの児童文学作家。父はシュールレアリスム画家のエドガー・エンデ。1989年に『はてしない物語』の翻訳者佐藤真理子と結婚。代表作は「モモ」「はてしない物語」
大好きな本です。今回、レビューを書くために再度読み返し、「もう児童文学も『モモ』だけ読んでればいいんじゃないか」と思うくらいに感動しました。「はてしない物語」も名作なのですが、「モモ」は別格です。
あらすじは、
どこかの国、どこかの町で。
古い円形劇場がありました。
そこに、どこからか、不思議な少女モモがやってきます。
モモはぼろぼろの服を着て、身寄りがなく、家もありませんでした。
町の人たちは、この子をどうしようと相談するのですが、それぞれが個人で面倒をみようとすると負担が大きく、引き取り手がいませんでした。それで、町の人たちは、モモをみんなで面倒みることにするのです。
廃墟となった円形劇場の一室を、左官屋さんが綺麗に壁を塗り、町の人たちがめいめいで必要そうなものを持ち込み、ベッドやテーブルなどをしつらえました。食べ物も、町の人たちが少しずつ持ち寄ってあげたら、モモは生活できるようになりました。
モモはそこでひとりで生活していましたが、実は彼女には他の人にない、不思議な力があったのです。それは「他人の話を聞く」と言う能力でした。
悩みを抱えた人は、モモに話を聞いてもらいにいきます。彼女はただ、相手の話を黙って聞いているだけなのですが、そのうちにだんだん本人の考えがまとまっていき、正しい結論を出せるようになるのでした。 (これは、おそらく、セラピストの行う「傾聴」というものでしょう。実際に「ただ聞く」と言うのはセラピー的に絶大な効果があります。エンデの物語は、深い知識のもとに書かれているのが随所に現れています)
というわけで、町の人に助けられたモモは、食べ物などの面倒をみてもらうかわりに「話を聞く」ことで町の人の役に立ち、町の人たちや子どもたちとモモの間には、物々交換にも似たお金を介在させないつながりがつくられました。そして、これが、後にモモが灰色の男たちに目をつけられた理由でもあります。
小さくても幸せだったモモの町に、ある日、灰色の帽子をかぶり、灰色のスーツを着て、灰色の葉巻を絶えず吸っている不思議なセールスマンたちがやってきます。
彼らは、町の人たちひとりひとりにセールスし、自分の持っている「よぶんな時間」を時間貯蓄銀行に預けるようにと勧誘します。そして、彼らに勧誘された人たちは、自分の「無駄な時間」を節約するようになり、せかせかと働き始めました。
でも、彼らは時間泥棒だったのです。
モモだけが、彼らの正体に気がついていました。
モモは、町の人たちの時間を、時間泥棒たちから取り戻すことができるのでしょうか。
と言うのが、あらすじ。
ざっと説明しても、ここまででまだ前半です。
後半では、モモに正体を知られてしまった灰色の男たちは、モモの人間関係を分断します。
モモには、大切な大親友が二人います。ベッポというおじいさんとジジという少年です。
この二人は、「労働」と「芸術」の象徴です。アリとキリギリスみたいなものです。
灰色の男たちは、まず、この二人とモモの関係を絶ちました。
町は灰色の男たちの増加とともに、急速に発展し、ハイテク化しますが、そのぶん、町の人たちは、せかせかと忙しく働き続け、楽しく会話をする暇もなくなってゆきます。
そして、灰色の男たちの本心を聞いてしまったモモは、灰色の男たちの陰謀によってついには、独りぼっちになってしまいます。
ここで一度、くじけそうになるのですが、再びモモは立ち上がり、奪われた「時間」をとり戻すための旅に出るのです。
たった一人の小さな女の子が、世界の存亡にかかわる秘密に触れてしまい、最後は世界を救います。モモは最初から最後までひとりです。でも、大切な人たちも友達もいるんです。
モモがどこにも属さない、一人ぼっちの女の子だったからできたことなのかもしれません。エンデはいくつものメッセージをさまざまな角度からなげかけており、毎回読むたびに、そのときの自分に必要な言葉が飛び込んできます。
わたしたちは、みな、ジジであり、ベッポであり、町の人たちであり、モモの友達の子どもたちであり、そして、モモなのです。
「モモ」は、おとぎ話であり、たとえ話であり、予言の書でもあります。でも、もし「モモ」が予言の書なら、これがハッピーエンドなのが大いなる救いです。時間の花は、わたしたちの胸に戻ってくるのです。
子どもだけではなく、すべての人たちにおすすめの本です。
あなたの大切な「時間」、どうぞ「モモ」を読むためにお使いください。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はありません。HSPやHSCのための本と言ってもいいと思います。感受性の鋭いお子様なら、小学校中学年くらいからでも理解できると思います。大人にもおすすめ。お風呂上りに、温かい紅茶かハーブティをお供にして、ぜひどうぞ。
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