【ザ・ランド・オブ・ストーリーズ】物語の世界へ飛び込め!想像力が武器になる、新感覚のファンタジーシリーズ第5巻【コナーの四つの物語】【小学校中学年以上】
現実の世界に軍団を引き連れて攻め込もうとしている悪党たちの陰謀。仮面の男と魔女モリーナがそれぞれに暗躍します。おとぎ話の悪役たちの悪党同盟に対抗するだけの軍団をどこかから連れてこなければなりません。そこで、コナーがかつて書いた小説に双子たちは飛び込むことに。
この本のイメージ 冒険☆☆☆☆☆ おとぎ話☆☆☆☆ 作者が自分の作品へ☆☆☆☆☆
ザ・ランド・オブ・ストーリーズ 5 コナーの四つの物語 クリス・コルファー/著 田内 志文/訳 平凡社
<クリス・コルファー> 1990年生まれ。アメリカ合衆国出身。俳優、歌手、脚本家、作家。第68回ゴールデン・グローブ賞最優秀助演男優賞を受賞。
「ザ・ランド・オブ・ストーリーズ」の第5巻「コナーの四つの物語」は原題がThe Land of Stories: An Author’s Odyssey. 原書初版はアメリカで2015年。日本では2019年が初版です。
お話が完全に続いているので、第1巻「願いをかなえる呪文」から順番にお読みになるのが良いでしょう。
「願いをかなえる呪文」のレビューはこちら↓
ハリウッドで映画化されるという発表があったのち、ウンともスンとも情報が出てこなくなったこの作品。でも、コロナ禍前の企画で、その後映画業界はたいへんな状態になりましたので、動いていないんでしょうねえ……。どうなったのか、わたしも知りたいです。
「ザ・ランド・オブ・ストーリーズ」は、おとぎ話の世界にふたごのきょうだいアレックス(女の子)とコナー(男の子)が飛び込んで、ファンタジーの世界の登場人物たちと協力し、悪者たちと戦うお話です。
最初はシンデレラや赤ずきん、白雪姫、オーロラ姫や、三匹のくまの女の子など、古くからのおとぎ話に登場する人々と仲良くなりますが、だんだん「オズの魔法使い」や「ピーター・パン」、「不思議の国のアリス」など、作られた物語の世界へも飛び込みます。
まさに、「おとぎ話オールスターキャスト」の豪華さ。
さて、今回のお話は……
前回までのお話で、「仮面の男」とファンタジーの悪党同盟の力でランドオブストーリーズの世界はたいへんな危機に見舞われます。
そして、恐るべきことに「仮面の男」と悪の魔女モリーナは、それぞれに「アザーワールド」(現実の世界)への侵略をもくろんでいたのでした。
おとぎ話の悪党たちが現実世界を侵略するなんて、ありえない!
この陰謀に対抗するためには、「仮面の男」たちが知らない世界から援軍をつれてくるしかありません。
そこで、コナーは昔自分が書いた小説に飛び込んで、自分が作ったキャラクターたちを呼び出すことを思いついたのです。
しかし、次々と現実世界に架空のキャラクターたちを呼び込んだとしても、どこかに待機させておかないといけません。それには、事情を理解して協力してくれる、現実世界の人間が必要です。
アレックスとコナーは、悩んだ末、適任者は自分の母シャーロットしかいないと気づきました。
……というのがあらすじ。
今、アメリカでは子どもたちが古いおとぎ話を知らないというのが社会問題になっていて、そのために、ドラマ「ワンス・アポン・ア・タイム」や、この小説など、古いおとぎ話を題材にした新しいお話が増えてきているようです。
日本でも、某携帯電話のCMや、日曜朝の特撮番組など、おとぎ話闇鍋ファンタジーのようなものが最近増えてきています。
おとぎ話は、世代を超えた共通言語であり、貴重な文化。題材としてアレンジして新しいコンテンツに生まれ変わってくれれば、子どもから大人まで同じ話題で盛り上がることができます。
前回のお話では、古くからのおとぎ話だけでなく、「不思議の国のアリス」や「ピーター・パン」など、比較的新しい時代に書かれた創作童話の世界へも飛び込んだ、アレックスとコナー。
今回は、コナーが書いた四篇の小説から、コナーの生み出したキャラクターたちを連れ出すというストーリーです。
作者が自分の書いた小説の中へと飛び込んでしまうお話は、コルネーリア・フンケの「魔法の声」シリーズが思い起こされます。
「魔法の声」では、物語の作者のフェノグリオは主人公ではありませんが、「自分の書いた世界に自分が入り込んで暮らしたい」と言う、ファンタジーを創りたいと思う人間なら一度は考える願望を叶える、かなり強引で幸せな人物として登場します。
コナーも自分が生み出したキャラクターたちに出会えて大喜び。アレックスは兄の生み出した世界に入り、彼の意外な才能を知るのでした。
一方、現実世界ではエメリッヒが行方不明。ブリーがグリムの子孫たちと必死の捜索をしています。
今回は、エメリッヒの秘密にも迫りますので乞うご期待。
文章は平易で読みやすく、簡単な漢字以外は振り仮名が振ってあります。
小学校中学年以上なら大丈夫でしょう。見た目、たいへんなボリュームがありますが、非常に細かく章に分かれていて、それぞれのエピソードか短いので、無理なく読みすすめられるようになっています。大人が読んでも楽しめます。
さて、この壮大なファンタジーも、次回で完結。
どんなふうにハッピーエンドを迎えるのでしょうか。楽しみです。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はほとんどありません。戦うシーンはありますが、気をつけて書かれており、残酷なシーンはありません。非常に良心的なファンタジーです。
名作児童文学が多数登場するので、お子さまが興味を持てば岩波少年文庫などへの横展開が期待できます。
読後はロティサリーチキンが食べたくなるかもしれません。
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