【なんて素敵にジャパネスク】伝説の少女小説を電子書籍で。破天荒な姫の平安ラブコメディ第1巻【電子書籍】【中学生以上】

2024年3月21日

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なんて素敵にジャパネスク 1  氷室冴子/作 集英社コバルト文庫

時は平安、名門貴族の娘、瑠璃姫は16歳。幼馴染で夭逝した吉野君の面影を抱いて独身を貫こうと心に決めていました。ところが、貴族の娘にそんなわがままは許されない。父親は適齢期を過ぎた瑠璃姫を無理やり結婚させようと陰謀を企てて……伝説の少女小説の第1巻です。

この本のイメージ 平安時代☆☆☆☆☆ ラブコメ☆☆☆☆☆ ファンタジーではない☆☆☆☆☆

なんて素敵にジャパネスク 1  氷室冴子/作 集英社コバルト文庫

<氷室冴子>
氷室 冴子(ひむろ さえこ、本名:碓井 小恵子(うすい さえこ)、1957年1月11日 ~ 2008年6月6日) 1957年北海道生まれ。藤女子大学国文学科卒業。77年、「さようならアルルカン」で青春小説新人賞受賞。少女小説の代表的人気作家。著書に「なんて素敵にジャパネスク」など多数。 

 伝説の少女小説「なんて素敵にジャパネスク」です。初版は1984年5月。新装版が1999年に、復刻版が2018年に出版されています。現在、紙の本のほうは時々欠品するので、電子書籍のほうが入手しやすいと思います。

 氷室冴子先生と言えば、わたし世代の女性は知らない人はいないほどヒットした、まさに少女小説界のスーパースターでした。

 当時の日本はとても景気がよかったので、本もCDもよく売れました。本も音楽も気軽に買える時代でした。だったら気軽に読めただろうと言うと、それがとんでもない。欲しい本が多すぎて、絞りに絞らないと手が回らないのです。

 あまりにも売れすぎていたせいか、いつでも読めると油断したのか、ついつい後回しにして読みそびれて……。わたしにとって、そういう、少女時代の忘れ物のような本が、氷室冴子です。

 ここ数年、日本はいろんなことがありすぎました。

 天変地異、経済の不安定、疫病などなど……。もう会えなくなってしまった友人もいます。
 この歳になって、昔を思い出すと「ああ、あの時、推し活に乗ってあげればよかったなあ」と思うようなこともあります。あんなに布教してくれていたのに。でも、その時は、時間的にも経済的にも手一杯だったんですよねえ。

 そういうわけで、若いみなさま、若いときは親しい友達の布教は無下にせず、なるべく乗りましょう(推しは推せるうちに推せ)。あっでも、BLの解釈違いは血で血を洗うので、無理して合わせなくてもいいですよ。(←あまりにもどうでもいいBBAの助言)

 このサイトは、わたしの読書記録も兼ねているので、新しいおすすめの本だけでなく、古い本もご紹介するようにしています。良い本がたくさんあるんですよ。

 昭和の大ヒット作「なんて素敵にジャパネスク」ですが…… そんなわけで、初読です。これから読む方と同じ、真っ白な気持ちで読ませていただきました。

 ストーリーは……

 時は平安時代。

 都で一、二を争う名家の令嬢、瑠璃姫は、幼い頃に亡くなった許婚「吉野君」(よしののきみ)の面影を抱いて、生涯独身を貫くつもりでした。

 しかし、政略結婚が家の行く末を決めるこの時代、そんなことは許されない。平安時代で16歳と言うと、そろそろ行き遅れ。

 父君は瑠璃姫をあの手この手でなんとか結婚させようと策略し、ついに強引に幼馴染の高彬(たかあきら)と無理矢理の結婚に追い込もうとします。冗談じゃない、と大憤慨する瑠璃姫ですが、そんななか、都を荒らす夜盗が現れて、それが大事件へと発展してゆきます……

 ……と、いうのがあらすじ。

 平安時代、女性は14歳くらいで結婚していたので、16歳というともう適齢期を過ぎかけてると言う設定なんですよね。
 わたしが若い頃も、「女は25歳を過ぎると『売れ残りのクリスマスケーキ』だ」なんぞと言われたものです。

 だいたい、その頃になると親は「結婚」の二文字しか言わなくなり、本人そっちのけで条件などをクドクド言いはじめ、娘はうんざりして、もうどうでもよくなる、と言うのが、わたし世代の女性が一度は通る道でした。

 「ジャパネスク」を書かれた頃の氷室先生の状況は、かなり想像できます。みんなそうでしたから。

 女の子が思春期に感じる窮屈な思いを十二単になぞらえて、それを軽やかに蹴っ飛ばして駆け抜けてゆく瑠璃姫。彼女のすがすがしい物語が当時の女の子たちを惹きつけたのだと思います。

 また、次々と魅力的な公達が登場し、乙女ゲームの風味もあります。あなたの推しを探すのも楽しいでしょう。

 しかし、それよりもなによりも、なんでしょう、この異常な読みやすさ。ほかの本の三分の一くらいの時間で読めてしまいます。でも、ちゃんと字が詰まっているし、語彙も豊富で、表現は繊細なのです。

 読み終わったとき、驚くほど時間が経っていないので、その時あらためて氷室先生の化け物級の才能に気がつくと言う……。 若くして亡くなられてしまったのが、返す返すも惜しまれる天才です。この才能を思春期の少女のために惜しげもなく注いでくださったことには、感謝しかありません。

 女子校のスクールライフと熱いシスターフッドを描いた「クララ白書」も名作なのですが、当時の「現代もの」だっただけに、昭和の文化や風習を知らないとわかりにくいところもあります。(携帯電話がない時代特有の連絡ミスや行き違いなど)

 けれど、この「ジャパネスク」はもともと平安時代のお話なので、令和になってもそこらへんの違和感はなく読めるのではないでしょうか。

 平安時代らしく固有名詞に漢字が多く、そこが少しややこしいですが、とにかく文章が読みやすいので大丈夫。
 ただし、なにしろ平安時代の「結婚」がテーマなので、登場人物たちが、あけすけに契るだの、契らないだのと言い争います。(このあけっぴろげさはなかなかすごい。もちろん、エロシーンはありません。←あたりまえ)
 表現がみやびなので、下品な下ネタ感が感じられないからかもしれません。ここらへんも、さじ加減なんだと思いますが……。きっと、当時としては少女小説の限界に挑戦していたんでしょう。

 なので、そうですねえ、中学2年生くらいからでしょうかねえ……。瑠璃姫が16歳なので、中学3年生くらいでしょうかねえ……。もう少年ジャンプで遊郭が登場する令和なので、どこらへんが適切か、年寄りにはちょっとわからないのですが……。これは購入される方が決めていただければ……。

 少女期のときめきと、瑞々しさがいっぱいの平安朝ラブコメディーです。読んだ後、きっと平安時代のことをもっと知りたくなるでしょう。

 昔の名作も電子書籍で気軽に読めるようになったのが、ハイテク時代のいいところ。乙女心にひたりたい時、電子書籍の名作をお探しのときは、ぜひどうぞ!

 ※読書リーダーは、読書専用の端末をお使いになると、メールや電話、SNSなどで中断されないのでおすすめです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。
 明るく楽しい、ラブコメディーです。平安時代が時代設定ですが、ファンタジーではありません。思春期の女の子の気持ちを瑞々しく描き、サスペンスや謎解きの要素もある、ハラハラドキドキの物語です。

 読後はおいしい緑茶と落雁でひとやすみ。

 

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