【金星特急】ＳＦ少女小説の傑作第２巻。絶世の美女を手に入れるサバイバルエクスプレス【高校生以上】
絶世の美女「金星」の花婿になれば、この世の栄華は思いのまま。しかし、「金星特急」は途中乗車も途中下車も許されない。しかも、「金星」からは、厳しい「試練」が言い渡されるのだ。はたして錆丸たちは「金星」の望みを叶えられるのか？……
この本のイメージ パラレル近未来☆☆☆☆☆ 元気系主人公☆☆☆☆☆ サバイバル☆☆☆☆☆
金星特急 ２ 嬉野君/作 高山しのぶ/絵 ウィングス文庫
＜嬉野君＞
3月17日生まれ。長崎県出身。小説ウィングス2006夏号、「パートタイム・ナニー」にてデビュー
＜高山しのぶ＞
11月28日生まれ。主な作品に「あかつき」「ハイガクラ」など。
初読です。初版は2010年。
わけあって、個人的に「読まずに死ねない小説」リストの１冊だった小説です。（ほかには氷室冴子、「シェーラ姫の冒険」など……）
このサイトはわたしの読書記録もかねているので、続き物の小説のレビューも掲載しています。「金星特急」は、一話完結ではなく、完全な続き物なので、この記事でご興味を持たれた方は、まずは第１巻をお読みください。
第１巻のレビューはこちら↓
https://www.mmanorhouse.com/2021/09/04/post-8037/お話は……
絶世の美女「金星」が乗客を募集した「金星特急」。乗り込んだ者たちは、全員、「金星」の花婿候補だ。
「金星」の花婿になれば、この世の栄華は思いのまま。しかし、「金星特急」に乗って帰ってきたものは、誰もいない……
東京駅始発の「金星特急」に乗り込んだ錆丸は、偶然出会った謎の傭兵砂鉄、美剣士ユースタスと道連れになる。謎多き「金星特急」だが、ついに「金星」から「試練」が与えられた。「金星」の望みを叶えなければ、乗員たちは樹に変えられてしまう。
はたして、錆丸たちは、「金星」の望み、「王の火」を手に入れることができるのだろうか。
……と、いうのがあらすじ。
今回の停車駅は、真臘（しんろう）と言うカンボジアの王国と、かつてチベットにありシャングリラと呼ばれた吐蕃（とばん）。
この物語の世界は、近未来パラレルワールドなので、実在の国の名前が登場しても、ほぼほぼ架空の国です。科学技術は出版された当時と同じくらいでしょうか。砂鉄が「電話をかけに」出かけたりする記述があり、スマートフォンとかが登場しないので、もしかしたらそんなに進んでいないのかもしれません。
傭兵らしき隻眼の男砂鉄はサバイバル知識に長け、美しいが大食らいの剣士ユースタスは強い信念の持ち主で、錆丸の頼もしい道連れとなりました。
第１巻で驚き、右往左往するばかりだった錆丸も、今回は頭をフル回転させ、そして精一杯の勇気を出して、成長します。やみくもな根性論ではなく、理屈で考えるように促す砂鉄と、肝心なところでは信念を貫く姿を見せるユースタスから、錆丸は多くを吸収してゆきます。
強いけどドライすぎる砂鉄と、弱点はあるけれど正義感と志は絶対に曲げないユースタスは、すごくいいコンビです。そこに、弟ポジションで明るく前向きな錆丸が加わり、出会ったばかりのはずなのに三人は、強い信頼で結ばれたチームになりました。
お話後半では、新キャラも登場、なかなか癖の強いキャラのようで、これからの展開が楽しみです。
東京から上海を回り、インドシナを駆け抜ける金星特急。いまのところアジアをめぐっているので、エキゾチックな異国情緒が魅力です。これから、どういうルートをめぐるのかはまだ謎ですが、「銀河鉄道999」みたいに宇宙に飛び立つお話ではなくて、パラレルワールドの地球一周旅行のよう。これは楽しみ。
今は、自粛期間で、あまり移動や旅行ができないときですが、そんなときこそ、こんなミステリアスでファンジックな旅行を空想の中で楽しみましょう。
飛行機を使わずに、東京から上海、カンボジアと、列車に乗ったままどこまでもゆけるなんて、わくわくします。
第１巻のレビューでも書きましたが、歓楽街や遊女という設定が登場するので（エロシーンはありません。設定だけです）、中学２年生くらいからがおすすめ。SF少女小説として、掛け値なしに面白いです。たぶん、これから、かっこいい男性キャラがさらに登場するのではないでしょうか。
※このレビューでは「中学２年生以上」と書いていましたが、３巻以降過激な科白などがあるため「高校生以上」とさせていただきました。今後どうなりますか……(2022.07.05)
「かぐや姫」と「銀河鉄道999」を合体させて、少女小説の風味をふりかけた、しかし、本格派のSF少女小説。続編もあるようですし、これからの長い旅が楽しみです。
※この本は電子書籍もあります。紙の本は欠品しがちなので、抵抗がなければ電子書籍でどうぞ。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
バトルシーンやアクションシーンがあるので、流血シーンはあります。しかし、気をつけて書かれていると思います。「そういうシーンがあるのだな」と思って読めば大丈夫なら、おすすめです。
男の子でも楽しく読めると思います。
