【つくろいものやはじめます】付喪神たちのつくろいもの屋さん。新感覚の和ファンタジー【お江戸あやかし物語】【小学校低学年以上】

2024年3月7日

広告

つくろいものやはじめます お江戸あやかし物語  水沢いおり/作 石橋富士子/絵 偕成社

お江戸の片隅に、いっぷうかわったお店がありました。それは、あやかしたちが働く、「つくろいものや」さん。まち針のこまち、糸切りばさみのちょきち、縫い針のぬいばあは、今日もお江戸の事件を解決します……

この本のイメージ 和ファンタジー☆☆☆☆☆ ほのぼの☆☆☆☆☆ かわいい☆☆☆☆

つくろいものやはじめます お江戸あやかし物語  水沢いおり/作 石橋富士子/絵 偕成社


<水沢いおり>
1975年北海道生まれ。2006年第23回小さな童話大賞受賞。著書に『つくろいものやはじめます』がある。

<石橋富士子>
1958年神奈川県生まれ。著書に『ぺたこさんの手作り生活』『知識ゼロからの着物と暮らす入門』など。ちりめん小物の製作販売も手がける。

 

 かわいい本みつけました!
 古いさいほう箱から飛び出した、あやかしたちがお江戸の町でつくろいものやさんをはじめるという和ファンタジー。

 日本には、古くから「九十九神(付喪神)つくもがみ」という言い伝えがあります。
 古い道具が100年の時を経ると、魂がやどるというものです。

 このお話は、古い古いさいほう箱の道具たちに魂が宿り、あやかしとなった道具たちが蔵を飛び出してお江戸の町で「つくろいものや」をしながら、様々なお客さまのお困りごとを解決すると言うストーリー。

 「つくろいものや」と言うのは、布で出来たものの破れや穴を、針と糸でかがったり、継ぎをあてて修繕する仕事です。

 江戸時代の江戸は、かなり完成されたリサイクル社会で、割れた瀬戸物を修繕する焼き継ぎ屋、穴の開いた鍋を修繕する鋳掛屋(いかけや)、桶を修繕する 箍屋(たがや)、下駄の鼻緒を修繕する下駄直しなど、専門の修繕屋が数多くあったのです。

 呉服屋とつくろいものや、金物屋と鋳掛屋、瀬戸物屋と焼き継ぎ屋、履物屋と下駄直し、桶屋と箍屋はすべて別の店の別の仕事でした。完成品を売る店と、修理する店は別なのです。

 江戸は、このように仕事を細分化することで、失業者を出さないように工夫されていたのでした。

 さて、この物語の「つくろいものや」さんは、まち針のこまち姐さん、糸切りばさみのちょきち、縫い針のぬいばあ、という面々。
 こまち姐さんとちょきちは人間の女の人と男の子のすがたをしていますが、ぬいばあは、小さな小さな、手のひらサイズのおばあさんです。

 お客さまのほうも、羽衣の手直しだったり、猫の着物だったりと、なかなか一筋縄ではゆきません。

 でも、こまち姐さんは
 「北へまっすぐぬったなら、こんどはまがって西へゆけ。ちょちょいのちょい」
 なんて鼻歌を歌いながら、なんでも縫ってしまいます。なんと、たのもしい。

 収録されているお話は
 ・あやかしの店
 ・お猫さま
 ・血吸い姫
 ・針供養

 の四本です。

 わたしは、「血吸い姫」に登場する、身体の弱いおさとさんが大好きです。
 ゆる~い雰囲気の、やさしい娘さんで、でも、意外にものを良く見ていてカンも冴えている。

 そうそう、「動物のお医者さん」の菱沼さんみたいなキャラクターです。(古いよ)

 彼女はなんとなくレギュラーキャラになってくれそうな予感。また出てきてくれるとうれしい。

 字はほどよく大きくて、難しい漢字はなく、漢字にはすべてふりがながふってあります。
 挿絵はかわいらしく、幻想的なシーンでは美しく、ふんだんにフルカラーの挿絵が挿入されており、贅沢なつくり。また、江戸時代の長屋の図解など、当時の文化・風俗についての解説もあります。

 うれしいのは、「まなじり」「えにし」「ちりめん」「やっとう」など、時代用語は現代語化せずにそのまま使い、注釈を加えていること。
 しかも、この注釈、よくある巻末に付け加えるタイプのものではなくて、本文を上下二段にわけて、本文の下の段に解説が書いてあるのでわかりやすい。語彙力も深まります。

 小さなお子様が、ひとりでこつこつ読みながら、江戸の文化や風俗に詳しくなり、知らない時代用語も覚えられるようにつくられている親切設計。

 明るく、ゆかいできっぷのいい、新感覚のお江戸ファンタジーです。
 シリーズ化しているらしいので、これから読みすすめてゆくのが楽しみです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。楽しくて、ほのぼのとした新感覚のお江戸ファンタジーです。字がほどよく大きくて読みやすいので、お年寄りへの差し入れにもいいかもしれません。
 児童書なのですが、物語の起伏が面白く、読み応えがあるので、大人でも楽しめます。

 短いお話に別れていて音読もしやすいので、ぜひ親子での読み聞かせに。
 読後は、お茶と和菓子で、どうぞ一休みしてくださいね。

商品紹介ページはこちら

お気に入り登録をしてくださればうれしいです。また遊びに来てくださいね。
応援してくださると励みになります。

にほんブログ村 本ブログへ

広告