【ザ・ランド・オブ・ストーリーズ】物語の世界と行き来する新感覚のファンタジーシリーズ第6巻。完結編【魔法の扉がしまるとき】【小学校中学年以上】

2024年4月9日

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ザ・ランド・オブ・ストーリーズ  6  魔法の扉がしまるとき  クリス・コルファー/著  田内 志文/訳 平凡社

ついに現実の世界に悪の軍団が侵攻を開始しはじめました。その尖兵とされたのはなんと呪いによってコントロールされたアレックス。コナーはアレックスを救うために仲間たちとニューヨークへむかいますが……

この本のイメージ おとぎ話オールスターズ☆☆☆☆☆ 完結編☆☆☆☆☆ 自分への赦し☆☆☆☆☆

ザ・ランド・オブ・ストーリーズ  6  魔法の扉がしまるとき  クリス・コルファー/著  田内 志文/訳 平凡社

<クリス・コルファー> 1990年生まれ。アメリカ合衆国出身。俳優、歌手、脚本家、作家。第68回ゴールデン・グローブ賞最優秀助演男優賞を受賞。 

「ザ・ランド・オブ・ストーリーズ」の第6巻「魔法の扉がしまるとき」は原題がThe Land of Stories: Worlds Collide. 原書初版はアメリカで2017年。日本では2019年が初版です。

 お話が完全に続いているので、第1巻「願いをかなえる呪文」から順番にお読みになるのが良いでしょう。
 「願いをかなえる呪文」のレビューはこちら

 「ザ・ランド・オブ・ストーリーズ」は、おとぎ話の世界にふたごのきょうだいアレックス(女の子)とコナー(男の子)が飛び込んで、ファンタジーの世界の登場人物たちと協力し、悪者たちと戦うお話です。

 登場人物は、「おとぎ話」の主人公たち。シンデレラや赤ずきん、白雪姫、オーロラ姫や、豆の木を育てたジャック、三匹のくまの女の子など。ピーター・パンやロビン・フッドなども登場して、おとぎ話オールスターズ。

 今回のお話は……

 悪の魔女モリーナは、おとぎ話の悪者たちで結成された悪の軍団や魔女たちの軍団を煽り、「現実の世界」へと侵攻を開始します。その尖兵として使われたのは呪いで洗脳され、意思を奪われたアレックス。

 アレックスは強力な魔法で破壊の限りを尽くします。

 テレビのニュースでアレックスの引き起こした大破壊を知ったコナーたちは、仲間と一緒にアレックスを救うべくニューヨークへ。

 はたして、アレックスの呪いは解けるのか? そして、悪の軍団との決戦は?

 ……と、いうのがあらすじ。

 今、アメリカでは子どもたちが古いおとぎ話を知らないというのが社会問題になっているらしく、そのために、ドラマ「ワンス・アポン・ア・タイム」や、この「ザ・ランド・オブ・ストーリーズ」など、古いおとぎ話を題材にした新しいお話が増えてきているようです。

 たしかに、わたしたちが幼い頃は絵本といえば「かぐや姫」「花咲じいさん」「ももたろう」「一寸法師」など、昔話がほとんどだったのに、今ではそちらのほうが珍しいかもしれません。昔話が語られなくなったのは日本だけではなかったようです。

 けれど、今では某携帯電話会社のCMなどで昔話のキャラクターたちも大活躍。こういった作品がどんどん増えると楽しいですね。

 この「ザ・ランド・オブ・ストーリーズ」シリーズも今回で完結編。すべてのキャラクターが終結して最終決戦に挑みます。
 誰もが知っているおとぎ話のキャラクターたちが力を合わせて闘うのは胸が熱くなる展開です。

 また、ニューヨークが最終決戦の場になるので、セントラルパーク、ニューヨーク公立図書館、コロンバスサークル、エンパイア・ステート・ビル、ブロードウェイ・シアター、リンカーン・センター、ワシントンスクエア公園、そしてタイムズ・スクエアと実在の場所が次々と登場します。

 「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」でも現実の場所が戦場になりましたが、これはアメリカ人にとっては「ご当地もの」として心躍る展開にちがいありません。

 日本だとゴジラが東京タワーを襲うようなものですね(古い)。

 文章は平易で読みやすく、簡単な漢字以外は振り仮名が振ってあります。
 小学校中学年以上なら大丈夫だと思います。ただし、最終巻はキャラクターが多く、みんなカタカナの名前なので混乱する場合は目をとりながら読むとわかりやすいでしょう。

 ボリュームはありますが細かい章に分かれているので読みやすく、小さなお子さまでもコツコツ読み進めることが出来ると思います。もちろん、大人が読んでも楽しめます。

 今回のクライマックスは、強力な悪の呪いをかけられたアレックスの解呪。

 アレックスにかけられた呪いは単純な「悪者にかけられた悪い呪い」ではなく、たゆまぬ努力を続けてきた彼女の真面目さが報われなかった子ども時代の挫折と深く結びついていたことがわかります。
 この深い心の傷を、アレックスはどう癒すのでしょうか。

 これは読んでみてのお楽しみ。

 自力では解決のしようもないような苦しい状況にいるときの助けとして、かつてこのサイトではヴィクトール・フランクルの「夜と霧」をおすすめしたことがあります。

 この「魔法の扉がしまるとき」のクライマックスでアレックスに提示された救いは「夜と霧」に通じるものがあり、それを子ども向けにわかりやすい言葉にしているようにも感じられました。

 アレックスの気持ちに共感して思わず涙ぐんでしまったり。

 辛い状況でもがんばる子どもたちや、働く大人たちの心にも深く刺さる展開や言葉もあり、最終巻にふさわしいクライマックス。そして、現実の世界にも空想や想像する心は必要なのだと、ファンタジー好きを肯定してくれるラストでもあります。

 長い長い壮大な物語の素敵なハッピーエンド、どうぞ見届けてくださいね。

 子どもから大人まで、おとぎ話やファンタジーが大好きな人におすすめのファンタジーです!

 ※この本には電子書籍もあります。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はほとんどありません。戦うシーンはありますが気をつけて書かれており、残酷なシーンはありません。非常に良心的なファンタジーです。
 また、おとぎ話や名作児童文学が多数登場するので、お子さまが興味を持てば岩波少年文庫などへの横展開が期待できます。

 クライマックスのアレックスの解呪は、つらい状況にいるお子さまのヒントになるかもしれません。

 

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